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ひとこと日記

 シスター・マープルの机上には、宿題のノートが積み上げてあった。
 今回の宿題は、日付を指定しての日記。作文の初歩の課題ながら、内容も楽しみなのが人情である。
 まず一冊目。開くと、粗っぽい字が飛び込んできた。

『○月×日 はれ
 きょうは、ねえちゃんが帰って来てたから、おみやげもらった。
 山の向こう側の国のどうりょく車のプレートだった。
 ねえちゃんのおみやげのセンスってわからない。』

 横にはプレートの絵らしく、四角に文字が書かれたものが書いてあった。なんだかんだで嬉しかったらしい。
『おみやげよかったですね。
 おねえちゃんに、旅の話を聞いてみたらおもしろいかもしれませんね。』
 姉の方とも少しだけ面識があったのだが、相変わらずのようでなんだか和んだ。
 朱を入れて次のノートを開く。次は少し大人びた字が並んでいた。

『○月×日 はれ
 きょう、図書館でIBCのマリアベルさんをみかけました。
 美人で、きれいで、とってもすてきな女の人でした。
 かしこい人だとも聞いています。わたしもああいう人になれたらいいなあと思いました。』

 マリアベルも以前に受け持った事がある。あの頃の彼女をふと思い出して笑みがこぼれた。今、こうやって子どもの憧れになっているというのも、また嬉しい。
『いろいろな事に興味をもつようにしてください。
 まずは、たくさん考えることですよ。』
 さらさらと朱を入れてノートを閉じた。

 日記の山はまだまだ続く。

『○月×日 はれ
 きょうは遊びに行ったあとで、おねえちゃんのお料理のお手伝いをしました。
 レタスをちぎってサラダをつくったら、おばあちゃんにもほめられました。
 とてもうれしかったです。』

『○月×日 はれ
 きょうのタイムサービスは、魚屋さんが三割引きで、八百屋さんが半額でした。
 夕方五時までに帰らないといけないので、ざっか屋さんの五時からのタイムセールにぼくは行った事がありません。
 いつか行ってみたいです。』

『○月×日 はれ
 きょうは、ロイドが新しいレコードを買ってきてたので、夜にみんなで音楽をききました。
 きれいな曲がいっぱいきけたので、お休みの時間も、みんな笑ってました。わたしもたのしかったです。』

 控えめな字、元気な字、几帳面そうな字、とそれぞれの字が並ぶ。
 その一つ一つから、書いた子の性格や気持ち、個性が伝わってくるようで、なんだか微笑ましい。
 それぞれに朱を入れていくと、最後の一冊には控えめな字が並んでいた。

『○月×日 はれ
 きょうは、リュウくんと、アンリくんとキーアちゃんとあそびました。
 ボールなげをしてたら、ツァイトも遊びに来たので、みんなで遊びました。
 とってもたのしかったです。』

 本人の性格通りの字。引っ込み思案で少し心配していたのだが、ここの所は友達と遊ぶことも増えたらしい。
「本当に良かったわね」
 そう呟いて朱を入れ、ノートを閉じた。
 ノートの一つ一つから、子ども達の声が聞こえて来るようだった。


軌跡フェスタに投稿した分。まさか300以上も応募あるとか思ってなくて、応募数見たときに、・・・出さなきゃ良かったかもと思ったのはまあ(汗)小説読むのって好きでも大変だから・・・。
内容は1200字にすることを目標にしてほのぼのと・・・やまなしおちなしいみなしです。子どもたち可愛かったから、一度書いてみたいとは思ってましたけども。
全員わかるように書いたつもりですが、一応上から、リュウ・パンセ・アンリ・クータ・キーア・モモの順。クータくんは東街区だからゲスト出演です。
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