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アシュトンとプリシスの場合(SO2)
「アーシュートーン!」
声のする方を振り向けば、プリシスが息せき切ってこちらにかけてくるところだった。
「どうしたんだい、プリシス。」
「ん、えっとね。時間あるなら一緒に買物でもどーかなって思ってさ。」
肩の上にひょいっと無人君を乗せて、プリシスははじけそうな笑顔でこちらを見上げた。
「え・・・あ、うん、よろこんで!」
その笑顔にはかなわない。アシュトンも笑いかける。
ここ最近、プリシスはこうやって笑いかけてくれることが多くなった。前みたいにそっけなくない。前みたいに「あとで!」なんてこともない。正直言わなくても、これはとても嬉しい事だった。
「どこ行こっか?アシュトンは何か用事あった?」
「ん、まだ武器見てないから見てこようかなって思ってたんだけど。」
「わかった、んじゃ、付き合うよ。」
ぺたん、と横にならんで一緒に歩き出す。距離が近い。前よりはるかに。アシュトンのことを聞いてくれるようになった。前からすれば、嘘みたいだ。
・・・プリシス、僕のこと・・・
好きになってくれたのかな、なんて、甘い妄想がよぎったところで、横合いから声が掛かった。
「ね、アシュトン。」
「何、プリシス。」
見下ろせば、ちょっと照れたような顔で片手を差し出される。瞬間的に顔と頭に血が上った。
・・・ええと、これは、これはもしかして・・・!!
   いやでも、もしかしたら違うかもしれないし、違ったらものすごく恥ずかし・・・ああでも・・・!!
なるようになれ!と目をつぶる。差し出された手を、ぎゅっと握ると、プリシスは顔を赤くして、幸せそうに微笑んだ。あまりに可愛くて、見惚れてしまう。
「えへへ・・・いこ。」
「・・・うん。」
意識を戻して、ゆっくり前に。ぎゅっと握った手が、なんだか柔らかくて気持ちがいい。いや、それ以上に、今この状態が幸せすぎて、何が何やら。とりあえずは気が遠くなりそうだ。
・・・神様、夢でも夢じゃなくてもいいですから、この時間がもうちょっと続きますように!
心の底からそう思う。それと、もう一つ、勇気を出して大決心。
・・・今度は、僕から誘うんだ。
前に視線を戻す。目的地は、まだもうちょっと先のようだった。

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