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二人で必殺技

 「合わない気がする。」
 
 むぅ、と少し残念そうなフィーの言葉に、ラウラはふむ、と息をついた。
 「確かに道は違う。だが同じ武の道ではないのか。」
 「確かに武術には違いないけど。
  自分を高める、ていうのが主眼のラウラの剣と、いかに効率よく敵を殲滅するかが主題の私の戦い方は、やっぱりあわない、気がする。」
 少ししり込みするような声。しかしラウラはそれに首を振った。
 「だが、我らが協力すれば、もっとクラスの助けになるだろう?
  それはフィー、そなたの目的にもかなっているのではないか?」
 「……それは、そうだけど。」
 「まずはやってみることだ。私はそう思うぞ。」
 肩にぐいっと手を置かれ、フィーは困惑するように目を逸らす。
 「……ラウラ、強引。」
 「そうか?」
 「うん。」
 そして、目線をラウラに合わせた。
 「でも、わかった。ラウラがそういうなら。やってみよう。」
 
 
 旧校舎行きのときは、必ず、必ず我らに声を掛けてほしい。
 リィン、お願い。約束だからね。
 
 そんな言葉の通りラウラとフィーを連れての旧校舎行きはとても……とてもさくさくと進んでいた。本日のメンバーはラウラとフィーにエリオットを誘ったのだが、エリオットの回復アーツが活躍する機会がないくらいに順調なのだ。
 まず、二人の気合が妙に入っている。同じ目的が何かあるような雰囲気を纏っていて、コンビネーションもいつもよりもはるかに息が合っているのだ。
 「二人とも、どうしたんだ?」
 聞くと、ラウラはにっこりと笑った。
 「……ちょっと、二人でやってみたい事があってな。」
 「……ちょっと、色々試そうかと思って。」
 フィーも機嫌よくそう微笑む。しかしその笑顔はすぐに真顔に変化した。
 「来たよ。……ちょっと数多いかも。」
 先のほうには確かに魔獣の気配がしていた。一瞬で警戒レベルを引き上げて声を掛ける。
 「……皆、構えろ。」
 『応!』
 「わかった!」
 武器を抜くと、それを待っていたかのようにわらわらと魔獣が現れた。敵の数は、視界に入る限りで8体。うち一体はボスのような大きさだ。遭遇した事はあったが、若干固めで面倒だった記憶が蘇る。
 それを見たラウラが、警戒を崩さずに先に出た。
 「丁度いい。
  リィン、エリオット。ここは我らに任せて欲しい。」
 「ん。いいかな。」
 返答も待たずに二人は戦闘態勢に入る。
 「え、あ、ああ……わかった。バックアップは任せて欲しい。」
 言うと、後ろのエリオットがアーツを駆動させた。
 「補助はさせてもらうからね!」
 『応っ!』
 すぐにオーラが身体を包み込む。それと同時に、フィーがまず先陣を切った。
 見事なまでの素早さで、全ての敵を一瞬にして切り裂いていく。そして、敵の怯んだ隙を逃さず周り中に弾丸をばら撒いた。
 フィーの必殺技。
 そう認識するより先に、フィーはとんっと場所を譲り、気合をためていたラウラが残りの敵に踊りかかる。
 「アルゼイドの秘剣、とくと見よ!!!」
 唐竹割りに、そして横薙ぎに。最後は回転するように、豪快な剣が、大物中心に辺りをなぎ払う。
 その剣気が通り過ぎた後には、魔獣の残骸だけが転がっていた。
 「……すっごい……。」
 「なんというか……圧巻だな……。」
 唖然と眺めているエリオットと自分の前で、フィーとラウラはぽん、とハイタッチを決めている。
 「大体うまくいったな。」
 「ん、ラウラ、お疲れ。」
 残りは居ないね、と言いながら二人がこちらを振り返った。
 「なんというか、二人ともお疲れ様。凄かったね。」
 怪我は?と尋ねるエリオットに二人は大丈夫だと頷いている。
 「試したかったのって、これの事だったのか?」
 聞いてみると、ラウラとフィーは照れた様に笑った。
 「戦闘力は、協力する事で上がる事は解っているからな。」
 「もっと強力に連携できたら、今後の助けになるかもって……ラウラが。」
 「……二人とも凄いや。」
 目をぱちくりさせてエリオットが素直な賞賛を送る。
 「その分なら、目的は達せられたみたいだな?」
 そう言うと、いや、とラウラは首を振った。
 「まだまだだ。今我らは協力の第一歩を踏み出したに過ぎぬ。」
 「ん。まだちょっとロスとかあるし、動き方も改善の余地アリ、だね。」
 そう言って、フィーも軽く頷く。
 「協力するならそれ相応の動き方もあるからな。
  だが……まずは二人で技を繰り出せた事が何より前進、かもしれないな。」
 「ん、ラウラのおかげだね。」
 にこ、にこ、と笑い合って、女子二人はまたぱん、と拳をあわせた。
 「……はあ……すっごいなあ。」
 「本当にな……。」
 戦闘に対する意識の高さというのはこういう事を言うのだろうか。
 「やれやれ、俺たちも負けてられないか。」
 「そうだねえ。今後また敵も強くなるだろうしね。即席では無理かもしれないけど。」
 「そうだよな。俺たちだと練習の必要はあるかもしれない。」
 しかし、それはそれで面白そうだ。
 拳を合わせている二人からは、とても楽しい事だ、というのが全力で伝わってくる。そしてそれに自分の心も呼応していた。
 それは武の道に魅入られた人間の、向上心と言う名前の本音と本性だった。



   
「軌跡版深夜の真剣お絵かき60分1本勝負」という、1時間でお題にそったもの何か書く!という企画に文字で参加してみた結果。お題が閃のSクラフトだったのでラウラとフィーでなんちゃってコンビクラフトという名のSブレイク2連発。
ラウラとフィーのイベントはもめてた期間が長かった分その後の仲の良さが凄く可愛くて好きです。武術得意な二人でこんな事画策してたら可愛いなっと。

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