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宝箱

*豪華な宝箱には須らく魔獣が入っている*

「でもさ・・・こんな一抱えくらいの宝箱になんで入ってるんだろ。どう考えたって普通入らないよね・・・。」
言いながらも、エステルの視線は豪華な宝箱に注がれている。
平原の道の真ん中にあった、見るからに豪華な・・・・今までの経験上敵が入っていそうな宝箱。
「半分幻みたいだからね。その上なんだか周りから集まってきてるような気がしないでもないし。」
ヨシュアの視線も、その宝箱に注がれている。
「それは言えてるわね・・・。思えばはじめての敵入り宝箱は、飛び猫と植物だったし。ヨシュア倒れちゃうし。」
「ミルヒ街道のアレか・・・。
 敵の数多かった上に何気に強化されてたのに、エステルが飛び猫だからって突っ込んだんだよね?」
琥珀のジト目の先にはエステル。
「・・・・う。あの時は悪かったわ・・・。でも、私を庇って倒れるくらいなら、いっそ退却指示して欲しかったかも。」
「どうせ聞かないくせに。」
「・・・・・・・・・・・。」
あきれられたかのような声と視線が非常に痛い。
このままだと際限なく突っ込まれそうだったので、エステルは話題を戻すことにした。
「・・・で、この宝箱なんだけど。今あけて大丈夫かな?」
「・・・うーん・・・何が出てくるかわからないからね。無理って事は無いと思うけど、用心しておかないと。」
言いながら、ヨシュアはオーブメントのチェックをする。
「体力も導力も一応大丈夫。・・・回復も行けるし、ちょっと怖いけど開けてみよっか。」
「オーケー。エステルは後ろで構えてて。危ないから一応僕が開けるよ。」
抜き身の剣を片手に持ち、ヨシュアが宝箱に近づく。
「オッケー。こっちは準備いいわ。いざとなったらヨシュアは私が守るから、遠慮なく開けなさい。」
同時にエステルも棍を構えた。
ヨシュアが箱を開く。
出てきたのは、・・・・・羊。
あまりの光景にエステルが目を点にしていると、箱から次々と羊が飛び出してきた。
ありす様よりv「羊が一匹、羊が二匹・・・」
「ひ・・・羊が一匹、羊が二匹・・・」
「エステル。何を数えているのかな?」
油断無く剣を構えながらヨシュアがツッコミを入れる。
「・・・あは、つい・・・。」
まったく・・・とぼやきながら、情報クオーツもちのヨシュアが敵を報告する。
「こいつらは、羊じゃなくてヒツジンだね。結構攻撃力あったのは覚えてる?」
「・・・クローネで待ち伏せてたあれか・・・・。」
足場の悪い山道で待ち伏せしていた嫌な敵。
しかも、今目の前には8匹・・・前のように4匹ずつ相手にも出来ないらしい。
「8匹って結構な量ね。範囲でひとまとめにしちゃう?」
「・・・駆動時間稼げれば、ホワイトゲヘナ連発って手もあるけど。」
「わかった。挑発で時間稼ぐからさっさと片付けてね。」
言いながらエステルは一歩前へ出る。
「え、挑発なんてやったら」
「ほらほら!かかってらっしゃい!!」
ヨシュアの声は、挑発の声に掻き消された。
「ちっ・・。」
仕方なくヨシュアはオーブメントを駆動させる。
早く駆動時間が終わる事を願って。追加の気絶がたくさんかかることを考えて。
さもなければ、エステルはヒツジンの集中攻撃をもろに喰らって倒れてしまうから。
視線の先のエステルは、・・・・ヒツジンに目をつけられ攻撃を喰らいながら、アーツの範囲に敵を誘導していた。
動きがヨシュアほどに俊敏ではないため、・・・かなり体力も減ってきているのが見て取れる。
「(早く駆動してくれ!!)」
オーブメントを握り締めて・・・祈る。エステルが傷ついているのに何も出来ない自分が恨めしかった。
「くうっ・・・!」
何度目かの攻撃をエステルが受け流し損ねたところで、アーツの駆動が完了する。
「エステル!!逃げて!!!」
声と共にアーツを発動。
「(消えろ・・・!!!!!)」
ヨシュアの意識を表したかのように、白い奈落が現れた。
白く激しいエネルギーに身を喰らわれるヒツジンの群れ。
エステルの誘導のお陰で、ヒツジンすべてが範囲に入っていたらしい。
威力が二倍となった白い奈落に飲み込まれ・・・魔獣は、一瞬で全滅した。


「けほっ・・ふぅ・・・いい仕事するわねー。」
奈落から外れたところで倒れこんでいたエステルが顔を上げた。
「まさか一撃で片付けるとは思って無かったわ。さすがヨシュアね♪」
ぺたんと足を伸ばして息をつくエステルに、ヨシュアはすたすたと近づく。
そして。
「なんで挑発なんてしたのさ!?」
肩を掴むと、痛んだのかエステルが顔をしかめた。
「・・・ったあ・・何怒ってるの?敵をおびき寄せるのには丁度良かったでしょ?」
「アレだけの数一度に相手にしたら、危険になるのわからない?
 僕だって、半分くらいなら相手できたのに!
 無謀すぎるんだ、エステルは!」
一気にまくし立てるその表情には、とても心配した、と書いてあって。
「いいじゃないの、結果オーライよ。それに、ヨシュアは怪我しなくって済んだわけだし・・・。」
「エステルが怪我するくらいなら、僕が怪我する方がマシだ。」
真摯な瞳に見つめられて、エステルはバツが悪くなって目をそらした。
「・・・・・・そんな顔しないでよ。
 ・・・ごめんね、今度からもうちょっと心配かけないようにするから。」
心なしか頬も赤くなっている。
「そうしてくれると、助かる。」
言って、ヨシュアはエステルの隣に腰を下ろした。
回復すべくオーブメントに手をやると、エステルから静止がかかる。
「回復しない気なの?」
「ううん、平原だし、晴れてるし、折角だから食べ物の方がいいなーって。」
近場に敵は確かに居ない。先ほど巻き込んだ可能性も無きにしも非ず。
「わかった。材料は・・・大体そろってるけど。何にする?」
「んー、ピクニックみたいにジェニスランチってのはどうかしら?」
「了解。ちょっと待っててね。」
言って、ヨシュアは食料入れを検め始めたのだった。


宝箱の中身は命中3のクオーツ。
それは、二人で頑張ったご褒美なのかもしれない。



この話、なんと挿絵つきです。雰囲気やイメージ合ってて幸せ・・・♪
実話に基づくフィクション。ゲーム中で何かやった時に台詞まで想像したりしません?
そういうのは大概短く終わるんですが、今日は地雷@拍手用に書いてたら長くなってしまって・・・。
しかし、ゲーム中だとこれって楽勝パターンですねえ。実際はもっとボロボロでしたから・・・・。
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