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遊撃士協会ボース支部 13:30

「そういえば、キリカから聞いたんじゃが。」
仕事の報告に来たアガットに、受付のルグランは茶のみ話でもするように切り出した。
「何だ?」
「しあさっての木曜日、あの嬢ちゃんの誕生日だそうだぞ。」
「ティータか?」
真っ先に頭をよぎったその名前を素で口にしてしまい、内心慌てること一瞬。
・・・しかし、キリカから話が来るような「嬢ちゃん」など、よく考えなくてもティータしか居ない事に気がついて、少し落ち着く。表情にはきっと出ていない。
「そうそう。あのラッセル博士の孫娘じゃよ。元気にしとるかのう。」
「この間見た時は元気そうだったが・・・そうか、もうそんなになるんだな。」
確か三週間前くらいだ。相変わらず小動物のように走り回っていた気がする。
「ホッホ。全く、いい孫を持って博士がうらやましいわい。」
ルグランもそれを受けて笑う。
と。
「こんにちはー!」
開け放しの協会のドアから、元気な声が響いた。
アネラスだ。アガット先輩も、と声を掛けてくるのに適当に返すと、アネラスはルグランの方に向き直った。
「・・・で、何がうらやましいんですか?」
ルグランは、一瞬目を見開いて、すぐに相好を崩した。
「なんじゃ、聞こえとったのか。ラッセル博士の事じゃよ。
 ほれ、あのティータちゃん。今度の木曜日が誕生日なんだそうじゃ。」
「ああ、ティータちゃん!そっかー。もういくつでしたっけ・・・13かな?」
ますます可愛くなってるんだろうなあ・・・と言うアネラスの表情はうっとりとしていて正直少々怖い。しかし、それは唐突におわり、アネラスはこちらに向き直る。
「で、アガット先輩は何をプレゼントするんですか?」
「・・・なんでそうなるんだ?」
行ってもいいかもしれない、とは思った。しかし、既に決まっている事のように言われると、何かが違う気がする。しかし、アネラスは不思議そうに見上げるだけだ。
「だって、聞いたからにはプレゼント持っていくのが礼儀でしょう?」
「そりゃそうじゃのう。」
ルグランまで、深々と相槌を打つ。
「・・・・・・あのなあ・・・」
「その感じだと、まだ決めてませんね?選べないなら付き合いますよ?」
男の人一人じゃ入りにくい所だってありますしね、喜んでくれるのって何だろう、かわいいぬいぐるみとかかなあ・・・とかなんとか。こちらの返事も聞かずに話は転がりだす。
「待て。俺はまだ買うとは」
「じゃあ手造りですか!?すごい!愛ですね!アガット先輩でもそういうこと」
「だからなんでそうなるんだ!」
怒鳴りつけると、さすがに少しアネラスも黙った。
「おお、照れとる照れとる。まあ、ちょっと調子に乗りすぎたかの。」
「えへ、反省です。」
・・・全然反省はしていないようだったが。
「まあ、とにかくな。アネラスに付き合ってもらうにせよ何にせよ、誕生日くらいは祝ってやれ。
 キリカもそれを伝えたかったんじゃろうし、嬢ちゃんも喜ぶじゃろ。」
ルグランがそう言うと、アネラスは少々驚いたようにこちらを見上げる。
「キリカさんからの情報だったんですか?そりゃあ行かないとダメですよ。・・・後が怖そうだし。」
確かに、不本意ながら最後の一言は、非常に説得力があった。
正直に、くだらないと突っぱねても、後々まで残りそうな予感がひしひしとする。
「・・・まあ、な・・・。・・・何か適当に持っていってやるか・・・。」
息をついてそう言うと、アネラスが嬉しそうな笑顔になった。
「プレゼントのネタに詰まったら相談してくださいね?あと、私からの分もこっちに預けておきますから、ツァイスに行く前に寄って下さい。」
絶対ですよ?と念を押し、酔っ払ったような笑顔で、何にしようかな、などと歌いだす。
「ったく・・・。」
呆れ半分でそれを眺めていると、ルグランから声が掛かった。
「で、これからどうするんじゃ?仕事は短期のをまわしてやるぞい。」
「それなら、それを片付けてからにする。・・・あとは、ラヴェンヌ村に寄るつもりだ。ツァイスに行くならその後だな。」
ルグランは聞きながらふむふむと書類の束を捲る。
「なら、とりあえず今日の所はこれとこれとこれじゃの。」
手際よく並べられた依頼をざっと確認すると、アガットも頷いた。
「了解だ。悪いな。」
「なぁに、こっちこそいつも扱き使っておるからの。」
さっさと手続きを終わらせると、ルグランは笑いながらアガットを見送った。
「嬢ちゃんによろしくな。」
「へいへい。」
後ろ手に軽く手を振って応える。中から聞こえてくるアネラスたちの騒ぎ声に送られるようにして、アガットは遊撃士協会を出ていったのだった。



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