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注意一秒

「・・・・チュッ」
その瞬間、その場にいた3名中約2名の時間が止まった。

キャー!なんて、年頃の娘さんのようでありつつもとっても野太い悲鳴は、風に乗って小さく聞こえてくるBGM程度にしか聞こえてこない。その悲鳴の主であるところの身長178CMのオカマに唇を奪われた葉佩は、そのままの体勢で石化していた。つついたら崩壊の危険もありそうな体である。
たっぷり1分は固まっていただろうか。
ギギギ・・・と音を立てるようにして、連れの居る方に体を向ける。その死んだ魚以上に死んだ目と、感情崩壊を起こしかけているような表情に、連れ、こと皆守は思わず一歩後ずさった。
「お、俺は見なかった。何も見なかったからな。」
そんな言葉が半分本能で口をついて出てきた。ある意味同情は出来無い事はないが、この状態の人間には間違っても係わり合いになりたくはない。友人とはいえ、直視するのも恐ろしくて思わず目をそらす。
一瞬の不注意。
それが命取りだった。

<・・・残虐シーンにつき割愛させていただきます・・・>

5秒ほど後。
口に残るのは、吸っていたアロマの香りと、先ほど足された悪趣味なまでに強烈なバラの匂い。触れていたのは1秒以下だったのにしつこい事この上ない。真剣に吐き気を覚えつつ、皆守はとりあえず4秒ほど前に蹴倒した元友人を怒鳴りつけた。
「何の真似だ!」
蹴倒された元友人こと葉佩もどうやら負けては居ないようだった。
「一人無関係そーな顔しやがって!お前も苦しめ!」
蹴られた頭を押さえつつ、涙目で怒鳴り返す。
「俺まで巻き込むなっ!」
「薄情者!お前友達の危機を救ってやろうとか思えよ!」
「誰が友達だ!」
怒鳴りあって息切れして、気がついた。
葉佩の口に、赤い何かが・・・血ではなさそうな何かが丁度唇の形にくっ付いている事に。
「・・・・・お前、白岐のとこ行く前に、顔洗ったほうがいいぞ。その、なんだ・・・付いてる。口。」
さすがにその物の名称を言うのはなんとなく気が引けた。
「?」
葉佩が、口をぬぐう。そして、ぬぐった袖についたものを見て・・・再度固まった。
「コレ・・・ま、さ・・・か・・・」
魂がどこかに行ってしまったらしい。がたりとくずおれる。
「落ち込んでないでさっさと行って来い」
ひょい、と側によると、葉佩は涙目でこちらを見上げた。
・・・が、その涙がすーっとひいていく。かわりに浮かぶのは、ニヤリとしたちいさな笑い。
「・・・お前も、ついてる。」
「!?」
慌てて口をぬぐうと、葉佩の口についていたのと同じ色が袖に移った。
「ザマみやが」
その口が言いたい事を全て言う前に、200%以上の実力を発揮して、皆守は葉佩を蹴り飛ばしたのだった。

その後。
お互いに嫌味と悪口と暴力を取り混ぜつつ目的地に向うという暴挙を犯した結果、時計台で再会した白岐に「随分とボロボロだけど・・・大丈夫なの?」と逆に心配されてしまったりしたのだが・・・

・・・・・・それもまた、青春の1ページである。


「畜生、俺、初めてだったのに・・・!!」(葉佩談)


注意一秒トラウマ一生?初手からグロテスクな表現多くてすみません。てか、野郎同士のキスシーン書いたのはさすがに初めてでした。
えーと・・・・日記でなんとなく落書きしたのをずうずうしくもUP。
九龍妖魔学園紀から。9話の時計台前のイベントを思い切り改変ていうかパラレル、多分。でも一度やってみたい、そんな妄想。
オカマこと朱堂ちゃんは、実は仲間だし、私としては結構好き。キスしたいとはさすがに思わないけど多分仲悪くは無いと思う。 皆守と、くろすけこと葉佩九龍の関係ってよくわからんのですが、願望としてはこんな感じかなあ。喧嘩して仲直りできる程度には仲良し。これって結構貴重な友達ではないかしら。
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