> ヨシュア君のぶれいさー手帳 〜Legend of Heroes VI〜
ヨシュア君のぶれいさー手帳 〜Legend of Heroes VI〜
 
> ヨシュア君のぶれいさー手帳 〜Legend of Heroes VI〜 > ヨシュア君のぶれいさー手帳 1
ヨシュア君のぶれいさー手帳 1
○月□日
今日は日曜。・・・教会で学校がある日。
いつも教会に行く時は面倒そうに起きてくるエステルだが、今日はどうやら違ったらしい。
普段より生き生きと朝食を食べて、なんと、ヨシュアよりも先に教会へ行く準備が整ってしまったのである。
『エステル・・・やっと、やっとヤル気になってくれたのか・・・・父さんは嬉しいっ・・・』
冗談半分、本気も半分でカシウスが感動する中、普段は一緒に行くのだが・・・エステルはヨシュアを置いて先に出て行ってしまった。
ヨシュアも、準備をして教会へ急ぐ。


そして、教会。
「おや、ヨシュア。今日は一人かね?」
「え”・・・・!?」
老教区長の一言に、ヨシュアは言葉を失った。
「あの、エステルは先に出かけたんですけど・・・・?」
気まずい沈黙。
行きがけに不審な点は何にも無かった。
と、いうことは。
・・・逃げられたっ・・・!!!
「全く・・・エステルも、おてんばぶりに磨きがかかってきましたね・・・。」
教区長は深々とため息をつく。
「・・・すみません・・・。」
何故か謝ってしまい、その事でヨシュアはさらにげんなりとしてしまう。
「・・・まぁ、あの子の事ですから、変なところには行っていないでしょう。
 あとで、課題を渡しますから、エステルによろしく伝えてください。」
「・・・はい・・・・。」
「まったく・・・今度会ったら特別講義を聴いてもらわなくては・・・」
さらに深々とため息をついて、教区長はつぶやく。
それにつき合わされている自分をふと予想してしまったヨシュアは、ぐったりとうなだれたのだった。

 
> ヨシュア君のぶれいさー手帳 〜Legend of Heroes VI〜 > ヨシュア君のぶれいさー手帳 2
ヨシュア君のぶれいさー手帳 2
○月×日
依頼名:サボり撲滅運動(1)
依頼者:教区長さんと父さん(むしろ自分)
難易度:?
期限:?


それは、日曜学校に向かう道すがら。


「あ。」
エステルがぱっと足をとめた。
「どうしたの?」
ヨシュアが振り向く。
「ちょっと忘れ物。先いってて?」
エステルは既に踵を返していた。
「はいはい。早く来るんだよ。」
ヨシュアは何の気もなくそのままロレントに急いだ。


『おや、ヨシュア。今日はエステルは一緒じゃないのかね?』
『忘れ物したらしいので、家に戻ってます。すぐに来ます。』
老教区長とのそんな会話から・・・・そろそろ一時間。
エステルは、まだ来ない。
・・・おかしいな・・・。忘れ物を探してたにしてもいい加減来るはずなのに・・・。


その日、結局エステルは日曜学校に顔を出さなかった。




*その後、ミストヴァルドの丸太橋付近でつりをしているところを発見、身柄を確保し、家に連行した。
*まんまと逃げられた。この次はきちんと連れて行かなくては。
*エステルは大量の課題を出された模様。全く・・・サボるからこういう事になるんだ。


 
> ヨシュア君のぶれいさー手帳 〜Legend of Heroes VI〜 > ヨシュア君のぶれいさー手帳 3
ヨシュア君のぶれいさー手帳 3
○月○日
依頼名:サボり撲滅運動(2)
依頼者:教区長さんと父さん(むしろ自分)
難易度:?
期限:?
依頼内容:
エステルを逃げられずに日曜学校まで連れて行くこと



それは・・・また、日曜学校に向かう道すがら。


「あ。」
エステルがぱっと足をとめた。
「どうしたの?」
ヨシュアが振り向く。
「ちょっと忘れ物。先いってて?」
エステルは既に踵を返している。
「待って。僕も一緒に行くよ。」
「え”。」
エステルの顔が引きつった。
「一人で行けるわよ、心配しなくたって。」
慌てて駆け出すエステルの肩を掴む。
「顔を引きつらせてまで断られると、またサボる気じゃないかって余計に気になるんだけど。」
「う”・・・」
態度は明白。どうやら、またサボる気だったらしい。
「ま・・・まったく、ヨシュアったら心配性なんだからー。」
・・・そんなこと言ってもごまかされるもんか。
言う直前に、小さく舌打ちしたのを聞き逃すようなヨシュアではなかったのだ。




*結局、一緒に戻って、一緒に教会へ行けた。
*二度も同じ手が通用すると思うあたり、エステルは単純だと思う。

 
> ヨシュア君のぶれいさー手帳 〜Legend of Heroes VI〜 > ヨシュア君のぶれいさー手帳 4
ヨシュア君のぶれいさー手帳 4
○月△日
依頼名:サボり撲滅運動(3)
依頼者:教区長さんと父さん(むしろ自分)
難易度:?
期限:?
依頼内容:
エステルを逃げられずに日曜学校まで連れて行くこと



それは・・・またまた、日曜学校に向かう道すがら。


「あ。」
エステルがぱっと足をとめた。
「どうしたの?」
ヨシュアが振り向く。
「ちょっと忘れ物。先いってて?」
エステルは既に踵を返している。
「待って。僕も一緒に行くよ。」
「一人で行けるわよ、心配しなくたって。」
慌てて駆け出すエステルの肩を掴む。
「またサボる気?」
「3回も同じ手を使うほど私もバカじゃないわよ。」
心持ち、むっとした表情。
まぁ、確かに一度破られた技をまたかけるほどバカではないらしい。
「まぁ、まだ時間もあるし、一緒に戻ろう。」
「・・・・わかったわ。」


一緒に戻って・・・エステルは二階に上がっていった。
「ヨシュア?教会に行ったんじゃなかったのか?」
玄関で待っていると、カシウスが声を掛ける。
「ん、エステルが忘れ物したから一緒にとりに戻ったんだ。」
「あぁ、そういうことか。」
そして、二階からはどたばたと・・・慌てて探し回っているらしい物音。
「・・・あのおっちょこちょいは直らないものかなあ・・・」
「当人の努力次第じゃない?」
そんな会話をしつつ、15分経過。
上からの物音が無くなった。
しかし・・・エステルはまだ降りてこない。
「遅いなあ・・・・僕、ちょっと見てくるよ。」
「あぁ。」


エステルの部屋の前。
何故か部屋からは音がしない・・・というより、人の気配自体がしない。
「エステル?あけるよ?」
ノックしても返事はなく、ヨシュアは部屋のドアを開けた。
部屋はもぬけのから。
そして麦藁帽子が・・・・見回せば、虫取り網と籠も消えている。
「・・・やられたっ・・・!!!」
必要以上にどたばたしていたのは、2Fから脱出していたから、だったらしい。
脱出に使われたと思しきロープが、部屋の窓でゆれていた。


「まったく、あの娘は・・・・・。」
下に降りて、カシウスにそれを報告すると、カシウスはでっかいため息を一つついた。
「ヨシュア、とりあえずお前は教会にいってこい。
 ・・・・虫取り網が消えてたのなら、夕方になればかえって来るさ。」



*結局、日曜学校が終わった後、エリーゼ街道から少し離れた原っぱでエステルを発見。
*身柄を確保、家に連行。
*家に戻っても気が抜けないとは・・・全く、サボりもここまで来ると大したものだ。
*そのエネルギーを勉強に使えば、少しはマシになると思うんだけどなあ。


 
> ヨシュア君のぶれいさー手帳 〜Legend of Heroes VI〜 > ヨシュア君のぶれいさー手帳 5
ヨシュア君のぶれいさー手帳 5
△月○日
依頼名:サボり撲滅運動(4)
依頼者:教区長さんと父さん(むしろ自分)
難易度:?
期限:?
依頼内容:
エステルを逃げられずに日曜学校まで連れて行くこと



それは・・・またまたまた、日曜学校に向かう道すがら。


「あ。」
エステルがぱっと足をとめた。
「どうしたの?」
ヨシュアが振り向く。
「ちょっと忘れ物。先いってて?」
エステルは既に踵を返している。
「待って。僕も一緒に行くよ。」
「一人で行けるわよ、心配しなくたって。」
慌てて駆け出すエステルの肩を掴む。
「またサボる気?」
「何回も同じ手を使うほど私もバカじゃないわよ。」
心持ち、むっとした表情。
まぁ、確かに一度破られた技をまたかけるほどバカではないらしい。
が、ここで引いたら、また同じ手で逃げられてしまう。
「さ、一緒に戻ろうか。」
「・・・・わかったわ。」


今回は、前回の轍は踏まない。
エステルが上に上がった後、ヨシュアはまた玄関で待っていた。
ただし、周りの気配にかなり気を配りながら。
・・・行ったな。
そして、なるべく静かにテラスの方に回りこむ。
果たして・・・エステルは器用にも、そろそろと下に降りて来ているところだった。
そう、テラスの柱を伝って。
ちなみに、肩には防水のバッグ・・・・今日は水泳の予定らしい。
物陰からそれをうかがって・・・下に着地したところで声を掛ける。
「やぁ、エステル。」
「う・え、あ、・・・・!?」
声にならない声・・・というより、口をぱくぱくさせて・・・・どうやら、驚いているらしい。
まあ、当たり前だが。
「折角階段があるのに、それを使わないとは、なかなかもったいない事をするね?」
「・・・・・な。な、・・・なんでヨシュアがここに居るのよ!?」
やっと声になったらしい。
見るからにあせっているのが面白いと思ってしまうあたり、自分も人が悪いな、などと思ってみたりする。
「何で居るのって・・・ひどいなあ。僕がここにいたらおかしいかい?
 むしろ、水泳用のバッグもって柱伝って降りて来てたエステルのほうが、よっぽど変だと思うんだけど?」
「・・・う、え、っと・・・・そ、そういう気分だったのよ!!」
言い訳にも何にもなっていない事は、当人が一番良くわかっているようだった。
「ふーん。またサボる気だったんだね。」
「・・・それは、その・・・」
『なんで、どーしてばれたのよー!』と、その表情は何よりも雄弁に語っていた。
「じゃ、教会に行こうか。教区長さんが待ってるよ。
そして、教区長さんのお説教も。
「うぅ・・・・・・・・。」
がっくりとうなだれて・・・観念したらしい。
エステルは、ヨシュアにひきずられるようにして教会に連れて行かれたのだった。




*運動神経のよさを最大限に生かした作戦だったけど、同じ手を喰らうほど僕もバカじゃない。
*でも、今日は暑かったから・・・教会より水泳の方が魅力的なのも、ちょっとだけわかるような気がした。
*だけど、サボりはよくないよ、エステル。


 
> サントラにあわせて話を書いてみよう 〜Legend of Heroes VI〜
サントラにあわせて話を書いてみよう 〜Legend of Heroes VI〜
 
> サントラにあわせて話を書いてみよう 〜Legend of Heroes VI〜 > リベールの歩き方 (エステル&ヨシュア)
リベールの歩き方 (エステル&ヨシュア)

目の前に広がる一面の緑には陽の光が一面に射している。
その上を爽やかに吹き抜ける涼しい風。
街道にはのんびりと行き来している運搬車。
運転手は、護衛の遊撃士との雑談で盛り上がっているようだ。

そして・・・

「居たわ!行くわよ!」
栗色の髪の娘が手に持った獲物を構える。
「・・・ほんっと飽きないね・・・」
一緒に居た黒髪の少年が呆れたようにため息をつく。
「飽きるとか飽きないとかじゃないわ!
 今度こそ絶対リベンジしてやるんだから!」
「はいはい」
そういうと、少年もあきらめたように獲物を持つ。
二人の視線の先には、光り輝くなにかポムっとした存在。
それは悠々と草原の上を移動していた。
この近辺で幾度となく繰り広げられた光景は、今日もまた繰り返される。
 
> サントラにあわせて話を書いてみよう 〜Legend of Heroes VI〜 > 陽だまりにて和む猫 (エステル&ヨシュア)
陽だまりにて和む猫 (エステル&ヨシュア)

テラスの上の小さな木のテーブル。そのそばに椅子が3つ。
「・・・・んぁーぁ・・」
ぽかぽかとしたその場所で、小さな猫があくびをした。
「んー、アンタも眠いの・・・?」
そのテーブルの上に突っ伏すようにして身体を伸ばしていたエステルが、同じく眠そうに猫にたずねる。
「・・・・・なぁ」
猫は、眠いよ、というようにエステルの顔の横で丸まった。
「そっか、眠いのね・・・」
エステルは、とろりと微笑むと、そのまま猫と一緒に瞳を閉じた。

・・・今日はなんか静かだなあ。
せっかく静かだし、のんびり本でも読もうかな・・・と、ヨシュアは片手に本を持ってそこへ向かう。
お気に入りのテラスのテーブル。いつでも、そこは暖かい日差しに満ちている。
しかし、今日は先客が居た。
その先客を見た瞬間、ヨシュアの表情がゆったりとほころぶ。
「・・・あぁ・・・そういうことか・・・」
・・・寝てたのか。だから静かだったのか。
視線の先には猫と一緒になって眠っているエステルの姿。
ヨシュアは羽織っていた上着を脱いでエステルにかけると、空いていた椅子に座った。
本を手にとって、ぱらり、ぱらり、とページを繰る。

・・・とはいえ、眠気が彼に伝染するのも時間の問題なのかもしれない。

 
> サントラにあわせて話を書いてみよう 〜Legend of Heroes VI〜 > 闇を彷徨う (ティータ)
闇を彷徨う (ティータ)

上も土、下も土、右も左も土・・・そんな暗い道。
そこを、一定間隔で灯る導力灯が辺りをそれなりに照らし出している。
「急がなきゃ、急がなきゃ・・・」
そして、自分に言い聞かせるように呟きながら、少女が一人そこを駆けていく。

ここの暗がりは少し怖いとは思っても、嫌いではなかった。
彼女だって、たまには町の近くの方で探検してみたりすることがある。
しかし、それは魔獣避けをしてくれる導力灯があってこそ。

工房のデータベースで見たとき、川向こうの一つが、既に危ない状態だった。
早く取り替えてやらないと、ここを通る人たちが困ってしまう。
だから、腰の道具入れには、工具と導力灯の取替え用部品が詰まっていた。
もう一つ、肩からお守りのように抱えた導力砲は、お手製なのだが・・・。

・・・なるべくなら使わないで済みますように。

魔獣は怖い。もしかしたら攻撃されるかもしれない。
それでも、むやみやたらと攻撃してまわりたい訳ではなかった。

・・・出てきませんように。間に合いますように。

祈りながらぱたぱたと走る。川向こうの切れかけた導力灯の元へ。
 
> サントラにあわせて話を書いてみよう 〜Legend of Heroes VI〜 > 俺達カプア一家! (カプア一家)
俺達カプア一家! (カプア一家)

「アニキ!山猫号のオイルチェック終了しました!オールグリーン!!」
「おし、次はプロペラ周り頼むぞ。気難しいから気合入れてやれー!」
「アイアイサー!」
キールはそれに頷くと、嬉々としてオーバルエンジンのチューンナップに向かう。


「親分!ロレントで大型の七輝石の結晶が発掘されたらしいっす!」
「おう、よくやったな!よし、次の狙いはそれで行くぞ!ジョゼット呼んで来い!!」
「ヘイ、親分!」
走っていく部下を見送って、ドルンは豪快に笑う。


「今回出た中で、一番人がこなさそうなのは・・・こっちか。
 よし、今度の中継点偵察はこの塔の辺りにするよ!」
「ラジャー!」
満足いく結論を得て、ニッと笑ったところに、手下が駆け込んでくる。
「姐さん!親分が呼んでます!」
「ドルン兄が?わかった、すぐ行く!」
ジョゼットは地図とペンを掴むと、足早にドルンの部屋に向かう。


好きで始めた空賊家業・・・ではなかったはずだった。
それでも、いつの間にか仲間も増えて、いつの間にかその生活が楽しくなっている彼らが居る。
そう、彼らは今日もにぎやかかつ景気よく、かつ豪快に空賊生活を送っている。
いつか、領地をこの手に取り返す日を見据えて。
 
> サントラにあわせて話を書いてみよう 〜Legend of Heroes VI〜 > 撃破!! (ヨシュア・エステル・アガット・ティータ)
撃破!! (ヨシュア・エステル・アガット・ティータ)

ダァ・・・ン。
最後の敵がくず折れる。
『おっしゃぁ!!』
敵の気配が無いのを一瞬で確認すると、前に出ていた二人の声がハモった。
片方は獲物の棒を景気良く振り回してVサイン。
もう片方は、気合を入れるようにガッツポーズを決める。
「はぁ、良かったあ・・・」
後方に居た小柄な少女が、彼女には少し重そうな導力砲を下ろして小さくガッツポーズを決めた。
ホッとしたような、照れるような笑顔である。
「ふぅ・・・」
警戒を怠らず、最後まで武器を構えていた黒髪の少年が、剣を・・・まるで血を払うかのように振って、鞘に収める。
「もう大丈夫かな。」
「気配は感じない。大丈夫だろ。」
辺りに目を配っていた青年が、見た目と雰囲気とはうらはらの落ち着いた声で言う。
「それじゃ、先を急ぎましょ。
 そんでもって、さっさとこの件片付けるわよ!」
棒を持った娘が、ダンっと床に棒をつく。
「あぁ。」
「オーケー。」
「はいっ!」
彼らの瞳は、既に先を見つめているのだ。
 
> CHIBI・de・babi・DEBOO! 〜Legend of Heroes VI SC〜
CHIBI・de・babi・DEBOO! 〜Legend of Heroes VI SC〜
 
> CHIBI・de・babi・DEBOO! 〜Legend of Heroes VI SC〜 > アガットの場合
アガットの場合

「あ、・・・・これは・・・」
「・・・悪い、元に戻してくれ。」
ティータが見下ろす視線の先には、小さく縮んだアガットの姿。
「あ、はい。」
くすくすと笑いながら、ティータがオーブメントを持つ。
「何だよ、気味悪ぃな。」
「いえ、・・・このサイズだと、アガットさんなんだか可愛いなって。」
あまりのコメントに一瞬言葉に詰まったところで、頭をなでられる。
「ふふ、いつもと立場逆ですね、チビスケさん。」
心なしか嬉しそうにつむがれる言葉の中、『チビスケさん』に思い切り力がこもっていた。どうやら、チビスケと呼んでいたのを根にもたれていたらしい。
「・・・い、いいからさっさと」
「あ、はい。キュリア。」
光が体を包んで、アガットはすぐにティータの背を追い越した。
「たく・・・」
上からにらみつけても、ティータはどこ吹く風でこちらを見上げている。
「だって、せっかく可愛いのに、なんだか勿体無かったんです。」
ティータは、そう言って微笑んだのだった。

 
> CHIBI・de・babi・DEBOO! 〜Legend of Heroes VI SC〜 > オリビエさんの場合
オリビエさんの場合

「ふむ・・・・なにやら小さくなってしまったようだねえ。」
そう言って、オリビエはリュートを取り出した。
爪弾くリュートの音は、オルゴールのようなかすかな音色をつむぐ。
「・・・そうしてるとなんだかおもちゃの楽隊みたいね。」
エステルは、ひょい、とオリビエを見下ろした。
「失礼な。僕は魂のこもった曲を演奏していると言うのに。この魅惑的な調べ・・・君にも届いているだろう?」
「・・・おまけにマイペースだし。」
シェラザードもあきれたようなため息をつく。しかし、オリビエはまったくそれを意に介さなかった。
「まあ、別の視線と言うのも新鮮でいいものだよ。」
にこりと笑って・・・心なしかだらけたその視線が中空を彷徨う。
「この目線だと、ご婦人方の下着が見え放題なのもきっと」
「キュリア。」
言い終わる前に、ヨシュアのアーツがオリビエを包んだ。
そして、目の前にはいつの間にやらきっちりCP200まで回復したらしいロレント出身女性遊撃士二名。
「どうやらお仕置きが必要みたいね・・・・」
「取っておきを見せてあげる」
「・・・!!ちょ、ちょっと、ま・・・」

事後。
まったく、油断も隙もありゃしない・・・そう言う彼女達から5Mは離れたところには、自称音楽家がゴミのように打ち捨てられていたのだった。
 
> CHIBI・de・babi・DEBOO! 〜Legend of Heroes VI SC〜 > ヨシュアくんの場合
ヨシュアくんの場合

「・・・・あらら・・・ずいぶん小さくなっちゃったわね。」
「・・・ごめん、元に戻してくれないかな。」
小さな赤ん坊サイズくらいのヨシュアがとてとてとエステルの方に歩いてきた。
「うん、でもちょっとまって。」
エステルは、ひょい、とヨシュアを抱え上げる。
「え!?ちょ、ちょっと」
抵抗する間もなく、ヨシュアはエステルの腕の中に収まった。
「んー・・・・これくらい小さいと本当に可愛いわねー。ヨシュアじゃないみたい。」
じーっと見つめて、ほっぺたを一つ突付く。
「だから、悠長な事言ってないで元に戻してって言ってるんだけど。」
言葉にも険と・・・少々の照れが入る。
「まあ、そんな事言わずに、もうちょっとだけ・・・」
エステルの指がもう一つヨシュアを突付こうとした。ヨシュアは両手でその指をガードする。
「エステル!
 今がどんな時かわかってるの?」
「判ってるわよ。小さいヨシュアを思う存分堪能する時でしょ。」
ヨシュアはその言葉に一瞬息を呑んで・・・そして、怒鳴った。
「緊張感の無い事言ってないでさっさと戻してよ!まったくこれだから君は・・・」
ただし、怒鳴ったつもりなのは本人だけで、周りには小さくて余り聞こえていなかったりする。もちろんエステルにも。
「あー、うん、はいはい。」
「エステル、聞いてないね。」
とりあえず手の届くエステルの頬をぺちぺちと叩く。エステルは、その手を簡単にどけてしまうと、ヨシュアを体から少し離した。
「だって、そのサイズでお小言言われても、なんか可愛いだけなんだもの。
 ほーら、高い高いー」
「エースーテールーーー!!」

ヨシュアが元に戻った後、エステルがまたネチネチとお説教を喰らったというのは・・・また別の話である。
 
> CHIBI・de・babi・DEBOO! 〜Legend of Heroes VI SC〜 > ジンさんの場合
ジンさんの場合

「悪いな、ちょっと元に戻してほしいんだが。」
ジンはそう言って歩いてきた。小さくなった、といえば小さくなっているのだが・・・。
「ティータ、回復使えたわよね。」
エステルがティータのほうを振り返る。
「あ、は、はいっ。」
慌ててオーブメントを用意するティータの視線は・・・たまにちらりちらりとジンの方を見ていた。
「ん?どうかしたのか、ティータ。」
ジンが首をかしげる。普段だと、熊が小首を傾げるようでなんとなく微笑ましい動作なのだが、今だと普通に見えるあたりが不思議な感じであった。
「いえ、あの・・・」
ティータはオーブメントをもって、ジンの前に立つ。視線は少し泳いでいるのだが、それはやがてジンの方をまっすぐに捕らえた。
「ジンさんって、小さくなっても私と変わらないくらい身長あるんですね。」
その声から、ジンにもティータの言いたい事ははっきりと判った。自然、顔がほころぶ。
「ああ、なんだ、そういうことか。
 まあ、嬢ちゃんはまだまだこれからだからな。そのうち伸びるさ。」
明るく言って、ティータの頭をぽむ、と叩く。
「うぅ・・・・そうですよね。うん。・・・頑張って牛乳飲みます。」
「ああ、たっぷり食ってたっぷり寝てたっぷり体を動かす!それが一番だ。」
肩を叩くジンに、ティータは気合を入れて頷いた。
「はいっ、頑張ります!」

目標は、大人になってチビスケから卒業する事だ。

 
> 手紙 〜Legend of Heroes VI SC〜
手紙 〜Legend of Heroes VI SC〜
 
> 手紙 〜Legend of Heroes VI SC〜 > アガットさんへ(ティータ)
アガットさんへ(ティータ)

アガットさんへ
こんにちは。もうお仕事に行ったってエルナンさんから聞いたので、お手紙書いてます。本当は直接言いたかったんですけど・・・。
昨日は本当にごめんなさい。一杯迷惑掛けちゃって、今思い出したら恥ずかしいです。きっとアガットさん困ってました・・・よね。ごめんなさい。
でも、ずっと一緒に居てくれてありがとうございました。おかげで、今日の私は、なんとか元気です。
エステルお姉ちゃんたちはいなくなっちゃったけど、きっとまた帰ってきますよね。だから、そのとき笑って出迎えたいなって思ってます。

あ、飛行船の時間になっちゃいました。
アガットさんも体に気をつけてください。無理ばっかりしないで下さい。あと・・・ツァイスに来る事があったら、ぜひうちにも寄って下さいね。
それでは、また。
  
ティータ・ラッセル
 
> 手紙 〜Legend of Heroes VI SC〜 > 親愛なる友へ(オリビエ)
親愛なる友へ(オリビエ)

親愛なる友へ
やあ、元気かい?ボクは元気過ぎてどうしようというくらい元気だよ♪今はエルモ村に居るんだ。ここはいいね、まず料理が絶品だし、景色もいいし気候も穏やかだ。それに、なんといっても温泉が最高なんだよ。日々温泉に入っているおかげで、お肌はつやつやでね。このボクの美貌をさらに輝かしくしてくれる・・・なんて素晴らしいのだろう。ボクはここに永住したいよ。ダメかなあ?
・・・って、そんな怖い顔しないでくれたまえ。なんでわかったかって?それはもちろん、このボクと親友である君との間のことだからさっ♪
・・・て、手紙を握りつぶす前に聞いてくれ。今度は真面目な話だ。
君からの報告確かに受け取った。どうやらもう時間も残されていないらしいな。こちらとしては、なるべく不自然に見えないようなルートを取って本国に戻りたいと思っている。剣聖殿にもある協力してもらわなくてはならないだろうから、それの準備も兼ねてね。あの御仁は・・・本当に底が知れないな。こちらのたくらみも全部わかってしまっている可能性だってある。「利用」は無理だろう。精々信用してもらって、「協力してもらう」のが精一杯だね。

いつも骨を折ってくれてありがとう、心底感謝している。
だから、健闘を祈る。絶対に死ぬなよ。
それでは、また。

漂泊の詩人にして天才演奏家、「オリビエ・レンハイム」

p.s.この「漂泊の詩人にして天才演奏家」ってなかなかいい二つ名だと思わないかい?
 
> 手紙 〜Legend of Heroes VI SC〜 > ヨシュアへ(エステル)
ヨシュアへ(エステル)
ヨシュアへ
おはよー。休日に朝早くから起こすのもなんだから起こさなかったんだけど、ちょっと出掛けてくるね。
帰りは・・・どれくらいかな、昼か夕方には帰ると思うけどわかんないわ。
ま、お土産楽しみにしててね。

そうそう、朝ごはんは私が作ったから心して食べるように。
あと、急用あったら、多分私はミストヴァルドの奥に居ると思うからそっちに来てね。今日こそは主を釣り上げてみせるんだから!

あ、日が昇る前に着きたいからもうそろそろ行くわ。それじゃね。

エステル
 
> 手紙 〜Legend of Heroes VI SC〜 > エステルへ(ヨシュア)
エステルへ(ヨシュア)

エステルへ
おはよう。
エルガーさんちのアルバイトに行ってきます。
朝食はテーブルの上。あと、鍋の中にスープが入ってるから温めて食べるように。お昼は悪いけど適当に食べて。
帰りはいつもどおり夕方になるけど、夕食の買い物はついでにしてくるよ。

なんで起こさなかったの?なんて言わないように。何度起こしても起きなかったのはエステルなんだから。
それじゃ、時間だから行くよ。怪我とかしないように気をつけて。

ヨシュア

 
> 手紙 〜Legend of Heroes VI SC〜 > クローゼへ(ジル)
クローゼへ(ジル)

クローゼへ
・・・って、ええっと、今はクローディア殿下って呼んだ方が良かったかしら?でも、どんな名前でもクローゼはクローゼだからこのまま行くわね。
元気にしてる?こっちはみんな変わりないわ。もちろん、孤児院のほうも。最近ね、私もだけど有志で孤児院の手伝いにもよく行ってるの。みんな元気そうにしてるから安心してて良いわよ。ただ、やっぱり優しいクローゼが居ないと寂しいところもあるみたいだけどね。モテモテね、クローゼってば。
それでね、この間は孤児院の子たちと一日遊んだりしたのよ。畑の収穫を手伝うついでにね。言っちゃ何だけどこじんまりとした畑だったから、あとはみんなで遊んでられたんだ。
ハンスってば「お兄ちゃん彼女いるのー?」なんて聞かれて噴出してたわよ。私?私も色々聞かれたけど、それは企業秘密ってやつね。いやー、最近の子供ってばマセてるわねー。もしくは若いっていいわねーって話なのかしら?若いといえば、エステルとヨシュアは外国行ったって聞いたけど、どうしてるのかしらね。きっと二人ともあの時の調子で仲良くやってるんでしょうけど。いやー、若いっていいわねー。

そんなこんなでこっちは元気でやってます。クローゼも忙しそうだけど体に気をつけて、無理しないで。
あと、身辺が落ち着いてからでいいから、こっちにも顔を出しなさい。タダでさえ休学やらなにやらあるんだもの、卒業できなくなっちゃうわよ?・・・なんてね。クローゼのおいしいお菓子が食べたいな、て思っただけよ。

それじゃ、また手紙書くわね。

ジル
 
> 休息 〜Legend of Heroes VI〜
休息 〜Legend of Heroes VI〜
 
> 休息 〜Legend of Heroes VI〜 > ジンさんとオリビエさんの場合
ジンさんとオリビエさんの場合

それは、ちょっとした休憩中のこと。
「あー・・・やれやれ。」
ジンはあぐらをかいて背を伸ばした。
「ジン、そっちに行ってもいいかい?」
オリビエがこちらに声を掛ける。
「ああ、いいぞ。」
返事をすると、オリビエはひょいとジンの傍に腰をおろした。
「やれやれ、だねえ。まったく最近の魔物ときたら・・・」
「はっはは、確かにさっきのはお前さんに集中攻撃だったな。」
先ほどの戦闘で、なぜか集中攻撃を喰らったオリビエは、銃を構える間もなく逃げ回る羽目になっていた。
「だろう?か弱いボクになんてことだ。おかげで足が棒のようだよ。」
「そうか、俺はあの無駄な動きはてっきり鍛錬の一種かと思っていたぞ。」
ジンから見れば、余裕でバラを片手に飛び回っていたようにしか見えなかったのだが。
「そりゃあだって、戦闘だって華がないとつまらないだろう?」
「・・・・・・そういうところは、ある意味尊敬できるがな。」
あきれ50%のジンを他所に、オリビエは、ふ、と遠い目をして見せた。
「いついかなる時も優雅さを忘れない・・・それがボクのポリシーでね・・・」
例えば、初対面の女性はとりあえず口説いてみるとか、いついかなる時でも懐にはバラとか、戦闘中でも物腰はあくまで優雅にそれでいて華麗に、そう、蝶のように舞い蜂のように刺すように・・・・
「それで疲れきってちゃ世話ないな。」
「ふ、多少のことは美の前ではたいしたことではないのさ。美、それはすなわち愛。愛こそこの世で一番尊く・・・」
多分計算したのであろう身振りと手振りで、いつのまにか立ち上がってまで熱演をふるってみせる。
「そんなに動くと休憩にならんぞ。」
パタパタと手を振ると、オリビエはカラっと笑った。
「ま、ジンの言うとおりだね。」
力を抜いてもう一度、座りかけたところで、オリビエは草で足を滑らせた。
「うわ!?」
優雅さも何もなく、仰向けに倒れる。
「おっと。大丈夫か?」
とりあえずジンは、自分の足の上のオリビエに声を掛けてみた。
「・・・・大丈夫だよ。なんというか、・・・ジンこそ大丈夫かい?」
オリビエもそのままの体勢でジンに答える。
「ああ。まあ・・・頭打たなくて良かったな。」
「ああ。ひざに命中しなくて良かったよ。ふむ、これならある意味快適だ。」
そう言うと、少し体をずらす。どうやら、居心地のいいポイントに移動したらしい。
「おいおい・・・俺は男をひざまくらする趣味はないぞ?」
ため息をつくと。オリビエは楽しそうに笑った。
「まあまあ。それともここは誰かの指定席かい?」
「いや、それはない。」
言いつつも、ジンの脳裏に約一名顔が浮かびかける。
しかし、自分が膝枕をするところを想像しても、されるところを想像しても、世界の終わりより確実に恐ろしかった。はっきり言うなら、自分にそんな根性はないし、そこまで命知らずにはなれない。実は、それを実行に移した猛者を約一名知ってはいるのだが、実行に移せる時点で多分彼は色々超越していたに違いないと今でも思う。
「・・・うん、絶対にない。」
あの日ちらっと見てしまったその光景を思い出して、頭を振る。あれは、癒しというより恐怖体験ではなかったのだろうか。
「ならいいじゃないか。」
完全にのんびりする体勢に入ったらしい。オリビエはそのまま足を伸ばす。
「あまりよくも無いような気がするが・・・・・まあいいか。」
「うんうん。やっぱりジンは心が広いねえ。」
「別に騒ぐほどの事でもないからな。まあ、疲れてたんだろう?精々休んどけ。」
適当に足を伸ばす。
「ありがとう。そうさせてもらうよ。・・・・ふぅ・・・」
オリビエも少し背を伸ばしてひざの上に転がった。まったくもってマイペースである。
「ま、お互い様か。」
上を見上げると、空にはわた雲が休憩しているように浮かんでいたのだった。

 
> 休息 〜Legend of Heroes VI〜 > アガットさんとティータの場合
アガットさんとティータの場合

こてん。
音はしないが、腕の辺りにそんな感触がした。
「・・・ん、寝たか。」
そちらを向けば、案の定隣に座っていたはずのティータがこちらにもたれ掛っていた。目を閉じて、気持ちよさそうに寝息を立てている。傾いて落ちかけている帽子をそっと取ってみると、金色の頭はずるりと前の方に落ちてきた。
「っと・・・」
起きるか?とこわごわそちらをを見れば、ティータは少し顔をしかめて・・・丸くなった。どうやら起きないらしい。とはいえ、これでひざの方に放っていた彼の腕は見事に下敷きになっている。そろそろと腕を外して・・・ほっと一息。ティータはアガットの脚の上で安定して寝こけている。
「ったく、俺は枕かっての。」
ため息を一つ。
とはいえ、今までの旅で疲れているであろう彼女を起こすのは忍びない。
だからまた・・・ふーっと息をつく。
ティータの帽子を空いた手に持つと、アガットは空を仰いで目を閉じたのだった。
 
> 休息 〜Legend of Heroes VI〜 > ヨシュアとエステルの場合。
ヨシュアとエステルの場合。

ばったん。
女の子にあるまじき勢いで、エステルは草の上にひっくり返った。
「ヨシュアー、気持ちいいよー。」
「ん、そうみたいだね。」
呼ぶ声に応えて、隣に腰をおろす。足を伸ばして背を伸ばそうとして・・・後ろにひっくり返った。
「エステルッ!いきなり何するのさ!?」
別にヨシュアがうしろにひっくり返りたかったわけではない。エステルに肩の辺りをつかまれて引き倒された、が正しい。
「だって、私だけ転がっててもつまらないんだもん。」
至近距離でエステルは勝手なことを言ってむくれる。
「全く・・・頭とか打ったらどうするの。」
「・・・あ、ゴメンゴメン。」
でもほら、ヨシュアならそんなドジはしないでしょ?
一応謝りつつも、目はそんなことを言っている。言わなくてもわかる。
「君って人は・・・・」
はあーっと深くため息を・・・ついたところで、こんどは腹に衝撃が来た。ヨシュアの腹の上にエステルの頭が乗っている、とも言う。
「!・・・・・・・・・エステル、今度は何?起き上がれないんだけど。」
腹の上にむかって声を掛けてみると、早くもリラックスした返事が返ってきた。
「起き上がれなくていいわよ。しばらく枕になっててくれない?」
「な・・・」
非常に勝手である。
「だってこっちの方が楽でいいなあって・・・。」
「僕はそんなに楽じゃない気がするんだけど。」
抗議はさらりと・・・猫がゴロゴロ言うように受け流された。
「細かい事気にしないの。人の枕はいいまくら、て言うでしょ?」
「どこの言葉だよ・・・。」
呆れ半分で力を抜くと、腹の上も少し力が抜けたらしい。
「まあまあ。ふふ、ありがとね、ヨシュア。」
「はいはい、どういたしまして。」
空を仰いで目を閉じる。確かにここは気持ちが良かった。おなかの上の重さも幸せに感じるくらいには。

 
> 休息 〜Legend of Heroes VI〜 > ヴァルターさんとキリカさんの場合。
ヴァルターさんとキリカさんの場合。

「水、水っ・・・と。」
ベンチにおいていた水を思い切りあおって、そこに腰掛けると、少し生き返った。
「ふー・・・やれやれだ。」
一息ついたところで、目の前にタオルが出てきた。
「お、気がきくな。」
タオルが出てきた方を見れば、キリカが隣からこちらも見ずにタオルを差し出している。
「汗臭いのが少しでもマシになればと思って。」
「・・・・・そりゃ悪かったな。」
タオルを掴んでがしがしと頭から拭く。
「別に悪くはないわ。汗をかいたんだから当たり前の事でしょう。」
そう言いながら、キリカは手元に置いていたらしい扇子で自身に風を送る。
「お、いいモン持ってんじゃねえか。俺にも・・・」
「自分で持っていらっしゃい。」
涼しげなキリカを横目で睨んで、一つため息。
「・・・ったく、可愛くない奴・・・」
「別に貴方は私にそんなものは期待していないでしょう。」
ならいいでしょう、というような声。
「ああ、そうだな。おまえはそういう奴だ。」
日常茶飯事のやりとり。今更なんとも思わない・・・のだが、少しは抗議したい気分でもあった。汗だくになるほど動いたおかげで少々疲れていた、というのもある。
ベンチを立つように見せかけて。
どん。
「!」
キリカの脚の上に頭を乗せると、下を見たキリカの瞳が思い切り見開かれた。少々してやったり気分である。
「ヴァルター。何の真似?」
声は常より少し寒い。・・・が、気にせず嘯いてみせる。
「こっちなら風が当たるかと思っただけだ。」
「・・・・そう。まあ、間違っては居ないわね。」
「だろう?」
引き締まった脚は、女性らしく適度に柔らかくて非常に居心地がよかった。
「私としては、重くて邪魔なのだけど。」
「いい鍛錬になるんじゃないか?」
そう言って目を閉じてみせる。ややあって、キリカのため息が漏れた。
「仕方ないわね。休憩の間だけよ。」
声の内訳はため息、呆れその他悪感情で8割・・・残り2割が少々柔らかい。だから、好意はありがたく受け取る事にした。
「おう。ありがとな。」
今度は息を呑む音が聞こえた。何があったのかと目をあける。
「・・・貴方でもお礼が言えたのね。」
ややあって呟かれた非常に失礼な言葉に、ヴァルターは軽く鼻を鳴らした。
「ふん。何とでも言え。」

風が、顔を撫でていく。

 
> 休息 〜Legend of Heroes VI〜 > カシウスさんとレナさんの場合。
カシウスさんとレナさんの場合。

木陰は、彼女にとっても彼女の娘にとってもお気に入りの場所だった。
一緒に手遊びをしてみたり、昼食をそこで取ってみたり、絵本を読んでみたり。

・・・腕に軽い衝撃が来た。
そちらを見れば、案の定エステルが眠りこけている。
「あらあら・・・仕方ないわね。」
少し肩をすくめたレナの手元には開いた絵本があった。一緒に絵本を読んでいたはずなのに、睡魔は絵本の終わりまで待ってはくれなかったらしい。
絵本を閉じて、脇に置く。体勢をずらしてエステルをそっと膝枕すると、エステルは何事か呟いて丸くなった。別に寝かしつけるつもりはなかったのだが、安心しきった我が子の寝顔はそれだけで心を和ませてくれる。
もう少し眠りが深くなったらベッドに運ぶことにして、レナはエステルの髪を優しく撫でた。
背中を気持ち木の幹に預けると、樹の鼓動が聞こえてくる。

・・・・・・・・

ふと気がつけば、自分の頭はしっかりした肩に預けられていた。肩にも手が回っている。感触に覚えがあった。絶対の安心をくれる人のものだ。
「・・・・・・・あなた。」
薄く開けた目に映るのは、長い脚の上で絵本をめくっている大きな手。周囲の明るさからすると、ありがたいことにそんなに時間は経っていないらしい。
「ん。起きたのか。」
少し低い声は、聴き慣れたカシウスのものだ。
「ええ・・・ありがとう。」
「どういたしまして。エステルならまだ寝てるぞ。」
「そう。ベッドに運んであげないと風邪ひいちゃうわね。」
身を起こす前に、カシウスのほうを向けば、軽いキスが落ちてきた。
「エステルは俺が運ぶよ。だから、もう少し休むといい。」
疲れてるんだろう?というのが、言葉の隙間から聞こえてきた。
肩に回されている手は全然緩んでいない。声の真面目さからするに、頷かない限りきっと放してはくれないのだろう。
だから、その気持ちは素直に受け取る事にした。
「・・・・・・ありがとう。」
言うと、腕が緩む。カシウスは立ち上がると、エステルを抱えて家の方に戻っていった。
脚と腕と背を思い切り伸ばす。新しい空気が体に入ってきた気がした。
深呼吸、一つ、二つ。そうしてまた木の幹に背中を預ける。
眠るためではなく、戻ってくるカシウスを待つために。

 
> ぎゅっとしてみた 〜空の軌跡・SO1・SO2〜
ぎゅっとしてみた 〜空の軌跡・SO1・SO2〜
 
> ぎゅっとしてみた 〜空の軌跡・SO1・SO2〜 > エステルとヨシュアの場合(空の軌跡)
エステルとヨシュアの場合(空の軌跡)
「あ、ヨシュアっ!」
ぱたぱたっと勢いよく駆けて来る足音がして、ヨシュアはそちらを振り向いた。
振り向くと同時に、気持ちのいい衝撃。背中の方に回された腕が、少々きつい。
「エステル・・・どうしたの?」
反射的に受け止めて、とりあえず聞いてみる。と、エステルは、目をキラキラさせてこちらを見た。
「あのね、とーっても大事な話なんだけどっ!」
こんなに嬉しそうに言われる『大事な話』にろくなものはない。
「・・・・・・・・何?」
「今日の食事当番変わって!」
・・・ほらきた。
ちなみに本日の食事当番はエステルである。
「・・・・何かあったの?」
少しだけ体を離して聞いてみる。
「さっきね、古い釣り道具譲ってくれるって、リノンさんがね!」
興奮していて、エステルの言葉はかなり適当になってしまっている。
よくよく聞いてみればつまり、雑貨屋で売り物にならなくなった棚落ち品の釣り道具をバラして分けてくれる、ということらしい。・・・・で、閉店後に取りに行きたいし、説明も聞いてきたいから帰りが遅くなるから食事よろしく・・・とかなんとか。
「僕、昨日の夜は当番だったし、今朝も作った気がするんだけど?」
一応の抵抗を試みる。が、エステルは、手を合わせて拝み倒してきた。
「いつも感謝してますヨシュア様!そこをなんとかお願い!」
ため息をついて見せても、エステルはめげない。拒否するのは簡単だが、・・・なぜかそんな気にならなかった。少しだけもったいぶって見せてから・・・頷く。
「・・・・わかった。いいよ。」
「やったああ!」
エステルは心底嬉しそうな笑顔で、再び抱きついてきた。
「ヨシュアありがとう、大好きー!!」
「あーはいはい。」
全くもう調子いいんだから。そうぼやきつつも、なんとなく幸せなヨシュアだった。
 
> ぎゅっとしてみた 〜空の軌跡・SO1・SO2〜 > アガットさんとティータの場合(空の軌跡)
アガットさんとティータの場合(空の軌跡)

全く、どこの誰だろうか。未成年に酒を飲ませたバカは。
ぶちぶちとぼやきつつ、アガットは背中に酔っ払いをおぶって廊下を歩いていた。酔っ払いことティータは、すやすやと赤い顔で寝息を立てている。
「・・・・ったく。」
ずり落ちてきたティータを、よいせっと元の位置に戻すと、背中でもぞりとティータが動いた。
「ん?起きたのか?」
「・・・・・む・・・・・・寝てま・・・す。」
コレだから酔っ払いは。
肩越しに様子を見ようとしたところで、首にきゅっとしがみつかれた。
「こら、しめるな。苦しいだろが。」
「・・・・・・・やぁ。・・・えへへ・・・アガットさん・・・だあいすき・・・・」
寝ぼけている。確実に。おまけに酔っ払っている。
「・・・ったく、酒なんか飲むからだ。」
ぼそっと呟く。
「おさけ・・・飲んでないですよ・・・」
意図せず返ってきた返答に、アガットは眉をしかめた。
「なら、そのザマは何だ。」
「・・・・・・わから・・・な・・・」
すよすよと、また寝息が聞こえてきた。アガットはまた一つため息をつく。
「部屋まで行ったら捨てて帰るぞ。」
返事はない。かわりに、また抱きつかれた。
「・・・・・やれやれだぜ。」
アガットは小さくぼやいて、また歩き出したのだった。
 
> ぎゅっとしてみた 〜空の軌跡・SO1・SO2〜 > アシュトンとプリシスの場合(SO2)
アシュトンとプリシスの場合(SO2)
「アーシュートーン!」
声のする方を振り向けば、プリシスが息せき切ってこちらにかけてくるところだった。
「どうしたんだい、プリシス。」
「ん、えっとね。時間あるなら一緒に買物でもどーかなって思ってさ。」
肩の上にひょいっと無人君を乗せて、プリシスははじけそうな笑顔でこちらを見上げた。
「え・・・あ、うん、よろこんで!」
その笑顔にはかなわない。アシュトンも笑いかける。
ここ最近、プリシスはこうやって笑いかけてくれることが多くなった。前みたいにそっけなくない。前みたいに「あとで!」なんてこともない。正直言わなくても、これはとても嬉しい事だった。
「どこ行こっか?アシュトンは何か用事あった?」
「ん、まだ武器見てないから見てこようかなって思ってたんだけど。」
「わかった、んじゃ、付き合うよ。」
ぺたん、と横にならんで一緒に歩き出す。距離が近い。前よりはるかに。アシュトンのことを聞いてくれるようになった。前からすれば、嘘みたいだ。
・・・プリシス、僕のこと・・・
好きになってくれたのかな、なんて、甘い妄想がよぎったところで、横合いから声が掛かった。
「ね、アシュトン。」
「何、プリシス。」
見下ろせば、ちょっと照れたような顔で片手を差し出される。瞬間的に顔と頭に血が上った。
・・・ええと、これは、これはもしかして・・・!!
   いやでも、もしかしたら違うかもしれないし、違ったらものすごく恥ずかし・・・ああでも・・・!!
なるようになれ!と目をつぶる。差し出された手を、ぎゅっと握ると、プリシスは顔を赤くして、幸せそうに微笑んだ。あまりに可愛くて、見惚れてしまう。
「えへへ・・・いこ。」
「・・・うん。」
意識を戻して、ゆっくり前に。ぎゅっと握った手が、なんだか柔らかくて気持ちがいい。いや、それ以上に、今この状態が幸せすぎて、何が何やら。とりあえずは気が遠くなりそうだ。
・・・神様、夢でも夢じゃなくてもいいですから、この時間がもうちょっと続きますように!
心の底からそう思う。それと、もう一つ、勇気を出して大決心。
・・・今度は、僕から誘うんだ。
前に視線を戻す。目的地は、まだもうちょっと先のようだった。

 
> ぎゅっとしてみた 〜空の軌跡・SO1・SO2〜 > シウスとフィアの場合(SO1)
シウスとフィアの場合(SO1)

「こんなにのんびりするのは久しぶりだ。騎士団ではずっと肩肘張ってたからな。」
ホッとしたような顔で、フィアはそう言って伸びをした。
ムーア大陸にわたってから、フィアは何かのほほんとした顔をしていることが多くなった。温暖な気候と、アストラルから離れた事が効いているのだろうか。見慣れたキツい感じからは大分遠い。
「・・・なあ・・・・フィア。」
「なんだ?」
振り返るフィアに、シウスは一息ついて先を続けた。
「・・・苦労かけて悪かった。騎士団のことだ。」
「・・・・・・な・・・・。」
目が大きく見開かれる。そのまま固まる事2秒。フィアは一つ首を振った。
「・・・今更何を言っている。」
「ああ、本当にな。」
「大体・・・気にするくらいなら最初から行くな。」
ぼそりと呟かれる、くすぶり続ける怒りの言葉は、やはり痛い。しかし、それは受け止める義務のあるものだった。
「ああ、そうだったな。すまない。」
「全くだ。謝られてどうなるってものでもないだろう。」
むくれているようで、その言葉は少し軽い。
「・・・でもな、シウス。・・・その一言で私は報われたような気がする。」
苦労がわかってもらえたようで、なんだか嬉しい。
そう言うと、ちょっと手を貸せ、とフィアは手を差し出した。その手に自分の手を重ねると、力いっぱい握られる。
「っててっ。何すんだ!」
「ふふ、これくらいはな。」
フィアはくすくすと笑った。握り締められた手は離れない。
「シウス。お前には外が合ってるんだろう。旅していると、そう感じるんだ。」
「フィア・・・。」
フィアの視線が手のほうに落ちる。
だけど、必ず帰って来い。
手に、ぎゅっと力を込められて、その言葉は吐き出された。それを最後に、フィアは「もう行く」と、こっちの返事も聞かずに行ってしまう。
一人残されて、その後姿を見る。
「・・・そうだな。」
ぼそり、とつぶやくと、シウスもその場を後にしたのだった。
 
> ぎゅっとしてみた 〜空の軌跡・SO1・SO2〜 > ロニキスとイリアの場合(SO1)
ロニキスとイリアの場合(SO1)
「艦長ー!ほーら、杯が空ですよぉ!」
むぎゅっと。後ろからイリアがくっ付いてきた。
片手はロニキスの肩に。もう片方の手に持った酒瓶は、ロニキスのグラスに酒を注いでいる。
・・・完全に出来上がったか・・・
こうなると手をつけられない。ロニキスは一つ息をついて、注がれた酒を思い切り飲み干した。
「わぁあー!艦長カッコいいー!」
思い切り後ろから抱きしめられて、身動きが取れなくなる。
さらに酒が注がれるグラスを見て、後ろの酔っ払いを見て、またグラスを見て、ため息。
艦に居た時は。冷静で、有能な副官だった気がする。今だって、それはまあ有能な副官だが・・・ロークに降りてから、少しずつ彼女の別の面も見えてきたような気がしていた。アクセサリーにはしゃいだり、ミリーと一緒になって女の会話なるものに花を咲かせたり、ラティをからかって遊んだり、・・・色仕掛けを実践してみたり、ネコ格闘に精を出していたり。
・・・旅というものはそういうものなんだろうが。
イメージが少しずつ崩れてきたのは否定しない。それでも、それはロニキスの目にはさほど悪くは映っていなかった。
肩肘を張っていないほうが、本来の表情や人間性が見えてくるし、その分人としての魅力が浮き立つ。
「艦長ぉ?飲まないんですかぁ?」
耳元で囁くように言われて、思考が現実に戻ってきた。
「あ、ああ。頂くよ。」
グラスを持って、それに口をつける。イリアはそれをとろりとした瞳で見つめていた。
「どうしたんだ?」
「えへへー・・・」
また、きゅっと抱きつかれる。
「お酒飲んでる艦長も素敵ですー・・・」
「・・・そ、そうか・・・?」
「そうですよぉー・・・ふふふ。」
こてん、と頭と頭がぶつかる。
酔っ払いの言う事を真に受けてはいけないことくらい判る。
わかるのだが。
・・・イリアの奴、私のことを一体どういう風に思っているんだ・・・?
微妙な疑問がさすがに頭をよぎる一瞬だった。


翌日。例によって2人とも二日酔いに悩まされる羽目になったのは言うまでもない。
 
> Prologue & Epilogue
Prologue & Epilogue
 
> Prologue & Epilogue > 困った指輪:side シウス(SO1)
困った指輪:side シウス(SO1)
「シウスー!あれかってー!あれー!」
「シウスさん、こっちもッスー!」
「ああ、どれだあ?」
買い物に出た3人は、行く先々で大騒ぎしながら旅の買い物を進めていた。
ペリシーがマジックカンバスに反応しているかと思えば、ティニークは修行道具を見て目を輝かせている。そして、その度に「あれ欲しい!」「それ買って!」と来るわけである。
一応、財布を預かっているのはシウスだった。
しかし、これでは買い物に出た旅仲間というより、子供二人抱えた子守人である。
・・・まあ、体力は有り余っているので、はしゃぎまくる二人についていくことはできるのだが。
『いい、無駄な買い物はしないでよ。』
出掛けにイリアから、それはもうキツく言われていた。その言葉が頭をよぎる。
・・・あーもう、わかってるよ!
頭の中でガミガミと言うイリアに言い返す。
と。
「シウスー!あれかって!」
また来た。
「今度は何だ?猫缶なら買わねぇぞ。」
「違うよー。あれあれー。」
ペリシーが引っ張っていったのは、お菓子売り場だった。
ティニークもそちらで待ち構えている。
「これかってー!」
ペリシーが指差したのは、七色の飴玉。
「無駄な買い物はしねえ。」
一刀両断。すると、脇からまで声が上がった。
「買ってッスー。」
「ティニーク、お前までかよ・・・。
 駄目だ。下手にこんなもん買って行ったらイリアに殺されちまう。」
無駄な買い物はしないでっていったじゃない!
・・・鬼の形相はなぜかとてもリアルに想像できた。
「でもー。イリアも甘いもの好きだよ?あたしぃも。」
「ミリーさんも甘いもの好きッスよ。もちろん私も。」
買ってー!
そんな視線を受け止め、眉間にしわがよる。
「宿で頑張ってる皆さんに差し入れしたらきっと喜ばれるッス。細かい作業は疲れるッス。」
「甘いものは疲れないよー。」
二人掛りでさらに言い募る。
「フィアだってきっと喜ぶよー。」
「そうッス、フィアさんだってきっと喜ぶッス!」
「なんでそこでフィアが出てくるんだ!」
思わず怒鳴る。きょとんとした視線を二人から返される。
沈黙が落ちた。
何でって。
イリア、ミリーときたら、残りの女はペリシーにフィアだ。つまりただの順番。
なんだかとても気まずかった。
「・・・・・・わかった。買ってやる。でもな、イリアにはうまく言うんだぞ。」
「わかったぁ!ありがとぉー♪」
「了解ッス!ありがとうッス!」
がさがさ、とあっという間に人数分の飴玉が手に入った。
「・・・ったく・・・。」
いや、今のは半ば自爆で自業自得だ。
シウスは、そう、ため息だけついて忘れることにしたのだった。


→「困った指輪」(SO1)に続く
 
> Prologue & Epilogue > 家族写真:後日談(空の軌跡)
家族写真:後日談(空の軌跡)
「あ。」
ひらり。それは、舞い落ちた。
「あら?何か落ちたわよ。」
ヨシュアが身をかがめる前に、エステルがそれをひょい、と拾い上げる。
「写真?・・・って、え、あああああ!?」
それを見たエステルの表情が、さあっと変わった。
・・・見られてはならないものを見られてしまった。それだけは悟れる。
「ヨシュア、これ何。いつ撮ったの。なんで持ち歩いてるの。」
ずい、と突きつけられた写真は、もう何年も前の写真だった。ブライト家に入ってしばらくした頃、正装で撮った家族写真・・・のついでにもらったものだ。
今より幼い白いドレスを着た栗色の髪のお姫様は、正装した自分に寄りかかるようにして眠っている。
「ずっと前家族写真撮っただろ。あの時ついでにもらったんだよ。」
その写真は今現在自分の手元に戻ってくる様子はない。写真をしっかり持ったままエステルは詰問する。
「何で持ち歩いてるの!」
「それは・・・エステルが見たらきっとゴミ箱行きだと思ったからさ。でも、綺麗に撮れてたし、捨てられてしまうのは勿体無いかなあと思って。」
「捨てていいわよ!」
顔を真っ赤にして怒鳴る。
「もう、よりによって、こんな間抜けな写真持ち歩くことないじゃない!私じゃなくて誰か別の人が拾ったらどうするつもりだったのよ!」
「間抜けかなあ?・・・可愛いと思うけど。拾った人もそう思うだけじゃないかな?」
小さく笑って言う。
「んなっ・・・!?」
絶句し、固まったエステルから写真を取り上げる。
「拾ってくれてありがとう。でも、これは僕が貰ったものだから返してもらうよ。」
元通り、切り込みを入れたページに挟む。
「ちょっと、ヨシュア、それ返しなさいよ!じゃなかったら捨てて!」
われに返ったエステルがまた騒ぎ出す。
「エステル、なんでそんなに嫌なの?」
手帳を鞄にしまって、そうたずねる。エステルの顔がまた赤くなった。
「そ、それは・・・!」
「どうして?」
「だ、だって」
じっと見据えて、答えを待つ。
「・・・だって、どうせ持ちあるくなら、もっと可愛い顔したの持ってて欲しいじゃない!」
かあああっとなって、まくし立てる。
「よりによってあんな写真持ち歩くなんて、あんまりよ!」
言葉の中身もその表情も、その気持ちも。可愛すぎて仕方ない。思わず頬が緩む。
「僕はね、エステル。」
そう言って、エステルの頬に手を伸ばす。
「どんな君も世界で何より可愛いと思ってるよ。」
チュ、と。軽く口付ける。

エステルは今度こそ耳まで真っ赤になって、言葉を失ったようだった。



→「家族写真」(空の軌跡)後日談
 
> Prologue & Epilogue > trust you :side アルベル(SO3)
trust you :side アルベル(SO3)
二人はボロボロだった。
突発的戦闘を二人で切り抜けたせいだ。相手も悪かった。生きているだけマシ、級の身体を引きずり宿に戻る。

ネルがドアをあけると、内側から温かい光がこぼれ出してきた。
「・・・つい・・・た・・・」
もつれるように玄関先に倒れこむと、どたばたと音がして、視界に影がさす。
「なっ・・・」
「何やってたんだお前ら!?」
他のメンバーの声。どうやら皆起き出していたらしい。物好きな事である。
「酷いわね・・・ソフィア、回復お願い。私は薬を取ってくるわ。」
「う、うん!わかった!」
それらの声は、どんどん遠くなっていく。
「アルベル!?」
耳元で聞こえる、ネルの声。
意識の片隅で、珍しいこともある、とどこか冷静な考えがよぎる。それを最後に全てが急速に白く遠くなっていった。


何か、知ったものをみたような気がする。
今まで手に掛けてきた敵。死んだと聞かされたヴォックス。炎に捲かれて死んだ父。
妙に白っぽい、虹色とも暗闇とも光ともつかない空間で、何故だかそれらは自分を呼んでいた、ようだった。・・・全ては曖昧だ。
ただ、呼ばれると行きたくなくなるのは人情である。さっさと踵を返すと、足元にあったらしい穴だか段差だか崖だかに落ちた。
体の痛みに目をあけると、そこは崖下・・・ではなく、やはり白い空間。
「あ・・・!」
聞き覚えのある声。のろのろとそちらに頭を動かすと、赤い髪の女が微笑んだ。
「・・・よかった、気がついたんだね。」
誰だ、コレは。
ぼんやりした頭は、まだ現況を理解しては居ない。
「失血死寸前だったんだ。全く、アンタがしぶとくて助かったよ。」
そう、息をつく。
水を持ってくるとか何とか、そう言って視界から消える女。
ひとつ瞬きする間に、思い出した。
ネルだ。
確か、剣でも振ってこようと外に出て、ネルと出くわして、キメラと戦って、宿まで・・・
戻ってからの記憶がない。ここは、確かに宿なのだが。
「俺は・・・?」
「2日寝たきりだったんだよ。」
「・・・・・・。」
辺りは部屋の明かりのみの明るさだ。とすると、今は夜なのだろうか。
身体を起こそうとすると、少々手荒にベッドに倒された。
「まだ駄目だ。傷も塞がり切れてないし、しばらくは地味に回復するんだね。」
ほら、水。
渡された水差しで水を飲む。ネルが横で口を開く。
「先に謝っとく。ごめん、私の力不足でアンタを殺しかけた。」
「・・・テメェ頭でも腐ったか?」
それは口をついて、出てきた。
「そんな事考える暇があるなら鍛錬にでも励んでやがれ阿呆が。」
寝起きだというのに、不愉快だ。水差しをサイドテーブルに放り出す。
「お前なんかに殺されかけただ?冗談じゃねぇ。俺が死に掛かったのは、テメェの実力不足だ。」
ネルは沈黙のままだ。
「・・・解ったら、つまんねえこと考えてないでさっさと消えろ。」
そう言うだけ言って、寝返りを打つ。目を閉じる。
がた、と小さく音がした。席を立ったのだろう。少しして、小さなささやきが聞こえた、気がした。
「ヒーリング」
暖かい何かが全身を包む。身体が少し楽になり、その感覚に身を浸し、・・・そして我に返る。
「阿呆!何やってる!」
「うわっ!?」
がば、と起きて、ネルの口に手を伸ばす。・・・そこで、全身に痛みが戻ってきた。一瞬固まりかけて、意地で手を下ろす。
「アンタこそ何やってるんだい!?起き上がるなって言っただろう!」
ばたん。また転がされる。体中痛い。
「・・・阿呆が。また倒れたかったのか?」
元通り寝た格好に戻る。
「倒れるって・・・」
ネルは当惑したように眉をしかめ、そして、息をついた。
「・・・私は外傷はアンタほど酷くなかったからね。一日寝てたら全快したよ。」
内心、・・・少しだけほっとする。
「・・・・・・意外にしぶとかったんだな。」
「アンタほどじゃないさ。解ったらもう一度黙っといてくれるかい?」
ぼそぼそぼそ、と聞きなれた韻が踏まれ、もう一度、身体を暖かいものが包んだ。
「・・・・・・。」
「これで、少しは楽に眠れるだろ。・・・おやすみ。」
そう言うと、ネルはそのまま明かりを消して部屋を出て行った。
暗がりに一人残される。
攻撃にサポートにと飛び回り、呪紋をかけ続けていた姿は今も鮮明に残っていた。ただ、回復の力に包まれて振り向いた先、倒れていったネルの姿はそれよりももっと強く残っている。背筋が寒かったあの光景。おまけに、やっと気づいたかと思ったら、朦朧としながら回復を掛けようとしていた。あれは完全な救いようのない阿呆だ。
ついてくるのもこないのもあちらの勝手だ。その結果がどうあろうがこちらが知ったことではない。
ただ。・・・自分にもう少し力があれば、こんな無様な姿を晒す事はなかっただろうし、ネルが倒れるまで戦わせることもなかったかもしれない、とは思わなくもない。悪いことをしたとはこれっぽっちも思ってはいないが、こちらが倒れた時に辛気臭い顔をされるのは嫌だった。お前のせいじゃない、といったって、あの性格ならきっと理解できないに違いない。つくづく面倒な奴だと思う。
目を閉じて、息を吐いた。

・・・強くなりてぇなぁ・・・。

何度願ったか解らない願いは、また身体を通り過ぎていったのだった。


→「trust you」(SO3) 後日談
 
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プレゼント:side ティータ(空の軌跡)
「それじゃ、また来て下さいね。」
「ああ。」
ぽんぽん、と頭をなでられる。
「またな。」
そう言って、アガットはいつものように出て行った。
ぼんやり、その光景を見送る。
まだ、少し感触が残っていた。
頭の上にはごわついた手袋の感じ。少し肌に触れたところは、毛羽立った皮でざらつく感じ。
いつもと同じ、少し安心する感じ。
なんとなく、頭に手を載せてみる。と、ざらり、と感触があった。頭の上の粉をぱたぱたと払い落として、ふと思う。
・・・そういえば、結構くたびれてるのかな。
あの手袋は、重剣を振り回す手を守り、仕事に飛び回る主人についていき、もしかしなくてもかなり使い込んでボロボロなのではないだろうか。
いつもお世話になっているし、ずっと気にかけてもらっていることだし。
よし、とうなづく。明日の予定がひとつたった。

父の部屋を探すと、遊撃士時代に使っていたと思しき手袋が出てきた。くたびれたというより、長年しまいこまれていて古びたそのグローブは、それでも見るからに頑丈そうだ。ただ、父が使うのはエステルと同じく棒術。アガットに渡すなら、もう少しゴツい作りのものがいいだろうと思う。
大体の想像はついた。とりあえず参考にそれを手に持って、ティータは武器屋へと赴いたのだった。
「いらっしゃい。おや、ティータじゃないか。今日はどうしたんだい?」
店の主人がそう出迎える。ティータもぺこりと頭を下げた。
「こんにちは。ええと、こんな感じのグローブを探してるんですけど。」
父のグローブを見せると、武器屋の主人はしみじみとそれを眺めた。
「ああ、お父さんにプレゼントかい。でもそれは技師用じゃなくて遊撃士用みたいだが。」
グローブの持ち主をあっさりと割り出し、店主が尋ねる。
「そうじゃなくて・・・あ、でも、遊撃士用を探してるんです。えっと、なるべく頑丈そうなのがいいんですけど。」
店主は少しだけ不思議そうな顔をしたが、あっさり頷いて言った。
「ふむ、遊撃士用で頑丈なもの、ね。・・・ちょっと待ってな。」
ええと、これとか、これと・・・ああ、これもかな。
屈んだり立ち上がったり背伸びしたりして、店主はいくつかグローブを出してきた。
「この辺りになるかな。好きなのを選ぶといい。」
「あ、ありがとうございます!」
質実剛健、という言葉がしっくりくるようなラインナップ。ただ、工房で開発したらしく機能性を追及したものや、職人の技が光るようなものまで幅広い。
「んー・・・。」
悩み、迷う。店主がほかの客の相手をしているときも悩み、見比べて。やっと手にしたものは、結局機能性より何より頑丈で長持ちしそうな職人のものだった。・・・少しでも長く使ってほしい、と思ってしまったのが決定打だ。
「すみません、これにします。」
棚の整理に入っていた店主に声をかける。店主は、整頓の手を休め、こちらに戻ってきた。
「おお、やっと決まったかい。・・・どれどれ。」
はい、と渡すと、店主は顔をほころばせた。
「なかなかいいものを選んだな。ティータは見る目があるよ。」
「えへへ・・・、ありがとうございます。」
会計を済ませ、品を受け取る。家への足取りは軽かった。
家に帰り、棚のところに仕舞っても、ついついそちらばかり見てしまう。
喜んでくれるといいな、と。そう思っていたら、ふと思いついた。
封をそっと開けて、手袋を取り出す。
頑丈でゴツい・・・だけど柔らかなその手袋なら、なんとかできそうな気がした。
裁縫道具を出し、適当な布を引っ張り出し、ペンを持って。
ご満悦で小さく笑って、その細工は完成した。
元通りに封をして、包みを抱くと、また笑いがこぼれてくる。
「・・・アガットさん、早く来ないかな。」
次の来訪はいつだろう。
いつもより、ずっとずっと。それは待ち遠しくて仕方がない事なのだった。

→「プレゼント」(空の軌跡)に続く
 
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