Free Game TOP

スベスベマンジュウガニとお人形のワルツ

 ドーラは研究熱心だ。
 それも並大抵ではない。気になった事はとことん調べるし、一度集中してしまうと他の事は食事や睡眠すら二の次になる。環境と体力が許せばいくらだって引きこもって研究していられる人種だ。
 そんなドーラの現在の関心事は、メシュレイア作成の記録をまとめる事である。帽子世界から持ち出し損ねた上に、外部のログではいまいち解らなかった記録。記憶が消えないうちになんとかまとめたくて、ここの所は自室か高性能な機器の揃ったダリアの部屋にひきこもりがちな日々を送っている。
 しかし、帽子世界での話は、事実とはいえ倫理的にアウトな部分も多く、あまり語る事はない。そのため、今のドーラがやっている事は、機器を貸しているダリアと心配して聞きに来たメシュレイアだけが知っている状態だった。

 とはいうものの。
 いくら集中で周りが見えなくなろうが、ドーラも人間である。人間である以上、どうしても休息を挟まないわけにはいかず、数時間に一度くらいはキッチンに水を飲みに行ったりする。
 休日の昼下がり。
 ドーラは数時間ぶりに喉に水を通していた。想像以上に乾いていた喉に少し水がしみて、意識が研究内容から少しそれる。
 そのとき、ふと、隣のダイニングからメシュレイアの声が聞こえてきた。
「やっぱりこっちがかわいいですね。」
「ドーラはもういいの?」
 全部同じ声だ。メシュレイアとセーラだろう。最近は結構な頻度でコロコロ入れ替わって、家では普通に会話を成立させていたりするが、その様子にも随分慣れた。ただ、会話の中身に自分の名前が聞こえたとあれば、ついつい聞き耳を立ててしまう。
 メシュレイアの口調は、うーん、と少し悩んでいるようだった。
「ドーラ様もいいんですけど……やっぱりこのスベスベマンジュウガニちゃんの方が好きなんですよね。」
 メシュレイアは何の話をしているのだろうか。
「絶対にこっちがいいと思います。」
 よくわからないが自分とスベスベマンジュウガニを天秤にかけているような気がする。そしてどうもそのカニに負けているような気配もする。なぜだかわからないが。ただ、メシュレイアのその発言はとても意外で……意外過ぎてなんだかショックを感じてしまう。
 しかし、引き継いだセーラの口調は、あっさりとそれを認めた。
「そう。それならそれで行きましょう。」
 セーラ姉さん、少しはフォローしてほしい、そんな事を思いながらダイニングの方を見やるが、こちらからは物陰になってよく見えない。しかし衝撃をうけている間にも、平和そうに会話は続いていく。
「それにしても、なんでスベスベマンジュウガニなの?」
「だってかわいいんです……それになんか前向きな気持ちになれるし。えへへ……」
 メシュレイアは照れたような声で小さく笑う。どう聞いても恋している声で、それがまた衝撃だった。確かに前からカニが好きだという話は聞いた気がするし、スベスベマンジュウガニの名前も聞いたが、ここまでとは思っていなかったのだ。メシュレイアのあんな声は自分だって聞いたことがなかった。しかも、自分と天秤にかけての発言と言うのがなにかどうしようもなくショックだ。
 あのカニ食べたら死んじゃうのに、などと頭は勝手に論点のずれた反論を脳内で繰り広げるが、それを止める気力もない。ドーラは茫然としたままふらふらと部屋に戻った。部屋、といっても自室ではなくて、先程まで機器を借りて作業していたダリアの部屋である。
「おかえり、精が出るな。」
 部屋に入ると、ベッドの方から声がした。ぼんやりとそちらを見やると、部屋の主はベッドに腰掛けて端末を弄っていたらしい。しかし、精神的に疲れ切った頭はまずそのベッドを倒れこむ場所と認識した。
 ぱたりとベッドに倒れこみ、都合よく転がっていた枕を抱えてうつ伏せになる。視界がなくなると、ショックだったことも少し薄らぐような気がした。
「珍しいな。何があったんだ?」
 頭の上から声が降ってくる。
「別に」
 必要最低限だけ声を出すと、少し間があってまた声が降ってきた。
「もしかしてフィユティーヌくんかね?」
「違う」
 切り捨てて、枕をぎゅうっと抱きしめる。
「ハグは入用かね?」
「要らない」
 今はそんな気分ではない。つっけんどんに答えてさらに枕に顔をうずめる。視界の失われた世界。もう何も考えたくない。そう思っても、頭は勝手にメシュレイアの甘い声でカニののろけを聞かせてくる。それを遮断するように耳もとまで枕を引っ張ると、ふと、頭を撫でられる感触がした。
「何?」
「人恋しかったんだろう?」
 断じて違う。と思う。だが、一人になりたいのならそのまま自室に戻ればよかったのだ。すぐにそれに思い当たってしまうと全否定はできなかった。憮然として枕から少し頭を浮かせて、またぽすりと頭を落とす。
「黙ってたら何もできないぞ。話してみたらどうだね。」
 ぽんぽんと頭を撫でる感触は続いている。あやすような口ぶりは、別に馬鹿にしてるわけではなく素だろう。
 全く気分ではないが、ちらりと目線をダリアに向けるとぱちりと目が合ってしまった。瞬間的に目をそらす。
 そしてしばし沈黙が落ちた。相変わらず頭の上はのんびりと撫でられっぱなしだ。それで少し気が緩んだのかもしれない。
「メシュがさ。ボクよりカニのほうがいいって。」
 ぼそぼそとつぶやくと、ぴたりと頭の上の手が止まった。
「……は……?」
「ボクより スベスベマンジュウガニの方がいいって。」
 常になく理解の遅いダリアにもう一度言うと、ついでにやり場のない怒りだか悲しみだか残念さだかよくわからないものも溢れてきた。
「そりゃね、確かに前からあのヘンなカニを気に入ってるのは知ってたよ。だけどまさボクよりカニの方がいいって言いだすなんて思わないじゃない。あんまりじゃない? ボク、メシュのなかでカニに負けてるの?」
 一度溢れた思いは一気に零れ落ちる。一息で吐き出すと、何となく怒りがわいてきたような気もする。だが、その思いもどうしようもなく、ドーラはばふっと枕に顔をうずめた。
「なんだよアレ食べられない奴なのに!」
 枕に向かって思い切り文句を言うと、ダリアがぐっと変な音を出した。
「なんだよ」
 ちらりと目だけでダリアの方を見ると、ダリアは少し緊張したような面持ちでゆっくりと息を吐いた。
「いや、感心したところさ。
 メシュレイアくんは一応キミが作っているのに、刷り込みで盲目にキミに懐いているわけじゃないんだな。一個の個人として、親の刷り込みからも脱して意志を持ってるということだろう?」
 声がなぜかたまに揺らいでるが、言っていることはもっともだ。
「まあそうなるかな。」
 顔を枕にうずめたまま、少しだけ誇らしい気持ちになる。
「素直に凄いと思うぞ。作品が作り手を離れて独り立ちするなん……て、是非ともデータを……見せてほ……」
 しかし、ダリアの声は途切れがちになったかと思うと、ぶはははは、と、いかにも耐えきれなかったという風な爆笑に変わった。枕から顔を上げるとダリアは案の定お腹を抱えて大笑いしていて、思わず枕でぶん殴ってしまう。
「だから言いたくなかったんだ!」
 バフシッと勢いのある音をさせて、ダリアは横にひっくり返った。だがそのまままだ笑い転げている。
「いやあ済まない済まない。だがね、まさかカニに妬いてるなんて思わないじゃないか。」
「別に妬いてない!」
 もう一度枕で殴りつけようとするが、今度はバシッと腕でガードされてしまった。
「言っただろう、自分の制作物だと思っていればそんな事で不機嫌にはならないさ。まあちょっと寂しいかもしれないがそれだけだ。むしろ誇らしいんじゃないかね?」
 研究してる時の理知的な顔でそう言うが、数秒前まで爆笑していた名残はしっかり残っていた。
「ならやっぱり妬いてるんじゃないかね、カニに。」
 琥珀色の目が思い切り笑っている。その顔にもう一度枕を投げつけた。
「カニに妬いてどうするんだよ。」
 言うと、ダリアは顔にぶつかった枕を抱えながら起き上がった。
「じゃあどうしたいんだね?メシュレイアくんにはずっとキミが一番でいてほしかったんじゃないのか?」
 その言い方だとまるで浮気されて怒ってるように聞こえて腹立たしい。別に一番でなくても良い……いや。全否定はできないがそんなわけではないのだ。
「別にそんなんじゃないし。もうメシュにはメシュの人生があるし。何を好きでもいいと思うけど」
「カニに負けるのは悔しいのか。」
 後を引き取られて、ぐ、と詰まる。だが、別に自分でなくても、誰であっても、カニに自分が負けるなんて悔しいはずだ。
「悔しいでしょ。」
 ぶうっとふくれてそっぽを向く。
「だがキミだって、現に研究とメシュレイアくん天秤にかけたらどっちを選ぶかわからないだろう。
 他人の事は言えないし、何に価値を置くのかは個人の自由だと思うぞ。」
 言い方は理路整然としているが、伏せた目線の隙をつくように、また頭の上にぽんぽんと撫でられる感触がする。
「何」
 目線を上げてダリアを見ると、ダリアはとても優しい顔で言った。
「カニに負けてカニに嫉妬してカニのせいで傷心のキミを。ハグなしでなぐさめる方法が思いつかなかっただけさ……」
 違う、これは面白がっている顔だ。
「カニを連呼しないでくれる?」
 撫でる手をぐい、と握って降ろさせると、ダリアはおや、と目を見開いた。
「おっと、カニはNGワードだったか。すまないね、今日はカニ料理にでもするかね?」
「次言ったらシメるよ。」
「なるほどカニだけに……ぎゃああ!?」
 そのまま腕をひねり上げると、ダリアが悲鳴をあげた。
「まだ言う?」
「待って、待ってくれ私の腕がもげてしま」
「ダリア、コントローラー壊れちゃったんだけど、これ直せる?」
 唐突にドアが開いて声がした。ダリアの腕をもぎかけたままそちらを見ると、入り口にショコラが立っている。
「ていうかドーラお姉ちゃん、何やってんの?」
「あれ、ショコラ?」
 呆れた面持ちでこちらを見やるその手にはゲーム機のコントローラがある。それに気を取られている隙に、捕まえた腕は素早く手の内から逃げて行った。
「やあショコラくん。ドーラくんは現在カニに負けて傷心なのだよ。」
「ダリア!」
 おしゃべり過ぎる口をふさげないかと思うも、ダリアは身軽に距離を取ってショコラの方に向かう。
「メシュレイアくんがドーラくんよりカニの方が好きらしいという話でね」
 コントローラーを預かろうと手を出すダリアに、ああ、そうだったの、とショコラは驚きもせずにコントローラを渡す。
「メシュレイア、めっちゃカニ好きだもんね。スベスベマンジュウガニ。」
「そんなに?」
 ショコラが全く驚いていないのが逆に驚きで、思わず声が引きつる。しかしショコラはあっさり頷いた。
「うん。スタンプからバッグからどこかにカニがいるし……ていうかお姉ちゃん、なんで知らないの?」
「いや、確かに丸っこいカニのグッズちょっとずつ増えてる気はしてたんだけど、個人の趣味の事だし……」
 そもそもそれほどまでとは思っていなかったのが正直なところだ。しかしショコラの意見は違うらしく、少し眉が吊り上がる。
「お姉ちゃん、なんでそんな他人に興味ないの? もうちょっとちゃんと見て話聞きなよ。」
「話聞けっていわれても忙しかったしバタバタしてたし」
 カニの事を話す機会はなかった、と思う。しかし、そこもショコラは意見が違うらしい。
「そんな言い訳じゃなくて、ちゃんと相手してたらとっくの昔に解ってることでしょ。帽子世界にいた時からじゃん。ショコラはてっきりお姉ちゃんの趣味なのかと思ってたよ。」
「ボクはそんな趣味じゃないよ!? だからメシュがカニ好きな理由は謎でさ。」
 言うと、ショコラは深々とため息をついた。
「そういうとこだよ……話聞いてやりなよ。ドーラお姉ちゃんほんっと自分以外に興味ないよね?
 ショコラ半分諦めてるけどさあ。お姉ちゃんまだ懲りてないの?」
 かなり責められている。それは解る。だが、そこまで責められるような事だろうか。半ば困惑していると、ダリアまで困ったような顔で息をついた。
「ドーラくん、確かにそれは鈍感にも程があるんじゃないかね。前もそれでショコラくんと喧嘩になったんだろう?」
 別に調子よく合わせているわけではないらしい。ダリアにまで言われると反省すべきだったのだろうか、という気持ちになる。黙り込んでいると、ショコラがもう一度深く深くため息をついた。
「あのね、お姉ちゃん。
 話も聞かない傍にもいない、構いもしない。そんなんじゃカニに負けて当たり前だよ。
 何の努力もしないでずっとメシュレイアの一番でいられるって思いこんでるのがそもそも間違いの始まりじゃないの?」
 一言一言ねじ込むようなショコラの言葉。ダリアは感心したようにほう、と頷いているが、ドーラには一つ一つすべてが正論に聞こえてぐうの音も出ない。言葉も探せなくて押し黙っていると、沈黙を破るようにノックの音がした。
「ダリア、いる?」
 丁度考えていた声にぴんとウサギのように耳が反応する。メシュレイアの声。……いや、この話し方はセーラだ。
「セーラお姉ちゃん?」
 ショコラが扉に向かって声を掛ける。
「どうぞ、入りたまえ。」
 ダリアが言うと、扉が開いた。
「ショコラとドーラもいたのね。」
 言いながらセーラが部屋に入ってくる。
「お茶のお誘いかね?」
 セーラはそっけなく首を振った。
「いえ、ダリアは3D扱えたわよね? ちょっとお願いがあって」
「ふむ、聞こう。」
 3Dという言葉が出た途端、ダリアは素の表情に戻る。
「メシュレイアと新しくお人形を作るのに、3Dで型紙取る方法試してみようかしらと思ったのよ。」
 小さな手ぶりで説明するセーラに、ダリアはそういえば聞いたことがあるな、と頷いている。
「デザインはこっちであらかた作るから、3Dに起こして貰えない?」
「キミのためならそれくらいお安い御用だよ。」
 そんな台詞を吐いてにっこり微笑むあたりが本当にダリアらしい。助かるわ、とニコニコ笑っているセーラを眺めながら、別にそれくらいならボクでもできるのに、などと思う。すると、その不貞腐れに気づいたかダリアがちらりとこっちを見た。
「だが、そういうデザイン系統は私よりドーラくんの方が得意なはずだよ。」
「そうなんだ?」
 ショコラの言葉に、そうなんだよ、とダリアは肩をすくめて頷く。だが、しれっといった後に、ちらっとこちらを見やる瞳は悪戯っぽく輝いていて、おせっかいの気配しかしなかった。しかし、セーラはそれに気づくことなく、ぱあっと目を見開く。
「あら、そうなの? 流石ドーラね。じゃあドーラにお願いしようかしら。」
 セーラまで嬉しそうだ。いいかしら? と聞かれて、一瞬止まって、結局頷く。
「別にいいけど。」
 そこで、しゅんと音を立てるようにしてメシュレイアとセーラが入れ替わった。
「じゃあ次の作品はドーラ様と合作なんですね! わくわくします…!」
 きらきらと瞳が輝き、頬の紅潮したメシュレイアは、胸に手を当てて小躍りしそうな表情でぱあっと笑み零れる。
 その様子が余りに嬉しそうで、ドーラは反射的に胸を叩いた。
「任せといてよ。」
 その一瞬、確かにさっきカニと天秤掛けられてたことは忘れていた。
 とはいえ、ここで構って点数を稼がねば、というのは頭のどこかにあったのだが。


 翌日、メシュレイアは朝一番でラフスケッチを持って部屋にきた。
 セーラに習ったのだろう、大体の寸法や大まかな素材まで図示されていて、ドーラが見てもおおよその完成図が見える出来だ。
 しかし、デザインを見たドーラは、なんとかにっこり笑ってみせたまま、たっぷり一秒は凍り付いた。
 スケッチの内容は、スベスベマンジュウガニだった。
 半ば予想していたものの、いざ見るとショックが大きい。脇の方に「いつも一緒にいられるサイズ」などと走り書きしてあるのがまた何とも言えない。しかし、メシュレイアはそれには気付かず、キラキラした笑顔で一つ一つ指さしながら説明を入れていく。
「だっこして一緒に寝れるくらいの大きさに作りたくって!」
 その笑顔がまぶしくて、本当にボクよりカニの方が好きなの? という言葉は喉の奥でつっかえた。
 隣に座ってもらって、簡単に作っていきながら、細かい希望を少しずつ聞いていく。
「あのね、難しそうとか言わずにまずはこだわってみて、それから削っていく方がいいよ。
 フォルム作るのは大丈夫だから、縫製も何なら手伝うから。」
 言うと、メシュレイアはますます嬉しそうな顔で頷いた。
「好きなところを詰め込んで作ろう。そっちが楽しいよ。
 ……カニのどの辺が好きなの?」
 喉に引っかかりかけた疑問を口にすると、メシュレイアは待ってましたとばかりに早口でしゃべりだした。
「あのですね、まずこの辺のフォルムとかとっても可愛いでしょう? それに小さくてはかなく見えるのにたくましく生きててそこがまた健気で可愛くて、あと曲があって すごく頑張り屋さんの曲で」
 話に一つ一つ耳を傾けて、頷きながらディティールに加えていく。
 作成に関わる話はいつ終わるともなく続いた。一緒にいる時間もたくさんとれた。
 ……でも話の内容はカニばかりだった。
 ディティールを詰めながら、メシュレイアのカニ愛は理解した、と思う。カニ愛は理解したと思うのだが、カニの話を楽しそうに続けるメシュレイアを見ていると、前よりいっそう何だか複雑な気持ちになるのだった。

 二日後。
 ドーラは、データの入ったメモリスティック片手にダリアの部屋に来ていた。
 一度ファイル形式を変えてデータを少し軽くしようかと思っているが、それには少し高性能なパソコンがあった方が楽で……などと適当に理由をつけて、メシュレイアとも今日は別行動だ。なお本筋の研究……というかレポートは三日前からストップ中である。

「あのカニ愛は本物だ。」
「なるほど一緒に寝たいと。」
 ダリアがベッドで笑い転げている横で、ドーラは枕に突っ伏していた。
「ボクのぬいぐるみは……カニに居場所を取られてしまうのか……」
 先日、一緒に眠るんです! と見せてくれた自分を象ったぬいぐるみは、早々に場所をカニに取られる予定らしいと、ここ二日で理解した。それは個人の勝手だと理性は言うが、心と言うものは理性通りに動くわけではなくやはり複雑だ。
「それで、わざわざ私の所に凹みにきたのかね。」
 息を切らせてなお肩を震わせながらダリアが言う。それをちらっと見やって、またクッションに顔をうずめた。
「そんなんじゃない。ファイルの変換したかっただけ。」
 パワーのあるダリアのパソコンには、持ち出したメモリが突き刺さっている。
「ついでに話を聞いてほしかったんだろう?」
「……待ち時間暇だし。」
 ぶす、と言うが、待ち時間なんて5分もないのは双方ともに理解していた。高性能なパソコンは当然のように処理能力が早く、実際の所、変換作業はダリアが笑い転げる前から終わっている。
 ディスプレイにはすでに変換終了のダイアログと、開きっぱなしのカニの全体図が表示されていた。
「カニのディティール随分いい感じにできてるじゃないか。」
 そちらに目をやりながらダリアが言う。
「メシュとボクのこだわりをたっぷり詰め込んだからね。メシュがこれを抱き枕にしたいっていうなら、ボクは最高の抱き枕をデザインするまでだ。」
 クッションに顔をうずめたまま、当然でしょ、と言うと、ダリアはくくっと笑う。
「そういうとこ妥協しないのはドーラ君のいいところだと思うよ。」
「ボクはモノづくりには妥協したくないからね。目的があるならそれに最適化します。今回の目的は可愛いカニのフォルムと抱き心地の両立できた抱き枕を作る事なの。」
「それと、ドーラくんとメシュレイアくんが愛の共同作業を行う事、か。」
 にやにやしているのは見えなくてもわかる。顔をうずめていたクッションをダリアめがけて投げると、ぼふ、と間抜けな音がした。
「そのいかがわしい言い方やめて。」
 投げつけた先では、いつからそんなに手が早くなったんだ、とかなんとかぼやく声が聞こえるが、そうさせているのは誰だと思っているのだろうか。
 構わずベッドにだらりと伸びると、上からクッションが飛んできた。抱え込んでまた顔をうずめると、ダリアがよいせ、と寄ってくる。
「なあドーラくん。」
 無言でいると、ダリアはゆっくりと言葉を継いだ。
「メシュレイアくんは一体なんの目的で作ったんだね?」
 唐突な質問に、思わず目を瞬いた。気配を探るが、ダリアは至って普通で、別にからかおうという感じはしない。
「キミと一緒だよ。あの世界を救う手立てが欲しかった。」
 別に隠していたことでも何でもない事実だ。一つ息をついて言うと、ダリアは、なるほど、と頷いたようだった。
「だが、それは表向きの理由だろう。」
「どういうこと?」
 顔を向けると、ダリアは少し困ったように笑う。
「そうだね。……私は完全な機械を作りたかった。機械ってのは人を助けるものだ。だから、人と世界を完全な形で永久にサポートできる完璧な機械を実現できないか、なんて夢見たのさ。」
 少し困ったような顔は、やがて自嘲に変わり、そして追憶を探るように変化していく。その横顔に想いの強さが見えて、それと共に予定された結末を思い出してすうっと背筋が寒くなった。ダリアは夢のためなら自分の命だって放り出せる人種なのだと思いだす。
「そうならなくてよかったと心から思うよ。」
 言うと、ダリアの表情がふっと現実に戻る。
「現実も失敗したしな。おまけに利用されてしまった。実に悔しいことだ。」
 ダリアはそう言うが、アレが無ければ今の自分たちはなかった。結果的に自分たちを救った技術だが、口ぶりからすると、あれでもダリアとしては妥協の産物なのだろうか。
「……さて、ドーラくんはどうなんだい?」
 ふいに話と目線がこちらを向いた。私は手の内を明かしたぞ、という瞳がなんとも意地が悪い。
「別に……作りたいから作っただけ。人形作りは趣味だったし、趣味と実益かねて完全な人形の延長で人間を作りたいってのはあったかも。姉さんが先に完全な人形は作ってたけどね。」
 記憶をたどり、素直に答えるが、ダリアは、本当かね、と息をついた。
「私は別だと思ってたよ。セーラくんが消えてから取りつかれたように研究しだしたから、てっきりセーラくんを生き返らせたかったのかと思っていた。」
「死んだ人は生き返らない。」
 切り捨てるが、心のどこかがチリリと引きつる。ダリアは、そうだね、と緩く頷いた。
「だからセーラくんを作りたかったのかな、と思ったんだ。
 あのゴーイングマイウェイなセーラくんを、復元したかったのかとね。」
 心がさらに引きつれて、思わず声がきつくなった。
「失礼過ぎない?」
「そうだな。」
 ダリアはやはり緩やかに肯定する。だが、その様子は本当の所どうなのかと言っているようだった。
 そして自分も、……全身全霊をもって否定、とは言い難い。心がどこか引きつれるのは、心当たりがあるからだ。
 しばしの沈黙。そして、ドーラはひとつ息をついた。
「……なくはなかったかもしれない」
「うん?」
「姉さん居なくなって、寂しかったのは……そうなんだ。
 他の人にも言われた。メシュレイアは、姉さんの面影が残ってるって。」
 一言一言つないでいくと、ダリアは、そうか、と頷いた。
「面影があるのはそうだろう。メシュレイアくんには実際セーラくんが入ってるようなものだったからね。」
「それは偶然だよ。」
 そもそも、メシュレイアの中身が消えたはずの姉だなんて全く思っていなかった。あの件は自分の中でも青天の霹靂だったのだ。
「そう、偶然だ。
 だがね、帽子戦争で空いた脳は三つ。一つはセレナくんの帽子、一つはタリンダくんの帽子、残る一つはメシュレイアくんになった。三分の一とはいえセーラくんを引き当てたのは偶然なのかね。親和性があったから引き寄せた面はありそうな気がするが。」
 自分が、セーラを蘇らせたいと願って作ったから、セーラがメシュレイアになった、とでも言いたいのだろうか。それは、あの世界ならありそうで、……それでも自分の論理では断言できる事項ではなかった。
 だめだ、と正直に首を横に振る。
「……正直解らない。すべては偶然で、今となっては必然で、もう過去の別世界の事だから。」
 素直に言うと、そうか、と声が返ってきた。
「キミは、人形作りが趣味だ。それは私も知ってる。
 だが、人形は作るのが好きなのであって、成果物には基本的に執着がなかった。違うかね?」
 大方合っているし、だいたい違わない。
「何が言いたいの。」
 問うと、ダリアはとんでもないことを言い出した。
「メシュレイアくんに執着してるのはなんでかな、と思った。キミ、メシュレイアくんに姉を求めてやしないかね?」
「失礼なこと言わないで!!」
 思わずはね起きて声を荒げる。
「メシュはメシュだよ。姉さんじゃない。それに人形じゃない、人だ。」
「キミから見れば今はどうあれ作ったものだろう?」
 カチンときて言い返す。
「もの扱いしないで。メシュはメシュだ。もう自立した一人の人間だ。」
「そう、自立してるな。だから君よりカニが好きって事もある。」
 不意にするっと混ぜっかえされて、思わず言葉を失った。
「だが、キミはそれが悔しいという。」
 ふふ、とダリアは余裕たっぷりの表情で笑う。
「他人への興味が薄くて、作ったものにも執着を見せなかったキミが、メシュレイアくんのことなら執着を見せる。メシュレイアくんのことになると必死になる。」
「ボク、そんなに薄情な訳じゃないよ。」
 自分の世界のデコイだって、それなりに大事にしてきたし、他の皆の事だってそれなりに大切に思ってきた、つもりだ。
 だが、ダリアは見透かすような表情で肩を竦めた。
「そうかね? ハタから見てる分には、今のキミは以前のキミと比べて大進歩だと思うがね。
 私は嬉しいよ。人間変わるもんだ。」
 その言い方はどうやら心底からのものらしく、喉元まで出ていた言葉が引っ込んでしまう。自分は、前の自分はそこまで薄情だったのだろうか。全く自覚はなかった。
 ……でも、振り返らなくてもショコラとの件もある。否定しにくいのもまた事実だ。
「自立してる人の一番になりたければ、前にショコラくんが言ってた通り努力するしかないね。
 努力するには執着が必要。そしてそれは足りているようだ。ならあとは努力するのみ。」
 ダリアは立ち上がってすらすらと続けると、ふいにこちらを見た。
「色々話せばわかる事もあっただろう? 彼女がカニが好きな理由とか。」
 言外に、知らなかったのは多分キミだけだ、と読み取れてしまったのが胸に痛いし何だか悔しい。
「……確かに、それは解った。どんなところが好きなのかもみっちり教えてもらった。だから今はそれなりに納得してる。」
 そして少し情けなくもあった。一息に言って息をつくと、ダリアは目を見開いてふふっと笑う。
「それでいい。さっさとメシュレイア君の所に戻りたまえ。」
 とうの昔に変換の終わったデータ入りのメモリを手早く引っこ抜くと、ほいっとこちらに放り投げる。それをキャッチすると、ダリアは首根っこを掴むようにしてぽいっとドーラを部屋から追い出した。
「キミにはまだまだ会話が……いや、メシュレイアくんに寄り添う気持ちが必要だよ。
 彼女の態度は普段のキミの言動の写し鏡だからね。」
 全くあんなに健気なのに何で気付かないんだ? と余計でキツい言葉も挟まって、むぐ、と言葉が止まる。
「ああ、あともうひとつ。
 一人のレディに必要なのは、理解や納得よりも共感だ。」
 頑張りたまえ、と、ぱちーんとウインクが見えてドアが勝手に閉まった。
 メシュレイアくんと話を付けるまで開けないぞ、と言っているような扉を見やりつつ、そうやってたぶらかしてきたんだろうな、ダリアってばモテてたもんな、などとなんとなく思う。
 そして、一度目を閉じてからメシュレイアの部屋の方を見た。メシュレイアは今は在室のはずだ。材料どうしよう、なんて言っていたはずだから、一緒に選んでもいいかもしれないな、と自然に思った。
 これは努力だろうか。カニに勝つための。そう思うとなんだか情けない。
 だが、それでも少しは頑張ろう、と思った。やっぱりカニには負けたくなかったし、何より少し話していたら、自然とメシュレイアに向き合いたくなったのだった。

「メシュ、いいかい?」
 部屋のドアをノックすると、ドアは元気に自分を迎え入れた。
「あ、はい! ドーラ様、あの、もういいんですか?」
 五分も掛からない用事をいかにも時間が掛かるような顔をした事を思いだして、ちくりと胸が痛む。
「うん。材料選んだりしてるのかなと思って。」
 少しの後悔は胸に沈め、見に来たんだけど、と言うと、メシュレイアはまた嬉しそうな顔をした。なんだかとても悪いことをしてしまったようで、さらにちくちくと胸が痛む。
「そうなんです。セーラさんはしっかりしたのがいいって言うけど、私はふわふわのもいいなって。ドーラ様はどう思います?」
 張り切るメシュレイアの手には布地サンプルがある。覗き込むとさまざまな布地が並んでいるが、メシュレイアはどうやら毛足の長いボア素材が気になっているようだった。
「ふわふわのはちょっと扱い難しいし、細かいディティールが沈みやすいんだけど……メシュレイアはなんでふわふわのがいいの?」
「だっこするならふわふわがいいかなーって」
「なるほど。それはわかる。」
 そんな素朴なお願いならいくらだって叶えてあげたい、と素で思った。部屋の中でああでもないこうでもないと検討しているのは、自分の作品でなくても楽しい。
「ポイントで使うか、毛足短いの使うならアリかも。こっちは毛足長くしてこっちは短くして、メリハリつけるとか。」
 図案とサンプルを並べてこうやって、と説明すると、メシュレイアは、すごいです、と言いながらふとこちらを見上げた。
「……なんか、ドーラ様生き生きしてますね。」
「そう?」
 聞き返すと、メシュレイアははい、と微笑む。
「嬉しいです。なんだか手間を取らせてしまっているかと思っていたので。」
「手間だなんてそんな。」
 驚いて否定する。だが、……これも普段の態度の写し鏡なんだろうか、と思うと少し反省した。
「ボク、こういうのは好きなんだ」
「そうですよね。
 ……私もこういうの好きだなって思えるようになりました。ドーラ様と一緒だからでしょうか。」
 ふふ、と笑う表情はとても幸せそうだ。これもなのだろうか。それならそれはとてもうれしい。
 ダリアが言っていた、執着とか努力とかはよくわからない。でも一つ間違いないのは、自分はメシュが大事なんだという事だ。
「嬉しいな。ボクもメシュとものづくりの話ができるの、とても楽しい。」
 そう言うと、メシュレイアはぱああっと目を見開いて、泣きそうな顔で笑った。
「よかった。お人形作りは、ドーラ様と共通の話題が増えたらきっと楽しいんじゃないかって、セーラさんが教えてくれたんです。」
 その嬉しそうな顔に、とん、と腑に落ちるものがあった。
 多分メシュレイアは自分の為に努力をしていたのだ、と。
 ようやく理解できた気がした。一緒に過ごすようになって体感十数年経っているのに、今更、ようやくだ。
「楽しい?」
 聞くと、メシュレイアはもちろんです、と頷く。
「はい! また一緒に作ってくれますか?」
「もちろん。まずはこれを完成させるとこからだけどね。」
「そうですね。」
 ふふ、と笑い合ってまた生地を手に取る。
 きっとメシュだってボクのことが大事だったんだろう、と思う。多分、今この瞬間も。そう思うとなんだか心が浮き立った。
「最高に可愛く作れるようにしなくては……前より絶対可愛く……スベスベマンジュウガニちゃんですから……」
 カニは好きだけど。
 スベスベマンジュウガニの響きにふっと現実を思い出す。
「ボクよりカニが好きって?」
 胸にずっとつかえていたことを聞くと、メシュレイアは目をぱちくりと見開いた。
「この間言ってなかった? ……セーラ姉さんとなんか喋ってた時に。」
 聞くと、メシュレイアは少し首をかしげて、それからこちらをみる。
「……ぬいぐるみの話の時にドーラ様とどっちがいいかって話はしました。
 でも、フォルム的には抱っこするにも枕にも良さそうで好きだなって。カニちゃん。
 それに、ドーラ様のお人形二つ並べるより、スベスベマンジュウガニちゃんと一つずつセットで並べたほうが可愛いかなって思ったんです。」
 聞いていたなら出てきてくれたらよかったのに、と言われても、あの時の自分はそれどころではなかった。
 メシュレイアは無邪気に続ける。
「ほら、ドーラ様って可愛いけど人型じゃないですか。」
 それはそうだ。自分はどうやったってカニにはなれないが、その思考回路はあんまりにもあんまりではないだろうか。
 ……と思ったが言葉には出せなかった。これも自分の行動の写し鏡なのだろうか。何を写してるのだろうか、自分だろうか、それともセーラかとちょっと考える。
「まあ人型よりはカニの方が特徴はあるよね……」
 ようよう出した声に、メシュレイアはニコニコとそうなんですよ、と笑う。
「丸っこい感じが本当に好きなんですよね。早く作ってしまいたい……ああ、でもゆっくりのほうがいいかしら。ドーラ様と一緒に作業できますし」
「それはどうも……ありがとう……?」
 きっとそれはそれ、これはこれ。そうなんだ、と思うことにした。
「でも、あまりドーラ様の手を煩わせてもいけませんね。」
「さっきも言ったでしょ、気にしなくていいよ。いくらだって付き合う。」
 少し寂しそうに見えて慌てて否定するが、メシュレイアは、いいえ、と首を振る。
「ドーラ様にはドーラ様がやりたいことがあるってこの間言ってました。
 ……私は一生懸命研究してるドーラ様はとってもかっこいいなって思うんです。だからそんなドーラ様を見ていたくて。」
 少しはにかむようにメシュレイアは微笑む。ああ、これは自分と同じだ、とふと思った。自分が憧れたのも、セーラたちのひたむきに研究する姿だったからだ。
もしもメシュレイアの態度が全部自分の写し鏡なら、きっとショコラと同じく研究にはあまりいい顔をしないだろう。でも、メシュレイアはそうではないという。
 一人の人である以上『何に価値を置くかは個人の自由』だ。今回の件で改めて分かったが、メシュレイアだって自分と違う事はたくさんある。
 でも、彼女はもしかして自分と同じものに価値を置いているのでは。
 それはもしかしたら自分で選んでくれたのではないだろうか。
「あんまり無理はしないでほしいですけど……きゃっ!?」
 そう思ったら、メシュを抱きしめていた。
「ドーラ、様?」
「ありがと、メシュ。とっても嬉しい。」
 やっぱり自分はメシュレイアが大事だ。自分の創作物だから、というより、一人の人として。
「……ドーラ様……。」
 メシュレイアの腕が背に回って、きゅ、とくっついてきた。
 穏やかにうつ鼓動が聞こえる。作り立ての頃に何度も聞いた時計仕掛けの音じゃない、ちゃんとした人間の鼓動。
「私の人生は、ドーラ様が頑張ってくださったから生まれたものですし……
 でも、それだけじゃなくて……私の心臓を高鳴らせるのは、いつだってドーラ様なんですよ。」
 言葉はそのままの意味で、すとん、と落ちてきた。メシュも自分が大事なのだと、それは造物主だからではないからだと、その時ようやく確信できた。カニに妬いて焦っていた事がなんだかバカバカしくなってくる。本当に自分は他人を見ていなかったらしい。
「ありがとう。……ありがとう、なんだろう、本当に嬉しい。……ごめんね、いつも構えなくて」
「そういうとこがドーラ様っぽい、と思ってました。
 ……私に私の人生が生まれたように、ドーラ様にはドーラ様の人生がありますから。」
 諦めまじりの声は、それでも完全に自立していて、今までの言動を反省するとともに嬉しさも感じる。
「本当にごめん。」
 心からの反省を口にして腕を離す。
「……あのね、メシュの人生はメシュのものだけど、ボクはメシュの人生ともう少し関わっていたいんだ。」
 どうだろう、というと、メシュレイアは目を見開いて、花の咲くような笑顔で抱きついてきた。
「……ドーラ様……はい、よろこんで……!」
 今度は自分がメシュレイアを抱きしめた。
 聞こえてくる少し早い鼓動が少しくすぐったい。
 でもきっと思いは一緒なのだと感じた。
 そして、今よりもっとメシュレイアの事を構おうと、ドーラは心に誓ったのだった。



ドラメシュ書くぞ!て頑張った話。これはこれで好きなんですよ。
人形には作り手の気持ちが乗ると思うけど、ドーラは何を考えてメシュレイアを作ったのかなとかそんなことを考えていました。確か。あと、カニに敗北するドーラ様をちょっと見たかったのはある…メシュレイアけなげだから多少はね…!
Prev
Free Game TOP