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悲しみは癒してあげたい

明日は天気になりそうな、そんな真っ赤な夕焼けが辺りを包んでいる。
そして、彼の友人は、その夕日を眺めながら黙りこくっていた。

これでも、出逢った頃よりは格段に笑うようになっていた。
暗い顔をしていた時間が長かった割に、蓋を開けてみたらかなり活発だったらしく、よくレミュラス爺さんに雷を食らっている。マイルにとばっちりが来たのも一度や二度ではない・・・が、もうそんなのもマイルにしてみれば慣れっこだ。それに、二人揃って怒られた後は、大概アヴィンはマイルに謝ってくるので、あまり怒る気にもならない。
そして、色々な方向に後腐れなく、また勉強をサボったり掃除をサボったりするのである。いたずらやサボりが自分の仕事だとでも言うように。

それでも・・・そんな風に無闇やたらと元気のいいアヴィンでも、沈んでいる時はある。丁度こんな夕焼けの時がそうだ。
「アヴィン。」
「・・・・・・?」
声を掛けると、我に返ったようにこちらを向く。
「また、アイメルのこと思い出してた?」
「・・・・・うん、ちょっとな。」
そう言って、また夕焼けに見入ってしまう。
「髪の色が夕焼けの色、だったっけ。」
「ああ。綺麗な赤い髪だった。」
それきりまた黙ってしまう。
マイルは小さくため息をついた。
間違いなく、今のアヴィンの頭の中には妹の事しかない。
夕日を見るたびに、生き別れの妹を思い出しているのだと。
・・・さすがに友達付き合いする事2年も経てば把握できた。
妹の名前はアイメルで、真っ赤な夕焼け色の髪と森の緑色の瞳をしていて、天使のように可愛くて、アヴィンの二個下で、優しくて可愛くて天使のような・・・
何度も聴いただけにもう覚えている。そして、聴けば聴くほど、どういう子なのかが気になる。
それに、妹が居る、ってどういうものなのか。・・・今この状態は、弟が居るような感じがしないでもない。だが、弟のような友人は、こういうときは妹思いの兄で、やっぱり弟とは少し違う。
『でも、俺は・・・守れなかった。大切な妹なのに。』
そう言って歯を食いしばっていたのはいつだっただろう。そんな姿は一度しか見ていないが、目に焼きついていて・・・今でもそんな思いを持っていることくらい、容易に見当が付いた。
夕日を見るたびに沈んでいるのだから、当然といえば当然なのだが。

結局二人でぼんやり夕日を眺めていて・・・気が付いたら、夕日は大地に沈んでいた。
「いつか・・・必ず、迎えに行くんだ。」
少しずつ紫に変わる山の端を見ながら、アヴィンはぽつんと呟いた。
「・・・うん、そうだね。」
そう、頷く。

だから、こっそりと決めたことがあった。
自分に協力できることがあれば、協力する。
せめて、アヴィンが夕日を見るたびに沈んだ顔をする必要がなくなるまで。
彼は大切な友達だから。



基本中の基本。
マイルってきっと「アヴィンてほっとけない」と思っているに違いないと常々。気分は保護者。でも親友。
友達だから、悲しみは癒してあげたいし、できることならなんだってしてやりたい。そんな感じのマイル君が大好きです。
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