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面影

金色の長い髪が、ふわりと光に舞う。
彼はそれをぼんやりと見つめていた。視線に気づいたらしいティナが振り返る。
「・・・あの、どうか?」
彼・・・セシルは、あわてて首を振った。
「え、あ、いや・・・ごめん、なんでもないよ。」
ティナが小首をかしげる。
「そう、ですか?あの、何か悩み事が」
「ううん、そういうんじゃないんだ」
あいまいに微笑むセシルの首に、後ろからがっちりと腕がまわされた。
「いーや、絶対なんかあるな!」
少し細い腕と少し高い声。これはジタンのものだろう。
「ああ、間違いなくあるよな!」
頭のほうにはそれより少し太い腕がまわされた。こちらはバッツに違いない。
そして、気がつけば目の前にずいっと指が突きつけられていた。
「ずばり、セシルはティナに見とれてた!違うッスか?」
「・・・・ティーダ・・・・」
「なんだ?ティナに惚れたのか?」
無遠慮かつデリカシー無しのバッツの言葉に、がくりとセシルの肩から力が抜ける。抜けた先に、困ったような表情のティナが見えた。
「いや、ええと。・・・そういうわけじゃないんだ。
 ただ、少し・・・ローザのこと思い出してね。・・・ごめん、勝手に重ねてしまって。」
素直に白状して謝ると、ティナは小さく微笑んで首を振った。
「いえ。・・・大事な方なんですね。」
セシルは頷いて目をかすかに伏せた。
「うん、僕の奥さんなんだ。・・・なんか、やわらかい金髪が少し君に似てる。」
まぶたの裏に映るローザは、はかなげな美人の顔をしているのに優しくて・・・とても芯の強い女性だった。そういうところも、ティナに少し似ている気がする。
しかし、再びまぶたを開けると、場の空気は凍り付いていた。
「・・・・どうしたんだい?」
聞けば、各人はそれぞれに口を開いた。
「・・・いや・・・初耳だったからさ。」
「・・・意外ッス。」
「奥さん、いらっしゃったんですね・・・。」
すべては口ごもりながら、だったのだが。
「それにさ、・・・セシル、今ものすっごく蕩けそうな顔してたし。」
そんな言葉に顔が高潮するのがわかる。
「え、・・・そうかい?・・・参ったな、はははは・・・。」
適当に笑えば、バッツの腕がセシルの首に絡まった。
「何だよその幸せそうな顔は!」
うりゃあああ!と締め付けられる。
「わ、わ、ちょっと、勘弁してくれよ。降参、降参!」
ばたばたと二人取っ組み合い、それをティナが驚いたように眺めている。
その脇でジタンがため息をついた。
「・・・あーあ、俺も愛しのダガーちゃんに逢いたいぜ。」
ティーダも一緒になって頷く。
「なんかその気持ちわかるな。・・・あーあ、ユウナ元気にしてるかな。」
ジタンはティーダのほうを見上げた。
「その辺は今は信じるだけだろ。」
「わかってるさ。でも、心配っていうか・・・いや、俺なんかよりよっぽどしっかりしたとこあるんだけど、だからこう・・・」
「あー・・・なんかわかる気がするな。ダガーもそういうトコあるし。」
無茶してないと良いけどな。
つぶやいた言葉は、どちらからともなく重なった。
「やっぱりか。」
「まあなあ・・・」
顔を見合わせる。想う相手は違っても、お互い同じことを考えているのはよくわかった。苦笑いとため息が揃う。それと同時に、目の前にぬっと影が差した。
「なーに暗くなってんだよ!」
二人が顔を上げれば、いつの間にやらじゃれていた二人とティナが前に立っていた。困ったように微笑む二人と、騒々しい約一名。ジタンが、騒々しい邪魔者ことバッツにぶーたれる。
「俺だってたまにはちょーっと浸りたくなることくらいあるんだよ。
 それに、たまにこういう影のある男にレディは惹かれるものなんだぜ?」
「『愛しのダガーちゃん』はどうしたんだよ。声かけるなら一人にしとけっての。」
そんな言葉にジタンは余裕の表情をして見せた。
「それとこれとは別だ。レディに声をかけるのも、大切にするのも世界の常識だろう?」
きっぱり言い切ると、ティーダが吹き出した。
「どこの世界だよ!!」
「・・・・くすっ・・・・ふふふっ・・・」
ティナも笑い出す。
「あ、笑った。」
「笑顔も素敵だぜ、レディ。俺の言葉にシビれたかい?」
ジタンが見上げれば、ティナは笑いながら首を横に振った。
「・・・・ううん・・・だけど・・・ふふふふっ・・・
 あのね、私の・・・仲間に、あなたと全く同じこと言ってた人が居てね。・・・思い出したの。」
「へぇ。ティナのところにも、ジタンみたいな奴が居たんだな。」
「うん、その人は王様なのに、上はおばあちゃんから下は小さい子どもにまで声かけててね。」
ティナが言えば、ティーダがため息をつく。
「ストライクゾーンが広い人なんだな・・・・」
「ティーダ、なんでそこで俺を見るんだ?」
ジタンのほうに行ったティーダの視線は、当人の不愉快そうな視線に押し戻される。
「いや、だって・・・」
さまようティーダの視線はセシルにたどり着き、セシルも苦笑いでそれに応えた。
「そんな奴が一緒なら、旅も楽しかったんだろうな。」
バッツが言えば、ティナも笑って頷く。
「・・・・うん。大変だったけど・・・みんな一緒で、・・・ふふっ・・・楽しかった・・・」
小さな笑いと一緒に、きらりと零れるもの。
「あ、」
ジタンが駆け寄るより、ティーダが手を伸ばすより先。
「そっか。いい仲間だったんだな。」
ひょい、とバッツの手がティナの頭にのった。
「泣くなって。絶対また帰れるさ。その為に俺たちは旅してるんだしな。」
「・・・うん。・・・大丈夫、なんか懐かしくって、それだけなの・・・・ありがとう。」
笑っていたはずなのに、涙はあふれる一方だ。ティナは、右手を目に当てる。
「ティナ。」
今度は別所からハンカチが差し出された。
「僕ので悪いけど・・・ほら、拭いて。」
セシルが差し出したそれを、ティナは小さく微笑んで受け取った。
「・・・すみません。ありがとうございます。」
「ううん、いいんだ。
 ・・・大丈夫だよ。だから、一緒にがんばろう。」
セシルは、ティナを勇気付けるように笑顔を見せる。
「・・・はい。」
涙をぬぐったハンカチを返して、ティナも同じように柔らかく笑った。
「お、いい顔。」
ティーダがそれを覗き込んで破顔する。
「ティナはそんな顔してるほうがいいな。」
ジタンもそう言って手を差し出す。
ティナがそれにおずおず手を伸ばすと、その手がぎゅっと握られた。
「明るく行こうぜ。俺たちは一人じゃない。きっと帰る所に帰れる。そうだろ?」
「・・・あ・・・。」
上から、もうひとつ手が重ねられた。
「そうだね。今は、そう信じよう?」
「大丈夫、何とかなるって。」
さらにもうひとつ。
「そうそう!信じること、これ、旅の鉄則!」
五つの手が重なる。
「今は前に進もう。」
「そうそう。がんばろうな!」
「おーっ!」
重なった手が一押しされて、離れる。見回した5人の表情は明るい笑い顔だった。

「まあ、泣きたくなったらさ、レディに胸を貸す準備はいつでもできてるぜ。」
どーんと飛び込んできな、と、ジタンは片手で自分の胸を指す。
「なーにキザな事言ってるんだよ!」
どんっっとジタンの頭にバッツの腕が落ちる。
「こら、レディとの語らいを邪魔するなっ。」
「ほんっと、よくそんな台詞がさらさらと出てくるよな。」
ティーダも別の方向に感心したらしい。半ば呆れ顔ではあるのだが。
「ホント、すごいよね。」
セシルはそれにくすくす笑いながら頷いている。
渦中のティナは、そんな彼らを懐かしそうに見ながら微笑んだ。
・・・・大丈夫、まだ、がんばれる。・・・ううん、がんばりたい。
小さな想いとも呟きともとれないそれは、不思議な世界の不思議な色の空に、溶けていったのだった。


旅の合間もこいつらきっと楽しかったんだとおもうんだ・・・!それに、話はシリアスになってはいるけど、SIになったら全員揃ってるしね!(笑)
ディシディアFFをやってて、うっかり妄想してしまったもの。だって、ティナってばものすごくみんなのお姫様だったんだもん・・・(汗)
ジタンとダガー、ティーダとユウナ、セシルとローザはさすがに動かないんだろうな、て思ってこんな感じ。バッツやティナは、天然でフラグたててるのに、自分ではそれに気づかずついでに鈍く、結局最後まで誰とも進展なかったようなイメージで書いてます一応。
視点固定で書くようにしてたけど、面倒だったから視点色々ずらしてみました。これはこれでわいわいしてて、書いてるほうは楽しいんですけど、読みにくかったらごめんなさい。ちなみに私、ティナはどっちかって言えば緑髪好きです。
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