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ほえほえ鳥の真実

ここは、海の白鷺・・・プラネトス2世号の中。
レクト島から戻ってきたフォルトとウーナは、留守番組に島での出来事を報告していた。
その手の中には新しく手に入れた共鳴石。その心にはレオーネが伝えようとしていた想いとでも言うべきもの。
収穫はたくさんあった。
とはいえ、しんみりとした雰囲気が過ぎると、お土産話に流れるのは世の摂理である。フォルトとウーナもにこやかに島での出来事を報告していた。
「あの島に、囚人さんたちの日記が結構残されてたんですよ。」
「レオーネの事も書いてあったの。
 ・・・だけど、ちょっと怖かったかも。」
「どんな事が書いてあったんだ?」
興味津々、といった顔でアヴィンが身を乗り出す。
怖いものが苦手なくせに怖い物好きなのか・・・普段一緒に居る身をしては、物好きだと思う。昔、怖い話を聞く度に、マイルのマントをさりげなく握っていた事は、きっと記憶の片隅にもないに違いない。
「んっとねえ。女神像を毎日毎日彫り続けた・・・とか。」
「今日も昨日もきっと明日も殴られる・・・とか。」
語られるものはとてもではないが気味のいいものではない。
「気味が悪いというか・・・暗いね。」
思わず顔が険しくなる。
隣の相方は、既に身を引いていた。
「うん。ちょっと気味が悪かった。オバケ出てきたし。」
「そ、そうなのか・・・。」
マントが微妙に引っ張られる感覚。ほらみろ、と思うが・・・気づかないフリをしてやるのが友情というものだろう。
「・・・だけど、レオーネのことが書いてある日記は少しだけ明るかったんです。」
フォルトが嬉しそうに言う。
うんうん、とウーナもにっこりと微笑んだ。
「ほえほえ鳥の鳴き真似をしたら、景気のいい曲を弾いてくれたんだって。
 あんな所でも、音楽の力ってあるものなのね。」
「うん。同じ音楽をやってる人間として嬉しい。」
ね、と微笑みあう二人。音楽をやっててよかった、とその表情が雄弁に語っている。
しかし。
「ほえほえ鳥・・・?」
「どこかで聞いたような・・・。」
マイルとアヴィンは、思わず顔を見合わせてしまった。
その様子を見てフォルトは不思議そうに首をかしげる。
「どうしたんですか、二人とも?」
「いや、ちょっとその、ほえほえ鳥ってのが気になってだな。」
「どんな鳥なの?」
あぁ、とフォルトとウーナは納得したように笑った。


「結構どこにでも居るけど、数は少なくて。綺麗な鳥ですよ。ほえほえーって鳴くんです。」
フォルトはほぇほぇ〜と鳴き真似をしてみせる。
「コレくらいの大きさで。羽はこのあたりじゃお守りにもなってるんですよ。ピンクと白で。」
ウーナが少し手を広げてみせる。
「あ、僕持ってる。前にウーナがくれたよね。」
フォルトが胸のポケットを探る。
「あったあった。」
取り出した羽は、少し光沢があって、薄紅と白の美しいグラデーションを描いていた。
「あ、フォルちゃん持っててくれたんだ・・・。」
少し頬を染めて嬉しそうなウーナをよそに。
アヴィンを見ると、羽に視線を注いだまま・・・思ったとおり固まっていた。
というより、自分も固まりたかった。

その羽に、見覚えがあったから。

初めて見たのは、バロアで・・・アイメルと再会した後に町の散策をしていた時。
道端の怪しげな行商人の商品ラインナップに入っていたのだ。
アヴィンが今も片耳につけている絆の耳飾はそこで買ったもの・・・もう片方はアイメルが付けているはずである。
しかし、それ以外は、どう見ても・・・どう見てもインチキな品としか思えないものしかなかったのだ。
時を越える水晶玉・・・見てると眠くなるだけと思われる。
天然ボケの杖・・・天然ボケ素材という謎のブツで作られた杖。
賢者のローブ・・・アイメルには果たして見えてたのかどうか。
あと一つに関しては、名前そのままのものだったのだが・・・。
・・・そういえばアヴィンってばアイメルに睨まれて慌ててたよなあ・・・。
ふっと思い出すあの時の相方の表情。
慌てていたが、どこか幸せそうだったのを思い出す。
そして、そんな幸せな記憶の中に一緒に収められた・・・ほえほえ鳥の羽。
あの商人は「誰も見たことのない幻の鳥の羽」と言っていたが・・・誰も見たことがないのならインチキだろうとその時は断じたのだが・・・まさかこんな所で再会する事になろうとは。

「・・・ほえほえ鳥って・・・実在したんだな・・・。」
アヴィンは固まったままぼそっと呟く。
「・・・・・僕、てっきりインチキだと思ってたよ・・・。」
マイルもアヴィンにだけ聴こえるように呟く。
なぜだろう。遠い目をしなくてはならないような気がするのは。
「俺もだ・・・。でも、確かにこんな羽だったよな。」
「うん。確かに見た目は綺麗だったしね。」

不思議そうな顔をするフォルトとウーナに「なんでもない」と手を振って。
二人の心は一つだった。
『世の中はマダマダわからない。』・・・と。



拍手用のつもりが、長くなったのでこちらに。初5話です。
「ほえほえ鳥って・・・・実在してたのかああああ!!!!」
と、5やってて思ったんですよ。レクト島の第一の思い出がそれ。きっとアヴィンとマイルも同じ事を考えたと思います。
レクト島にはアヴィンとマイルは上陸しませんが、もしも上陸してたら間違いなく「居たのかアレ」って話になったと信じて疑わない私。そりゃ、フォルトたちと合流する前に見たってこともありえますけどね。
ほえほえ鳥の設定は完全にオリジナルで適当です。WIN4でも羽の形状は教えてくれなかったし・・・きっと綺麗だったとは思いますけど。売り物になるくらいですし。
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