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ラヴェンヌ村某所 19:00

アガットは自分の家に戻ってきていた。
ベッドの上にはぬいぐるみ。おき場所に困った挙句に置いたのだが、微妙に視界に入ってきて、なんともいえない。
しかし、元々どこに置いてあったか解らない。前に入ったときにも置いてあったはずなのに、気付けなかった。そもそも、室内の配置も昔のままなのに、ぬいぐるみの場所はわからない。・・・それがなんだか悔しかった。
ミーシャのことや昔住んでいた家のこと、絶対に忘れていないと思っていたのに、こんなところから記憶が抜けかけている。あまり興味が無かったから、とか、そう言う次元の話ではなかった。
「・・・俺も薄情だよな。」
呟きは、ぬいぐるみに吸い込まれる。10年間一度として気付かなかった、形見のぬいぐるみ。
それは、少し首を傾げてそこに座っていた。大きなぬいぐるみ、という以外の特徴は、腕に巻かれたリボンくらいだろうか。なぜかそれだけ新しいようで、色が鮮やかだった。
・・・?
奇妙に思ってリボンを確かめる。
ぬいぐるみ全体に比べると、そのリボンは妙に新しかった。色もあせていないから、巻かれて一年は経っていないだろう。
一瞬ためらって、リボンを外してみる。思ったとおり、別に日焼けの跡もない。巻かれたばかりのようだった。
・・・誰だ?
リボンを付け直しながら、考える。
ここに入った人間は限られている。誰かが掃除の時にでもつけたのだろうか。しかし、普通・・・そんな事をするだろうか?
上手く合わない結び目に少々てこずりながらつけ終わる。その時、リボンの裏面に何かが見えた。
「・・・・そうか。」
それの意味がわかると同時、小さく笑いが洩れる。
あの時、自分は何にも気付けなかったというのに、・・・どうやら、そいつは目ざとく気付いていたようだ。ぬいぐるみの頭を撫でると、ミーシャよりさきに、そいつのことが頭に浮かんだ。

ピンクのリボンに、スパナを象ったスタンプのワンポイント。やった人間は明白だった。



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