横浜はスイーツ街かと言うほどにパティスリーが多い。
ただし、本日、3月13日。
普段女性のみで賑わう菓子屋には、自分と同じくちらりほらりと男性の姿も見受けられた。
明日は3月14日。ホワイトデーなのだ。
菓子店はそれこそ選びたい放題だった。評判の良い店まで足を運び、ひとまず女性が好みそうな菓子をさくさくとチョイスしていく。おしゃれ心を忘れなければ、大体なんとかなるものである。それにこれはお返しではある事だし。
職場へのお返しだの知り合いへのお返しだのと選ぶうちに、荷物は増えていく。残るは若干どころではなくチープだった静岡の分を残すのみだった。
ちなみに明日は神戸でデートの予定だ。神戸当人もケーキくらいでいいと言っていたので、他のより色をつけた程度のケーキをキープしている。明日仕事が終わったら、それを持って神戸に行けばいいだろう。チョコレートの味が例年頭一つ抜けているというのもあり、横浜を擁する者として少し慎重に選んでみたところだった。
そして、である。
チョコバットの礼は何にすべきか。
対抗して駄菓子、と考えてみる。しかし、この神奈川がそんなものを渡すなど、横浜を擁する者としてのプライドが許さない。
詰め合わせ菓子のうちの一枚、とも考えてみた。まっさきに浮かんだ鳩サブレは、果たして家にストックしてあっただろうか。
んー、と考え込んでしばし。その時間すら何かもったいないような気がしてきた。相手はチョコバットだ。何だっていいではないか。
目に付いたところで、適当にあったクッキーの小袋を手に取り、レジに持っていった。1,2枚静岡に渡して、あとは自分で食べてしまってもいいのだし。ああ、そういえば最近紅茶を作り出したとかなんとか言ってた様な、少し味見をしに行ってやってもいいかもしれない。明日は神戸行きで暇などないことを考えれば、今日行けばいいではないか。一度家を経由して静岡に行けば、荷物も減る。
よし、と荷物を抱えなおした。
向かうは駅。家。そして静岡だ。
決めると同時、よお来たねえ、と笑う静岡の顔が浮かんだ。
それは、数時間後には現実になるのだ。そう思っただけで、心が弾んだ。