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戦艦のつくりかた 1.

 人の姿というのは、良し悪しである。小回りは効くが休息の頻度は多くなるし、体が小さいため速度は元のままでも移動距離はいまいち伸びない。そんな「人」が数百人がかりで自分を動かしていたのだなあと思うと、今更ながら凄い事だと初春は思う。
 ただ、艦の時にはあまりなかった楽しみもあった。
 食事である。食事の作り方は知っていたものの、実際に食べるとこれが美味いのだ。昔乗組員たちが目を輝かせていた羊羹は、今の自分でも非常に美味に感じた。なるほど、皆が羊羹に目を輝かせるわけである。
 そのほかのお菓子や食事もたまらなかった。煮付けも魚も洋食も、全体的に乗組員達が戦前食べていたのより一ランク上に見える。制海権が奪われている割に、食事情は昔より格段に良くなっているらしかった。まあ、何を食べてもおいしいというのは幸せな事である。
 そしてもう一つ、覚えた事がある。
 それは、お酒がとてもおいしいということだった。
 
 艦娘と呼ばれるようになってから1週間ほどが経過していた。
 自分の艦娘としての出撃機会も増え、ここでの暮らしにも随分慣れた。もとより艦である。最新の設備や機器に興味が沸くのは当たり前だし、北極圏付近から赤道直下まで転戦していた身の上、順応するのも早かった。
 何より、毎日のように仲間が増える。自分のように拾われてきたり、資材を積んで建造で艦の魂を下ろしたりで、現在の人員は既に10名を越していた。比較的初期に来た方である以上、後から来た艦娘の面倒もある程度見なければならなかったのだ。
 自分がどうしてここに居るのかもすぐに知れた。出撃し、化け物……深海棲艦を倒した時、それが沈んだ場所に艦の魂が浮かんでいる事がある。それを拾ってきて工廠で少々の資材とロックをかけると目が覚めるらしい。自分がそうだったのだが、いざ他人で見ると何か不思議な感じだった。
 新たなる仲間は、最初は戸惑うものの、自分たちの姿やここが日本海軍基地である事を知ると、案外素直に順応していく。沈む直前の記憶や、沈んだ後の事を気にする者も居るが、それはまた別の話だ。
 
 
 執務室は提督さえ居れば基本的に出入り自由である。風通しのいい場所にあるため、執務室でのんびりするという選択肢は一応アリだった。上官とはいえ提督も気さくというか同期の同輩のような気安さなので、居ても大して気にならないのである。自分が知っている「提督」なる人物は雲の上だったのだが、時代が変われば変わるものらしい。
 そんなわけで本日執務室、初春は夕立とのんびりアイスを食べていた。部屋には後は秘書艦当番の叢雲と提督が仕事をしている。
 「なー叢雲、司令部から任務が来てるんだが。」
 グダグダ感あふれる中、一応仕事をしていた提督が叢雲に声をかけた。
 「それで?」
 手元の書類から目も上げず、叢雲がそっけなく切り返す。
 「……そろそろ戦艦配備しろって。」
 「戦艦ー?うちの状況判って言ってんの?まだ資源支給受けてんのよ?」
 アンタ馬鹿なの?と叢雲が顔を上げる。その冷たい視線に提督はうっと詰まったようだった。
 「だからさ。何のための資源支給だって事らしい。」
 「出撃のために決まってるでしょ。あたしは反対よ。今戦艦が来たってどうせ運用できないわ。」
 資源馬鹿食いするの目に見えてるじゃないの、と叢雲はあきれた様に手元の書類に目を戻す。とりつくしまもない反応に、提督ががくりと肩を落とした。ついで助けを求めるような顔がこちらを向く。
 ……が、自分の意見も叢雲と大差はなかった。
 「そもそも一足飛びではないのか?」
 アイスをなめながら一応顔だけ提督の方に向けると、夕立も隣でうんうん、と頷く。
 「うち、重巡洋艦も青葉さんしかいないっぽい。」
 「正規空母は蒼龍がおるが、資源の問題で現状なかなか出撃させられずにおろう。」
 溶け落ちそうなアイスを舌で受けて、そのままちゅっと啜る。艦娘として人の形を取って一番良かったのは食べ物の味がわかるということだ。
 「小型空母に至っては居ないしね。時期尚早よ、命令って言うけどまだ余裕あるんでしょ。」
 ほっときなさい。
 そっけない上に軍属と言うには随分な言葉が上官に飛んだ。
 「異議なしっぽい。」
 ぺろ、とアイスを食べ終わると、夕立もそういって立ち上がった。
 「間宮でおやつ貰って来るね。叢雲も要るっぽい?」
 「ああ、私も行くわ。アイス食べたいし。初春、留守お願い。」
 「相わかった、行って来るが良いぞ。」
 残りのアイスをかじりながら送り出す。あっという間に執務室は提督と二人きりになってしまった。
 「俺はいてもいいと思うんだがなあ。」
 提督はまだそんなことを言っている。
 「決定権はそなたにある。そなたが欲するなら今すぐ作っても構わぬ。
  ただ、作る前にわらわ達の同意を得たいというのなら、わらわ達を納得させる理由と記録を持ってきてからになるの。」
 「……そうなんだよなあ。少し計画考えるか。」
 下の意見など聞かず上から命令を押し付けるタイプの者の方が世の中には多いはずなのに、この提督ときたらほとほと上官らしさがない。美点か欠点か、などと思いながら、そうじゃの、と返事をする。
 「まあ、そうするがよい。兵站は何より大事じゃからの。」
 言いながら、また溶けかけたアイスをほおばった。それを眺めながら提督が頬杖をつく。
 「ところで初春。あいつら俺の分は持ってきてくれると思うか?」
 「何を?」
 「アイス。」
 「その発想はなかったの。」
 素直に返事をすると、提督はさらにがくりと肩を落とした。
 「頼んでも居らんのにもってくるなど、虫が良すぎるじゃろ。」
 「……まあ、そうなんだけどな……。」
 
 
 「……とかいう事があったんじゃがな。」
 「やれやれ、あいつも散々だなあ。」
 けらけら笑いながら木曾は杯を傾けた。
 夜の基地は、月に照らされてぼんやり明るい。寝る前の晩酌はここに来てから覚えた嗜みだった。同じく酒好きであることと、同じ北方部隊に居た事と最期に共に居た事もあって、木曾とはここの所共に呑む事が増えている。
 「戦艦は、いざという時に動ければ強いんだろうがな。」
 浪漫は認めるし、居てもいいとは思うんだが、と木曾は笑う。
 「ギリギリでやりくりして、時に開店休業に陥る我が家では時期尚早じゃろ。」
 「わからねえぞ?ここで一つ兵站に目覚めるかもしれねえ。」
 「なるほど、そういう見方もあるか。」
 言いながら杯をあおる。この染み渡る感覚は人型をとっていてこそなのだろう。
 「ちょっと初春、木曾も。なに二人だけで呑んでるのよ?」
 ふうっと息をついたところで、後ろから声が掛かった。
 「叢雲か。おぬしも飲むか?」
 「杯は自分で持って来いよ?」
 振り向いて口々に言うと、叢雲は全く、というように持って来た盆をどんと置いた。乗っているのは水?と茶色い液体の入った瓶、それと氷とグラスが二つ。
 「問題ないわ、自分で持ってきたし。」
 言いながら手際よくグラスに氷が放り込まれる。
 「どうしたんじゃそれ。ウィスキーか?」
 茶色い液体が氷をすべる様子と叢雲の顔を交互に眺めると、叢雲はそうよ、と言って座り込んだ。
 「提督からちょっとね。」
 「さすがに盗むのはどうかと思うぞ。」
 「盗むなんて人聞きの悪い。さすがの私もそこまでしないわよ。」
 言いながら、くい、とあおる。
 「提督がおつまみ持ってくるって。」
 「へえ、気が利くじゃないか。」
 「おう、俺は気が利くんでな。」
 木曾の言葉に提督の声が応じる。振り向くと、わっさりとイカさきを乗せた皿を片手に、提督が立っていた。完全に涼みモードで軍服の上着を脱いでいるのだが、それだけで、ただでさえ危機的状況にある威厳は完全に消し飛んでいる。
 「提督はウィスキー派なのか。」
 「日本酒も好きだが、我が家の財政状況を鑑みるに、ウィスキーの方が金が掛からんと判断した。焼酎でもありゃ良かったんだが……あー、別にお前たちを咎めている訳じゃないぞ、好きに飲んで良いからな。」
 言いながら提督もどん、と腰を下ろす。ちゃっちゃと自分で水割りを作っている姿は、またなんだか妙な物悲しさをかもし出していた。
 「全く変なとこ貧乏性なんだから。」
 「財政が資源がって毎度言うのはお前だろう。」
 言いながら提督もグラスをあおる。
 「まだ戦艦のこと根に持ってるの?」
 「お前らの意見ももっともだとは思うぞ。」
 ぷはあ、と息をつき、裂きイカに手をつけるが、まあ憮然としているのは隠しようもなかった。思わず木曾と顔を見合わせる。
 「昼からずっとこうなのか?」
 「別にそんなわけでもないが。ただこの件に関しては上からの命令だと言っているのに、本日の秘書艦殿とは全く意見が合わなくてな。」
 はあ、と息をつく提督を叢雲は半眼で見やる。
 「そんなに作りたければあんたの権限でさくっと作ればいいでしょう?私に許可求める必要がどこにあるわけ?」
 「意見を聞いた以上は、一応な。」
 「決定権はアンタにあるのよ。私はあくまで秘書艦、ただの補佐なんだから。」
 言いながら、叢雲はまたくいっとグラスを傾けた。
 「意見を聞かれたら、私は今は反対ってだけ。他の意見だってあるでしょ?」
 つーんとした叢雲に困ったようで、提督がこちらを振り返る。
 「……木曾、お前はどうだ?」
 「戦艦か?……まあ俺には縁遠かったが、縁遠いだけにアリだとは思うな。
  必要な時に、出し惜しみしないでちゃんと動かせるだけの資材があればの話だが。」
 後半部分でしっかり釘をさしつつも、木曾は否定はしないらしい。
 「資材なあ。それなんだがな。」
 グラスを軽く空にして、提督は頬に手を当てた。
 「人数もそこそこ増えてきたし、そろそろ錬度を見ながら本格的に遠征を始めようと思っている。
  他の基地の手伝いや輸送任務の手伝いなんかで遠方の資源を稼いでくるって話だ。」
 「ほお。一応計画は立てたんじゃな。」
 「作ろうが作るまいが、兵站は確保しなきゃならんからな。」
 蒼龍にも悪いし、と提督は息をつく。一度の出撃コストもさることながら、怪我でもすると一日分の資材が軽く吹き飛ぶためまっさきに待機状態になってしまう正規空母は、多分現在入渠ドックという名の保養施設で寝ているはずだった。
 「それで、今の3倍くらいは多分恒常的に確保出来るはずだ。これでひとまず蒼龍は動かせる。
  あの火力を眠らせておくのは勿体無いにもほどがあるからな。」
 「なるほど、一応考えはしたのね。で、蒼龍は良いとして、戦艦まで動かす算段はあるわけ?」
 「お前らが頑張ってくれたおかげで、そろそろ南西諸島の部隊も追い払える。
  そうしたら次は、その先の製油所地帯沿岸部の海上輸送ラインを防衛することになるだろう。そこである程度は稼げる、と思う。あちらの戦力がどれくらいあるかにもよるがな。」
 飲み会は気づけば作戦会議だ。
 「製油所地帯の敵戦力はどんなもんなんだ?」
 「まだ情報はあまり入ってきてない。だが、今までよりは大変だろうな。こちらにとっては補給の肝だ。あっちからすりゃ狙い撃ちするには丁度いい。」
 「なるほど、一応理由もあるか。」
 いいながら木曾はもう一杯、と杯に継ぎ足した。
 「取らぬ狸に限りなく近いの。」
 「まあ、先を考えている分だけマシとしましょう。」
 くい、と飲み干すと、叢雲も二杯目をつぎ足す。
 「そこまで言うなら止めないわよ。好きにしたら良いわ。」
 「マジか!?」
 がたん、と勢いよく提督が顔を上げた。
 「よし、じゃあさっそく工廠で手配してくる。初春、お前も来い。建造手伝え。」
 ばたばたと立ち上がると、提督はこちらに手を差し出した。
 「……は?……はあ……なぜわらわが……明日じゃいかんのか?」
 杯片手に仕方なく手を取ると、そのままくい、と引上げられる。
 「馬鹿、叢雲の気が変わる前になんとかすんだよ。」
 「聞こえてるわよ?」
 低い声にうぐ、となりながらも、やめる気はないらしい。引きずられるまま、仕方ない、と行く事にした。
 
 
 「こんな夜更けにですか?まあ良いですけど。」
 工廠は工廠で、それぞれに涼んでいたらしい。
 明石は趣味の製作物に精をだしていたし、工廠の妖精たちはまったり酒盛りモードだった。
 「手配くらいはしましょう。ええっと資材はどれくらいで?」
 「ありったけ……の三分の一の燃料と鋼材。弾薬も少し多目で、ボーキサイトはまあほどほどだな。」
 数値的にはこんなとこだ、と提督が示すと、明石は眉をひそめた。
 「随分多いですね?」
 「第一希望は戦艦だ。」
 「あ、作る事にしたんですね。まあそれなら妥当なところ、か……妖精たちにも話しと……提督?」
 提督はすでに明石の脇をすり抜けて、酒盛り中の妖精たちのほうにずかずかと歩いていってるところだった。無論自分は引きずられている。
 「おーうお前ら、良いもん飲んでんじゃねえか。」
 ……提督は見えてないはずなのに、視線の先はばっちり妖精で、何が起こっているのかと思わず目を瞬いた。
 「こっちは差し入れだ。まあ食え。」
 いつの間にか持ってきていた裂きイカが、妖精たちの酒宴にどんと足される。妖精たちがわあっと歓声を上げた。
 「我が家でも戦艦を作る事にした。ぜひともお前らに頑張って欲しい。頼めるな?」
 どういうことだと提督の顔を見て、ようやく気がついた。目が少しとろりとしている。実は結構酔っているのだろう、多分。なお自分はといえば、未だ半分酔いかけ状態なのだが。
 合点だ、今すぐにでもやるさあ!という非常に気風のいい妖精の返事に提督もありがてえ、と頷く。その後ろでは着々と資材が積まれつつあった。本気で今からやるつもりらしい。
 「あの、別に明日でも良いんじゃ……なんでそんなやる気なの、ちょっと?!」
 慌てる明石をよそに、結構な量の資材は指示通りに組まれ、杯片手の自分もその資材の前に押し出されるようにしていた。
 「初春、頼んだぞ。」
 「……お主は、ほんっとーに落ち着きがないの……。」
 酒のせいかハイテンションな妖精と提督に囲まれ、さあさあといわれてはどうしようもない。
 手に持ちっぱなしの杯の中身をぐいっと一気にあけ、右手に扇子を持ち替えた。
 酔いどれの集中など全く当てにならないが、細かい事はもう知らない。どうでもいいから降りて来いの心で、艦の魂を呼び降ろす。
 「なんとでも、なるがよいわ!」
 そして気合一閃、資材に魂が降りた。
 がちゃがちゃと魂の形に艦を整えるのはもう職人の領分で、自分の仕事はもう終わりだ。ただ、誰が呼び出せたのかは判らないが、結構な大物なのは間違いないようだった。
 今から超突貫で明日の朝だな、なんて妖精は言っているし、妖精を知覚できないはずの提督が、工期を楽にしたけりゃバーナーを使っていい、なんて話をしている。それを待ってましたとばかりに倉庫から高速建造材が引っ張り出され、あっという間に用意が整う。ふと明石の方を見ると、明石は唖然とした顔でその様子を眺めているし、入り口の方には杯片手の木曾や叢雲、ついでに夕立や青葉など聞きつけたほかの者たちも見物に来ていた。
 「夜なのに、お祭りっぽい。」
 「いやー、ついに我が家にも戦艦が配備されるんですねえ。あ、明石さんどうぞ一言!」
 「全く、我が家は何でもいきなりなんだからなあ、たまんねえぜ。」
 「本当……うふふ、仕方ない提督ねえ。」
 わいわいがやがや。人数も増え、お酒とグラスも間を回ってほぼ宴会だ。そうこうしている間に、退避命令が出て、高速建造材が全力稼動しだした。酔っ払いの妖精の操作はなんともあぶなっかしかったが、それでもなんとか炎の中で魂の形はできている、らしい。
 「……え、これって。」
 最初に気づいたのは明石だった。
 「……新入りには間違いないよな?」
 出来上がった形を覗いて、提督が首をかしげる。その脇からその艦娘を見て、あ、となった。
 「……戦艦……」
 明石の反応も当然だ。そこに居たのは誰もが知ってる顔だった。
 「……長門か?」
 「へ、長門だって!?」
 提督が目を見開く。同時に野次馬もこちらに詰め掛けた。
 「マジかよおい!?」
 「連合艦隊旗艦かあ、こりゃあ大物だなあ。」
 「あら本当、随分久しぶりに顔を見るわね。」
 ほら、早くロックしてよ、とせかされて、明石が慌てて魂と形を繋ぐ。
 「目を覚ましますね……これは第一声をぜひ取材しなくては!」
 皆の目が見守る中、我が家艦隊初の戦艦殿はうすらと目を開けた。
 「ここ、は……?」
 「ようこそ我が家へ、歓迎するぞ長門……!」
 提督が口を開く。その周りでは、なにかもう酒のテンションで万歳三唱が起こりつつあった。
 「……私は……夢を見ているのか……」
 寝ぼけ眼がまたゆっくり閉じられる。
 「……これは、大丈夫なのか?」
 明石に聞くと、大丈夫じゃないかなあという困ったような返事が返ってきた。
 「……まあ、多分。起きたら二倍びっくりすると思うけど。」
 聞いていた提督は、ふむ、と頷く。
 「なら起こさずに置くか。布団くらいは掛けとこう。よく考えたら部屋の手配もまだだったしな。」
 「本当に行き当たりばったりだったんですね……。」
 呆れた声は、野次馬含めまあほぼ全員の気持ちを代弁していた。
 
 
 翌朝は、まあ予想通り騒動になった。
 誰よりも先に本格的に眼を覚ました戦艦は、大混乱したらしい。器物破損こそなかったものの、被害は怪我人が約一名。
 「戦艦長門、本日付で着任する。よろしく頼む。」
 ようやく落ち着いたのは起床時刻一時間前だった。騒ぎで起き出して来たのは自分たちなのだが、これは完全に不可抗力だ。
 「いやー、今日の一面はばっちりですね!末代までネタになりますよ、これは!」
 キラキラしている青葉の奥で、怪我人一名……提督が、やれやれ、と息をつく。
 「というわけで、なんとか我が家にも戦艦が着任してくれた。今後は一層兵站の充実と補給線の確保に励むように。皆、頼んだぞ。」
 そう言って〆る。
 が、長門は未だに提督に関しては疑問があるようだった。
 「……本当に提督なのか?」
 随分根本的である。
 「本当に提督だ。ここに来てまだ二週間足らずだがな。」
 「……状況が切迫しているのは理解した。」
 つい、と目線をそらすその表情からは、いぶかしさがまだ消えていない。
 「本当に大丈夫なのか……?いや、大丈夫な戦などないか……」
 ぶつぶつとつぶやく気持ちは、わからないでもない……というかよく解る。
 「先行きはどうなるのかの。」
 隣の叢雲につぶやくと、叢雲はさあね、と肩をすくめた。
 「提督の心がけ次第でしょ。」
 少し楽になるといいけれど、と新入りと提督の方を見やる。同じように目をやるが、二人はまだよく判らない漫才の最中だ。
 「まあ、どうとでもなる、か。」
 そんな言葉は、朝の風にのんびりととけて行った。


多分ですがプレイ状況そのまま日記……話にしてたのかもしれない。
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