お題:元気になあれ   水無月 アイカ さま

「アガットさん・・・・・・」
暗い闇。
震えそうに怖い。
暗いのは、大嫌い。
だって、怖い・・・・・・
でも、今は。
「えっと・・・・・・懐中電灯・・・・・・」
ごそごそとできるだけ静かに、その辺りを手で探る。
近くのベッドには、青年が眠っていた。
彼の額に、緑色のハチマキが除けられ、彼女が乗せたタオルが乗っていた。
苦しそうなその下の表情。
隣りに立てかけてある、大きな剣。
もう、この人がこれを持っている姿は見られないんじゃないか・・・・・・考えただけでぞっとする。
「・・・アガットさん・・・・・・」
怖い。
怖い。
怖い。
怖い。
暗闇。
真っ暗なそこ。
わずかな明かりで、ぼんやり光る。
彼の赤い髪を、そっと撫でた。
「アガットさん・・・・・・早く、元気になってください・・・・・・」
あたたかい彼。
もっとお話、したい。
アガットさんがいないと、私・・・・・・
ジンさんには悪いけど、怖かった。
鍾乳洞での、神秘的なヒカリ。
魔獣でもちょこちょことあるいて、可愛げがあるペングーたち。
普通なら、ほっとするようなそこ。
でも、アガットさんがいないだけで、体中から汗が出て、怖くて、震えた。
ジンさんじゃ、駄目だった。
怖かった。
アガットさんがいないから。
ひとりでも大丈夫な場所なのに。
でも、アガットさんが死んじゃうかもしれない、その気持ちが私を不安にさせた。
お腹の底辺りに、もやもやとしたなにかが広がった。
「アガットさん・・・・・お願い・・・・・・起きてくださいっ・・・・・・」
彼が答えることは、なかった。

水無月 アイカ様>>>空の下の白い宿




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