第二次ロストール戦後。スラムはもとより平民街までもボロボロになったロストールに彼は居た。
旅暮らしではあるが、ここに滞在している時だけは、こうして弱い人々の助けになろうと決めたからである。
「頑張ってるみたいね。」
怪我人の手当てをしているところに後ろから声が掛かった。肩までの髪を揺らす彼女は冒険の相方だ。
「ああ、君か。もう出発するのかい?」
手を止めて振り向くと、そのままでいいと頭を振る。
「ううん、出発は明日。エルファスが行ってるって聞いたから、様子を見に来てみたの。
手伝う事はある?」
一瞬、どうしようかと迷った。ここに居るのも、ここで人々を助けるのも自分が決めた事なのに、彼女を巻き込んでいいものだろうか、と。
しかし、何のてらいもなく、当然の顔をして視線を合わせられては敵わなかった。
「・・・ああ。君の助けがあると助かる。」
そう言って頷くと、ふっと彼女の表情が緩んだ。
水を替える、食べ物を分ける、人々に声を掛ける。やることだけはたくさんあった。
肩を並べて動くだけでも、なんだか心が温かくなる。
「本当に皆に好かれてるのね。姫様も助かってるって言ってたわよ。」
手を動かしながら、彼女は驚いたように言う。
「いいや、まだまだだよ。
だけど、僕の力が少しでも役に立つのなら、と思って。」
それに、これが少しでも君の助けになるのなら。そう言うと、彼女は顔をほころばせた。
「エルファス、変わったよね。前よりずっと前向きになった。」
「そうかな。」
いわれて少し考える。
心当たりはあるような気がしなくもなかった。自覚症状は半分くらいだ。ただ、その大部分は彼女によってもたらされたものだった。
「・・・そうかもしれない。君のおかげだよ。」
「私は何もしてないわよ。」
何言ってるの、と苦笑いの顔に首を振る。
「そんなことはないさ。」
「そんな事はあるけど。・・・あ、今行くね。」
向こうから声が掛かって、話は中断した。彼女はぱたぱたとそちらに走っていく。
その姿を目は素直に追っていった。
自分が変われたのだとすれば、彼女の存在だけでも十分な理由だ。
彼女が居る世界は、美しく見えた。
その景色が、今の自分をこの地に立たせているのだから。
仲間入れた後、終盤の救世主様は本当に素直と言うか純粋というかで可愛い。でも、あれが彼の本来の姿なんだろうなあと思ってます。
何か、本来の自分を押し殺して生きてる人がバイアシオンには一杯居るなあ。