エステル達は、リシャール大佐を追いかけるべく、広い遺跡を二手に分かれることになった。
探索と待機。どちらも危険な任務である。
しばしの相談のうち、エステルは一つ頷いて言った。
「アガット、それとジンさん。探索の方に来て。
何が待ってるかわからないから、なるべく力のある人に頼みたいの。」
「アーツは、不肖ながら僕たちが受け持ちますから。お願いします。」
ヨシュアも言葉を合わせる。
「わかった。腕が鳴るな。」
「悪くない判断だ。」
ジンとアガットも頷く。
「お姉ちゃんたち、気をつけてね。」
「くれぐれも無理をなさらないで下さい。」
ティータとクローゼも頷いた。
「じゃぁ、こちらは私たちに任せて。あんたたちは一刻も早く進路を確保して頂戴。大丈夫、あんた達ならやれるわ。」
二人の間に立ったシェラザードが、ぽん、とエステルの肩を叩く。
「うん。シェラ姉たちも気をつけてね。」
エステルが力強く頷く。
「フッ・・・このボクがいる限り、ここにいる仔猫ちゃん達には指一本たりとも触れさせたりはしないさ。」
オリビエが、シェラザードの肩ごしに顔を出し、いつもの調子でバラを取り出した。
「こんな可憐な花達に囲まれているのならば、普段以上に気合が入るというものだ。
フッフッフ・・・大船に乗った気で任せたまえ。」
言いながら、クローゼとティータの肩を抱く。
「イヤァ、ボクとしてもこんなところでハーレムを体験できるとは思わなかったからね♪ハッハッハ・・・」
そして、困り顔の二人に口付けるつもりか、・・・オリビエは、まずはティータに顔を近づけた。
ティータがぴしり、と固まる。
瞬間。
風を切る音が交差し、重い音と共に壁に何かが突き刺さった。
オリビエの喉元には、東方由来の太極棍が突きつけられ。
突きつけられた先には鞭が絡まり。
彼の背後の壁には、重剣が突き刺さっている。
金色の糸・・・もとい髪の毛が数本、壁の辺りに散らばっているのが薄ら寒い雰囲気をかもし出していた。
時が止まる。
オリビエの喉もとの棒よりも鞭よりも、彼の頭を掠めて飛んだ重剣が、時間を凍らせていた。
間違わなくても、頭に当たれば即死なのだ。
何より。
アガットがそんな行動に出ると予測していた人間は、その場にはほとんどいなかった。
「悪ぃ、手が滑った。」
壁に突き刺さった重剣を抜きながらアガットが無愛想に言った。
手が滑ってあんな絶妙のコントロールで重剣が飛ぶわけがないのだが、反論できるものは・・・誰もいなかった。
「(なかなかやるわね・・・)」
「(さすが、いい仕事するわね・・・)」
首に獲物を突きつけ・・・もとい巻きつけた二人は心の中で快哉を叫ぶ。
ある意味九死に一生を得た演奏家は、ようやっとぎしぎしと身体を動かした。
「・・・こ、今度から・・・き・・・気をつけてくれたまえ・・・。」
助けられた(?)当の本人は、やはり固まったままだ。
少しはなれたところで、唖然と見守っていたヨシュアが、ようやく立ち直り、ひそりと隣にいたジンに耳打ちをした。
「・・・ジンさん・・・すみませんが、オリビエさんと変わっていただけますか?」
一人平静に見守っていたジンが頷く。
「・・・あれは、嬢ちゃんたちのためにも、あの兄ちゃんのためにも、オリビエの旦那のためにもならないからな・・・。」
「オリビエさんは・・・あれでもかなり強い味方ですし・・・
エステルも前線に出るほうが好きなようですから、多分大丈夫・・・だと思います。」
「あぁ、お前の判断は確かに正しいよ。」
かくして。
気がつけば、探索班は「エステル・ヨシュア・アガット・オリビエ」という不思議なメンバーに変更されたのであった。
自称天才演奏家の言動に不慣れなアガットが、道中散々苦労したというのは・・・また別の話である。
なぜか無駄に長くなって(邪魔になったので)話置き場に。キャラクターが色々と壊れかけてる事は気にしないで下さい。
扱いがアレでも、愛はあるんです・・・!!
そういえば、これって初オールキャラです。しかも2005年書初め。
余談。私ならこの流れならアガット置いてジン&オリビエでいきます(笑)アガットさん、何気に女の子3人それぞれと面識あるし。おのれ美味しいポジション独り占めしおってからに。
それに、最終ダンジョンをビエさん&アガットさんで行くと、楽ッちゃ楽ですがアガットさんはおそらく胃の痛い思いをしてたんじゃないかと勝手に思ってたりします。
けど、そんな苦労話も・・・やっぱりギャグですけど、書けたら良いなーなんておもってます(笑)