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困った指輪:side シウス(SO1)
「シウスー!あれかってー!あれー!」
「シウスさん、こっちもッスー!」
「ああ、どれだあ?」
買い物に出た3人は、行く先々で大騒ぎしながら旅の買い物を進めていた。
ペリシーがマジックカンバスに反応しているかと思えば、ティニークは修行道具を見て目を輝かせている。そして、その度に「あれ欲しい!」「それ買って!」と来るわけである。
一応、財布を預かっているのはシウスだった。
しかし、これでは買い物に出た旅仲間というより、子供二人抱えた子守人である。
・・・まあ、体力は有り余っているので、はしゃぎまくる二人についていくことはできるのだが。
『いい、無駄な買い物はしないでよ。』
出掛けにイリアから、それはもうキツく言われていた。その言葉が頭をよぎる。
・・・あーもう、わかってるよ!
頭の中でガミガミと言うイリアに言い返す。
と。
「シウスー!あれかって!」
また来た。
「今度は何だ?猫缶なら買わねぇぞ。」
「違うよー。あれあれー。」
ペリシーが引っ張っていったのは、お菓子売り場だった。
ティニークもそちらで待ち構えている。
「これかってー!」
ペリシーが指差したのは、七色の飴玉。
「無駄な買い物はしねえ。」
一刀両断。すると、脇からまで声が上がった。
「買ってッスー。」
「ティニーク、お前までかよ・・・。
 駄目だ。下手にこんなもん買って行ったらイリアに殺されちまう。」
無駄な買い物はしないでっていったじゃない!
・・・鬼の形相はなぜかとてもリアルに想像できた。
「でもー。イリアも甘いもの好きだよ?あたしぃも。」
「ミリーさんも甘いもの好きッスよ。もちろん私も。」
買ってー!
そんな視線を受け止め、眉間にしわがよる。
「宿で頑張ってる皆さんに差し入れしたらきっと喜ばれるッス。細かい作業は疲れるッス。」
「甘いものは疲れないよー。」
二人掛りでさらに言い募る。
「フィアだってきっと喜ぶよー。」
「そうッス、フィアさんだってきっと喜ぶッス!」
「なんでそこでフィアが出てくるんだ!」
思わず怒鳴る。きょとんとした視線を二人から返される。
沈黙が落ちた。
何でって。
イリア、ミリーときたら、残りの女はペリシーにフィアだ。つまりただの順番。
なんだかとても気まずかった。
「・・・・・・わかった。買ってやる。でもな、イリアにはうまく言うんだぞ。」
「わかったぁ!ありがとぉー♪」
「了解ッス!ありがとうッス!」
がさがさ、とあっという間に人数分の飴玉が手に入った。
「・・・ったく・・・。」
いや、今のは半ば自爆で自業自得だ。
シウスは、そう、ため息だけついて忘れることにしたのだった。


→「困った指輪」(SO1)に続く
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