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secret accomplishment

早く!!早く駆動して・・・!!!

気は焦る。しかし、そう上手く行かないのもどこかではわかっていた。

魔物とやり合っていた仲間は、皆、膝をついていた。不意をつかれただけではない。敵が予想以上に強かった結果だった。ロイドは先の一撃が効いたのか起き上がれて居ない。エリィも完全に意識が飛んでいる。ランディとダドリーは意識はある様だが、最前線に居たおかげで散々に攻撃を食らっている。早く回復しないとこちらもマズい。
こんな状況下で自分がなぜ無傷かといえば、他の四人が前に出ていたおかげでこちらまで攻撃が来なかったからである。
駆動中のエニグマは、まだ発動までには時間が掛かるようだった。しかし、他のメンバーをほぼ無力化した敵は、既にターゲットをこちらに変えてきている。
敵は三体。もう目の前だ。
エニグマを握り締め、杖を翳す。避けられるかどうかは分の悪過ぎる賭けでしかない。それでも、やらないよりはマシだった。
まずは一歩飛び退るのだ。あとは・・・右か左か。ここまでくれば運に賭けるしかなく、賭けるからには勝たなければならない。自分が倒れたら、チームは全滅だ。
前を見据え、足を踏ん張った。
タイミングを見極め、後ろへステップを踏む。一撃目が鼻先を通り過ぎる。考える間もなく右へ飛ぶ。しかし、待っていたのは敵だった。
「ああっ!」
爪が肌を切り裂く。思わず庇おうとして、次の敵に気づいた。血を流す腕を放置で身を翻す。三撃目は避けられた。その次。身を引こうと上体を反らす。
その瞬間、目の前を鮮やかな深紅が疾った。血風の色。それは、感情を消し去った、背の凍るような気配に包まれている。
反射的に感じたものは、冷徹な殺意。その強すぎる感情に、足がすくんだ。
動けない自分の目の前で、血が飛沫く。
「・・・悪いな。」
ぼそり、と低く声がして、我に返った。
足元には倒れている敵、三体。もう動く事は出来ないだろう。
飛び散った血も自分のものではない。・・・敵のものだ。
「ま、こんなもんだろ。」
血風の吹き去った先で声がした。ランディだ。ボロボロの姿で息をつくその姿はいつもと大して変わらない。
・・・ただ。・・・先ほどのあの殺意の主は、彼だった。
ぽかんとそちらを眺める。自分はきっと間抜けな顔をしているだろうが、それしかできなかった。
いつもおちゃらけていて、キーアも居るのに平気でグラビア雑誌をソファに置いている非常識人で、妙に料理が上手くて、遊び人で自他共に認める女好きで。
猟兵をやっていたと、それは聞いていた。猟兵団『赤い星座』の部隊長、闘神の息子の二つ名。聞いたときに調べもしたので知識としてはある。記念祭のタッグレースの時に垣間見せた表情だってある。ありえない事ではないのだ。
しかし、どうやっても繋がらなかった。素直な感想を言えば、ただ、怖いだけだ。
ぼんやりしているうちに、ようやく駆動し終わったエニグマが、癒しの風で辺りを包んだ。
「サンキュ。」
「いいえ。」
それだけ言って、次の言葉をひっぱりだす。
「・・・こちらこそ・・・さっきはありがとうございました。」
引っ張り出した言葉は、カチカチに固まっていた。気まずい。しかし、ランディは、はは、と苦笑いしただけだった。
「怖がらせちまったか。悪かったな。」
声には、隠しきれなかった感情が滲む。
「そんなこと!」
そこまでは反射だった。見上げると、無理すんなよな、の表情が見て取れて、声を落とす。
「・・・ありますけど、でも。」
目が泳ぎそうになるのを堪えて、ぎっと青い目を睨んだ。
「どんな過去があってもランディさんはランディさんです。私たちの仲間です。そりゃ正直怖かったですけど、それくらいじゃ揺らぎませんよ。」
見くびらないでください。
そこまで言い終わるころには、感じていた恐怖も消えていた。ふ、と息をつく。
「全く。」
渋い声がそれに重なった。ダドリーだ。
「警察にあるまじき戦い方だな。しかし・・・」
ダドリーがちらと目をやった先を見れば、ようやくロイドとエリィが起き上がったところだった。
「そうも言ってはいられん。」
そう言ってため息をつく。
「お前が以前何をやっていたのか、大方の想像は付く。わかっているだろうが、飲まれるなよ。」
ぎっとランディをにらみつけると、ダドリーはそのまま踵を返し、ロイドたちの方へ行ってしまった。全く何をやっている、だのなんだの、お怒りの声と共に。
「やれやれ・・・もう、誤魔化せねぇか。」
ぼそ、と自嘲の呟きが聞えた。
「誤魔化す必要があるんですか?」
息をついて見上げると、眉をひそめようとして失敗したような表情と目があった。
「・・・だがなあ。」
「今更な気がします。というか、そんな隠し芸を持ってるのなら、こんなピンチになる前に使って欲しかったです。」
「おい・・・。」
その瞳に剣呑な光が宿って、・・・そして霧散した。
「・・・ったくよー、俺の一大決心は隠し芸扱いか?」
「今のところ、そんな感じですね。多分皆さんも一緒です。」
仲間の過去って奴を、受け止めるつもりがあるからでしょう。
その後付に、ランディが息をついた。
「おい、プラトー!こいつらを回復してやれ!」
不意に呼ばれて振り返る。ダドリーだ。
「・・・いちいち偉そうです。」
ぶす、と文句がもれた。しかし、結局はそちらに駆け寄る。
「悪いな、ティオ。」
「ごめんね。ティオちゃん。」
まだきつそうな二人に向かって首を振った。
「いいえ。こちらこそ気づけなくてすみませんでした。・・・リカバリーモード、起動します。」
魔導杖から光が零れ、辺りにエネルギーフィールドを形成する。しばし頃合まで待機。傷やダメージが癒えていくのを確認して、声を掛けた。
「・・・もう、大丈夫です。」
エネルギーフィールドが消える。
「ありがとう。」
「ありがとうな。」
ボロボロだった二人もほっとしたように身体を動かし、そして立ち上がった。
「・・・手ごわいわね。」
「さすがルバーチェ、って事か。」
身体を伸ばし、二人がため息をつく。
「そんな事をのんきに言っている場合か!」
ダドリーの怒りの声はご尤もだった。
「ヒヨッ子のくせに気を抜くな。この調子ではいつ全滅してもおかしくないぞ。」
本心からだからだろう、迫力がある。
「すみませんでした・・・。」
「全く。」
ダドリーは、先を見てくると踵を返した。次の部屋の様子を伺うつもりらしい。習って少し気配を探る。広い部屋。飛ぶもの、足元を駆けるものの気配。先はきっと、まだまだ厳しい。
「ランディ、ごめんな。」
「何がだよ。」
高めた感応力は、少し離れたところの小さな話し声も捉えた。
「・・・さっき魔物を倒していたのが見えた。」
「・・・そんなことか。大したことじゃねえさ。」
気配を探るのを止めてそちらを向く。と、丁度ランディがロイドの背を叩いているところだった。
「相変わらず仲がいいわね。」
同じものが見えたらしい。くすくすとエリィが笑う。
「全くです。」
そう言って肩をすくめた。

「敵は多いな。だが足場は悪くなかった。」
いいながら、ダドリーが戻ってくる。
「機械より魔物が多い。先手を打つぞ。」
陽動と目潰し、速攻と波状攻撃。流石一課と言おうか、作戦の立案は早かった。それにロイドが質問と対案を出し、作戦が詰まって行く。各人自分のポジションに移動を始められるようになるまで、五分も掛からなかった。
ポジションを目視して移動開始。同時に手順を反芻する。敵を集め、爆弾で目を潰し、アーツで敵を減らし弱らせ、範囲攻撃で一掃。残りは銃撃で対応・・・そんな段取りになっていた。
「やれやれだな。」
「気を抜いたらさっきみたいな事になります。気をつけてください。」
後ろからの声には振り向かず、先へ進む。と、後ろから、わさわさと頭を撫でられた。驚いて振り返る。
「どうしたんですか。」
振り返った先のランディは、へらりと笑っている。
「なんとなくな。」
振り返るまでも無かったらしい。
「貴方はたまに物凄く空気が読めませんね。」
ため息一つで背を向ける。と、また後ろから撫でられた。
「そう言うなって。そんなガチガチに固まってちゃ動けねえぞ。」
「・・・それなら、最初からそうと言えばいいんです。」
頭の上の手をぐい、と押しのける。さっきの緊張感とあの迫力は何処に消えたのだか。一瞬あの殺意を思い出して、背筋が寒くなった。
・・・それでも、それは一瞬。
「全く。」
冷静に、呆れ声で応えてみせた。
「 ・・・すっかりいつもどおりですね。」
いつもどおりの気の抜け方に少しだけほっとしたのは、間違いない事実でもある。
「俺はいつだっていつもどおりだぜ。」
へへん、となぜか自信満々の声も確かにまあ、いつもどおりだ。
「ランディさんがそう言うならそれでいいですけど。今のランディさんは、無駄に上機嫌です。」
エニグマのクオーツを確認しながら、ちらりと後ろを見やった。すると、視線に気づいたか気づいていないのか、ランディはへらっと相好を崩す。
「まあ、なんだ。俺も意外と愛されてるって奴らしくてなあ。」
どうやら、何かが春だったらしい。
「幸せな人ですね。」
半眼でため息をついても、機嫌が悪くなる事は無かった。
「おう。ティオすけにもわけてやんぜ。」
口を開こうとすると、別の声が飛び込んでくる。
「何を無駄口を叩いている!死にたいのか!」
ダドリーの怒号。
顔を見合わせ、肩をすくめて位置に付いた。
ダドリーは辺りを見回し、ついでにこちらをぎっと睨む。
「準備はできたか?」
先は厳しい。それなのに、あるのは妙な安心感。
「大丈夫よ。」
「こっちもOKです。」
「いつでもいけるぜ。」
口々に了解を口にする。

そして、号令が響いた。



secret accomplishment:隠し芸。
「もう、誤魔化せねぇか・・・」にときめきまくった結果がコレだよ!「最高の貴方を見せてください!」と素で叫んだよ!最後の技二つ強すぎる・・・!

・・・というプレイヤーの事情はともかく。あの怖い猟兵版のランディも、支援課メンバーなら普通に受け入れそうな気がします。
ランディのIBCは「引いてないとは言わせない」て台詞が一番残りました。でもあれ聞いて、「引いてもいいんだ、その後受け入れられれば。」とも思ったのでした。そういうとこランディは甘いと言うか優しいと言うか度量があるというか。いい兄貴だなあとしみじみです。
・・・見ての通り私はランディ大好きなのです(笑)
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