明日はシェラザードが座学のまとめをやると言っていたので、一応のおさらいである。大体頭に入ってはいるが、こういう事はやっておいて間違いは無い。
テキストを開いてふと顔を上げると、斜向かいでは、エステルがぐだっと棒の手入れをしていた。
おさらいが必要なのは、自分もさることながらエステルの方だとは思うのだが、エステルは明日の事など解っているのか居ないのか、のんびりと棒を磨いている。
……大丈夫なんだろうか、これ。
少し心配になる出来だった。
「ねえ、エステル?」
「んー?」
上の空な返事が返ってくる。
「明日は今までの復習でテストするってシェラさんが言ってたけど。
エステル、実技はともかく座学の方は大丈夫なの?」
問うと、うんーと間延びした声が応えた。
「大丈夫よ、きっと。今までそこまでしくじった事」
「あるよね?」
間髪いれずに突っ込むと、エステルはむぐっと詰まった。
「あるけど……多分……大丈夫よ。セピスとか、クオーツとか、一応覚えてるし。」
ね、大丈夫でしょ?と言いたげな声は、自信のなさを如実に表している。
「今回は規約とか法律とかだったと思うけど。」
「それは、その。」
「ちゃんと覚えてる?」
畳み掛けるように聞くと、うぐ、と変な声が聞えてきた。
五秒経過。
「やっぱりちょっとおさらいする!ヨシュア、付き合って!」
がばっとこちらを振り返ったエステルへの感想は、言わんこっちゃない、が半分だ。
「はいはい。」
肩をすくめて見せるが、一緒に小さな笑いも出てしまった。
残りの半分は間に合ってよかったかなという安心感。
そして、正直な自称姉への少しの優越感だった。
ヨシュエスはやっぱりこういう平和なやり取りが良いです可愛いです好きです。