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家族写真:後日談(空の軌跡)
「あ。」
ひらり。それは、舞い落ちた。
「あら?何か落ちたわよ。」
ヨシュアが身をかがめる前に、エステルがそれをひょい、と拾い上げる。
「写真?・・・って、え、あああああ!?」
それを見たエステルの表情が、さあっと変わった。
・・・見られてはならないものを見られてしまった。それだけは悟れる。
「ヨシュア、これ何。いつ撮ったの。なんで持ち歩いてるの。」
ずい、と突きつけられた写真は、もう何年も前の写真だった。ブライト家に入ってしばらくした頃、正装で撮った家族写真・・・のついでにもらったものだ。
今より幼い白いドレスを着た栗色の髪のお姫様は、正装した自分に寄りかかるようにして眠っている。
「ずっと前家族写真撮っただろ。あの時ついでにもらったんだよ。」
その写真は今現在自分の手元に戻ってくる様子はない。写真をしっかり持ったままエステルは詰問する。
「何で持ち歩いてるの!」
「それは・・・エステルが見たらきっとゴミ箱行きだと思ったからさ。でも、綺麗に撮れてたし、捨てられてしまうのは勿体無いかなあと思って。」
「捨てていいわよ!」
顔を真っ赤にして怒鳴る。
「もう、よりによって、こんな間抜けな写真持ち歩くことないじゃない!私じゃなくて誰か別の人が拾ったらどうするつもりだったのよ!」
「間抜けかなあ?・・・可愛いと思うけど。拾った人もそう思うだけじゃないかな?」
小さく笑って言う。
「んなっ・・・!?」
絶句し、固まったエステルから写真を取り上げる。
「拾ってくれてありがとう。でも、これは僕が貰ったものだから返してもらうよ。」
元通り、切り込みを入れたページに挟む。
「ちょっと、ヨシュア、それ返しなさいよ!じゃなかったら捨てて!」
われに返ったエステルがまた騒ぎ出す。
「エステル、なんでそんなに嫌なの?」
手帳を鞄にしまって、そうたずねる。エステルの顔がまた赤くなった。
「そ、それは・・・!」
「どうして?」
「だ、だって」
じっと見据えて、答えを待つ。
「・・・だって、どうせ持ちあるくなら、もっと可愛い顔したの持ってて欲しいじゃない!」
かあああっとなって、まくし立てる。
「よりによってあんな写真持ち歩くなんて、あんまりよ!」
言葉の中身もその表情も、その気持ちも。可愛すぎて仕方ない。思わず頬が緩む。
「僕はね、エステル。」
そう言って、エステルの頬に手を伸ばす。
「どんな君も世界で何より可愛いと思ってるよ。」
チュ、と。軽く口付ける。

エステルは今度こそ耳まで真っ赤になって、言葉を失ったようだった。



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