HAPPY BIRTHDAY!! INDEX
Falcom TOP

ツァイス中央工房 11:40

「そういえば、もうすぐよね。」
ちょっとした傷で、絆創膏をもらいに行った先の医務室。ミリアムがふと思い出したようにそう言った。
「・・・もうすぐって、何がでしょうか?」
聞き返すと、ミリアムはにっこりと微笑んだ。
「そりゃあもちろん、ティータちゃんの誕生日よ。」
いたずらっぽいその笑顔と言葉に、ティータは一瞬固まる。
「・・・えへへ、そうです。知ってたんですね。」
なんだか、改めて言われると照れくさい。その様子を見てか、ミリアムは、くすくすと笑いながら言った。
「そりゃあね。・・・で、プレゼントは何をお願いするの?」
「あ、ええと・・・おじーちゃんが、新しい工具セット買ってくれるって言ってました。」
思い出すと頬が緩む。いつぞや道具屋に並んでいたのを眺めていたのを覚えていてくれたらしく、ラッセル博士は少し前にそう宣言してくれたのだった。
「あはははは、らしいわね。さすがラッセル家ってことかしら。他は?どうなの?」
「・・・他・・・ですか?」
他、といわれても、今居る家族は博士と自分、2人だけである。
「・・・お父さんとお母さんは、誕生日までに帰ってこれるかどうかわからないって言ってました。」
本当のところを言えば、一番の望みは両親の帰宅なのだが、・・・こればかりはどうしようもない。駄々をこねてはいけない話でもある。
ただ、もうそろそろ戻ってきそうな感じが、少しずつ手紙の端々から匂ってきていて、それだけでもティータとしては嬉しかったりするのだった。
「あの遊撃士には、頼まないの?」
「アガットさんですか?・・・あ・・・。」
真っ先にその名前が出てきて、自分に少し驚く。それと同時に、少し顔が熱くなった。ミリアムはそれを見てまた小さく笑う。
「ふふふ・・・そうそう。たまに来てるらしいじゃないの。」
「はい、月の最後の金曜日に。・・・でも、アガットさんは私の誕生日は知らないと思いますよ。」
だって、言ってないですし。
そう言うと、ミリアムはあからさまに拍子抜けしたような顔になった。
「あらら、そうだったの。」
それでも、やっぱり小さな笑いは浮かべたままだ。
「はい。・・・・あの、何かおかしかったですか?」
「ううん、そんな事は無いけれどね。・・・ふーん、そうだったのねえ・・・。」
何かを考えているのか、笑っているのか何なのか。不思議な、あったかい表情。
「あの?」
疑問符を投げると、ミリアムは嫣然と微笑んだ。
「ふふふ、なんでもないわよ。
 引き止めて悪かったわね。行っていいわよ。」
「あ、いえ・・・ありがとうございました。」
ぺこりとお辞儀をして、ティータは医務室を出る。
何かが残るのだが、・・・きっとそんなに悪い事ではないのだろう、多分。
そう思うことにした。



next
HAPPY BIRTHDAY!! INDEX
Falcom TOP