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あなたの部屋に連れてって

「ロイドー、今夜お前の部屋行っていいかー?」
夕食後。ランディがロイドに声を掛けた。ロイドはきょとんとした表情で頷く。
「ああ、いいけど。何かあったのか?」
ランディは一瞬止まって・・そして、にやらぁっと笑った。
「んー?まあなー。ちょっとお楽しみって奴だよ。」
その表情は、女人禁制を前面に押し出している。
が。
「ロイド、私も行っていいわね?」
エリィも声を掛けた。ただし少々押しの強い声で。
「え?!」
ぎょっとした風な顔でロイドがエリィの方を向く。エリィは、有無を言わさぬ笑顔で先を続けた。
「二人だけで楽しもうったって、そうは行かないわよ。」
ねえ、ランディ。
笑顔はランディに向く。向かれた方は、うぐっと詰まってまた笑顔になる。
「男同士の付き合いって奴だぞ?」
「ええ、ぜひご一緒したいわね。」
全く怯まない。
・・・まあ、怯む必要など無いことはわかっていた。ふう、と息をつく。
「ロイドさん、ランディさん。よろしければ私もご一緒したいです。」
「えええ?!」
ロイドが今度はこちらを向いた。どうやら、何も気づいていないらしい。返答を待っていると、ランディが割り込んできた。
「ティオすけー、空気読もうぜ?」
しかし、言い方もその表情も、果てしなくわざとらしい。
「どこに空気を読む必要があるんですか?」
ふ、と息をついてみせる。エリィがにっこりと笑う。
「ランディ、あなた今朝、いそいそ外出してたわよね。」
その言葉に、それまできょとんとこちらを見ているだけだったキーアも声を上げる。
「あ、キーアも知ってるー。荷物一杯あったし!帰ってきたときとってもニコニコしてたよね!」
「ええ、そうでしたね。朝からご苦労様です。売り切れる前に買えたようで何よりです。」
ぎくり。わかりやすくランディが動揺してみせた。それにエリィが乗って、にっこりと笑う。
「なんでも結構なレア品ですって?」
ぎくぎくぅっ。と。さらにノリよくランディは動揺してみせる。相当の芸人である。
「私が昼過ぎに行った時には完売でしたね。あまり多くは作られなかったようです。」
「なんでも、アーティスト達はあまり乗り気ではなかったらしいから。」
「あー、キーアわかったー!」
そこまで言ったところで、キーアが声をあげた。ロイドもやっと、ああ、と手を打つ。
「さーあて、何のことやら?」
「ロイドさんの部屋に行くと言った時点で目的は明らかです。あそこには導力コンポがありますからね。」
トドメだ。まだまだわざとらしく言い逃れるフリをするランディに、ビシッと指を突きつける。
「ランディさん。
 あなたがアルカンシェルのサウンドトラックを入手している事は、まるっとするっとお見通しです。」
「おおー、ティオ、探偵みたいー!」
キーアの賞賛の声がくすぐったい。
「ちっ、ばれちまったら仕方ねぇ・・・」
「おおー、ランディ悪役みたいー!」
「キーアちゃん、それは何かちがうから。」
ロイドがそんなこちらを見て、えーと、と苦笑する。
「なんで、レコード聞くのにそんな話になってるんだ?」
「だってお前、俺がお前の部屋行くっつってんのに、目的が何か気づきもしなかったじゃねぇか。
 お嬢とティオすけだって気づいてたってのによ。」
だからちょっとからかってみただけだよ。肩をすくめるランディと一緒になって、エリィも頷く。
「いつ気づくかしらと思ってたけど、キーアちゃんと一緒とはねえ。」
「ロイドさん、鈍すぎです。」
総攻撃に、ロイドが怯んだ。
「いや、だって。ランディが言うと、別のもの想像するだろ?」
慌てて言うその言い訳は、・・・ご尤もでもある。しかし、ランディは肩をすくめるだけだった。
「そらまあ確かにHOT SHOTの最新号はついでにゲットしてきたけどよ?お前普段あんま興味なさそうにしてるじゃん。・・・って。」
そこまで言って、ぽんと手を打つ。
「ああ、そうかそうか、やっと目覚めたのか。それなら」
「それは別の機会にしてちょうだいね。」
全てを言い終わる前にエリィが止めた。
「へいへい、わかってるって。」
「どうだか。」
「トゲあるなー、ティオすけ。」
「日ごろの行いが悪」
「ねえ。」
普段と変わらぬ言い合いを、のどかな声が止める。
「キーアもロイドのところ行っていい?」
元気かつ純粋な声に、その場に居た全員の頬がほころんだ。
「ええ、みんなで聴きましょう。それでいいわよね?」
「ああ、もちろん。」
ロイドも頷く。
「それなら、ちょっと片付けてくるから待っててくれよ。」
そう言うと、ロイドはばたばたと二階に上がっていった。
「アイツにも人に見せられないもんがあるんだなあ。」
「ランディほどじゃないわよ。」
間髪居れずに入った突っ込みに、ランディが肩をすくめる。
「何言ってんだ、俺はいつだってフルオープンだぜ。」
「そっちの方がよっぽど問題かと。」
ぼそりと言うと、今度は深々とため息をついた。
「へいへい。さーて、俺もレコード取ってくるかねえ。」
よっこらせ、と席を立つと、ランディも二階に上がっていく。キーアがそれを見送ってこちらを振り向いた。
「キーアたちはいつ行くの?」
「ロイドさんが呼びに来たらでいいんじゃないでしょうか?」
エリィも頷く。
「そうね。すぐ降りてくるわよ。」

少しばたばたしていた二階が、やがて静かになり、ほどなく階段を下りる音が聞えてきた。
用意できたぞ、の声も一緒だった。



タイトルと内容がなんだかかみ合ってないのはいつもの事です。
いや、あの台詞が頭から離れなくてですね。一度言わせて見たかった、絶対ティオに似合うと思ったんだ・・・。
話の内容はといえば、ランディ君フルボッコです。
じゃれあってる特務支援課はとってもかわいいと思うのです。きゃっきゃうふふしてたら私はなんだっていいらしい。
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