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夜会狂想曲 3.

ホールに連れられると、程なく音楽が始まる。
滑らかなリードに乗ってステップを踏みつつ、テラスの方を見やると、
・・・レイヴは、結局人に囲まれていた。
相変わらずの無表情ながら、困っているのはダンスの片手間でも分る。
さすがに、気の毒だった。
「あーあー・・・レイヴ、結局人に囲まれちゃってるし・・・」
あんたのせいだよ、とさりげなく足を踏みつける。
「・・・これじゃ、何のためにここに来たんだかわかりゃしない。」
テラスを見ながらぼやくと、肩を引き寄せられてしまった。
「足を踏みつけたり余所見をする前に、こちらの方を良く見てほしいものだな?」
「やだ。向こうが気になるもん。
 折角レイヴが頼み事してきたってのにさ・・・ちゃんとかなえたかったんだけど。」
ふい、と視線をテラスに向けつつ、何で邪魔をした?とまたさりげなく足を踏みつける。
「やれやれ・・・本当につれないな。
折角の美人だと言うのに、こちらを向いてもくれないのか。」
「うん。
 こういう事でシーヴァスの言葉真に受けるぐらい、ばかばかしい事ってないからね。」
芝居がかった嘆きの言葉も、・・・こういう事は流すに限る。
「・・・ひどい言いようだな。私の信用はそこまで低くなってたのか?」
「別に?学習しただけさ。
 それに、普段のことに関して言えば信用してるよ。
 ・・・だから、依頼はちゃんと受けてね?」
視線をシーヴァスに移して、じっと見上げる。
「随分と調子のいい事を・・・」
「お互い様ってことさ。でも、レイヴには悪い事しちゃったな・・・」
テラスに視線を戻して、また、さりげなく踏みつける。
と、あきらめたらしい。
引き寄せている手の力が緩んだ。
「やれやれ。
 ・・・あんまり甘やかすなよ?あれだって職務のうちだろう。」
それは確かに、もっともなこと。
ウィルは、ふう、と息をついた。
「・・・・それは、レイヴも言ってた。
 でもね、死ぬほど言い難そうにでも、私に頼み事してくれたんだ。
 それぐらいには信頼されてるって事だし。それならやっぱり応えなきゃ。」
ターンを決めつつ答えを返す。
「・・・本当に真面目だな・・・
 ところで、奴はなんと言って君にそんな事を頼んだんだ?」
「ん、ああいう場は苦手だって。女の人に声をかけられるのは特に苦手って。
 私は普通の女と違って女に見えないから、虫除けに丁度いいってさ。」
と、シーヴァスは顔を少ししかめた。
「・・・・・大分失礼な事を言ったようだな・・・」
「そうかな?本音だったら失礼もへったくれもないと思うけど。」
「・・・・なるほど。そういう考え方もあるか。」
「そうそう。女に見えないからこそ頼まれたんだから。
 これだって、十分な褒め言葉だよ。」
くるり、くるり。
すべるように踊りながら、それでも恨みがましく足を踏みつける。
「・・・今度踊るときは、足を踏みつけないでほしいものだな。」
「踏みつけられるような事しないならね。」
曲の最後にまた踏みつけて、一礼する。
「それじゃ、また。踊ったからには依頼受けてね?」
視線を合わせて、にっこり微笑む。
「・・・他に言う事はないのか?」
「ない。
 さてと、レイヴのところに戻らなきゃ。」
テラスの方に視線を移す。
そこにはきっと人に囲まれて困っているレイヴが居るのだ。
「それなら、私がそこまで連れて行こう。
 あの人だかりを乗り越えるのは骨だろう?」
・・・確かに。
「・・・・そうだね・・・
 じゃ、おねがい。・・・ありがとうね。」
「礼には及ばない。さて、行くか。」
そのまま彼は、天使の手を取ったのだった。


壁を開いて、レイヴのところまでたどり着く。
「ごめんね、役に立てなくって・・・」
「・・・・・・・いや、いい・・・・
 これはお前のせいじゃない。・・・奴のせいだ。」
恨めしげな視線は、そのままシーヴァスを直撃する。
「ひどいな。そこまで恐い顔をしなくてもいいだろう?」
「・・・・・・・・。」
「・・・わかったわかった。今度からは控えるさ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
レイヴは、やはり無言のままである・・・が、目が口ほどに語っていた。
「・・・信用、していいのかどうか、迷うとこだね、こればっかりは・・・」
「全く、本当に冷たいな。」
肩をすくめてみせられても、真実は真実である。
「冷たくて結構。こんな態度取らせる方が悪いよ。」
隣でレイヴも息をついた。
「・・・・・・・・・全くだ。
 もう、夜も更ける・・・行こう。
 ・・・それではな、シーヴァス。」
「あ、うん。
 それじゃね、シーヴァス。
 約束どおり依頼はきっちり受けてもらうから、忘れないでよ?」
びしっ!と指差して念を押す。
「・・・やれやれ・・・本当にそれしか言う事はないらしいな・・・」
歩き出した背中に向かって、シーヴァスのぼやく声が聞こえてきた。


部屋に戻って二人になると、そのまま天使姿に戻る。
「・・・・今日は、お疲れ様。
 役に立てなくてごめん・・・でも、頼まれれば、いつでも引き受けるから。」
「・・・・・・ああ。そんなに気にする事ではない・・・」
相変わらず言葉少ないのだが、そう怒っているわけでもないらしい。
頷いて、そのままとたとたと窓辺に立つ。
「それじゃ、またね。」
「・・・ああ。また、頼む。」
・・・頼む、か・・・♪
   頼みをかなえるのは・・・失敗しちゃったけど。
でも、なにか・・・ちょっと嬉しかった。
くるりと振り向いて、最敬礼。
「了解♪」
そのまま天使は、虚空に飛び立ったのだった。



夜会のお話三部作、完結です。
やっぱりこのゲーム・・・というかキャラクター達に愛あったのが見て取れるなあと(笑)
元のゲームはSLG+RPGのネオロマギャルゲー混ざった物品ですが、気分は友情モノで。
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