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カシウスさんとレナさんの場合。

木陰は、彼女にとっても彼女の娘にとってもお気に入りの場所だった。
一緒に手遊びをしてみたり、昼食をそこで取ってみたり、絵本を読んでみたり。

・・・腕に軽い衝撃が来た。
そちらを見れば、案の定エステルが眠りこけている。
「あらあら・・・仕方ないわね。」
少し肩をすくめたレナの手元には開いた絵本があった。一緒に絵本を読んでいたはずなのに、睡魔は絵本の終わりまで待ってはくれなかったらしい。
絵本を閉じて、脇に置く。体勢をずらしてエステルをそっと膝枕すると、エステルは何事か呟いて丸くなった。別に寝かしつけるつもりはなかったのだが、安心しきった我が子の寝顔はそれだけで心を和ませてくれる。
もう少し眠りが深くなったらベッドに運ぶことにして、レナはエステルの髪を優しく撫でた。
背中を気持ち木の幹に預けると、樹の鼓動が聞こえてくる。

・・・・・・・・

ふと気がつけば、自分の頭はしっかりした肩に預けられていた。肩にも手が回っている。感触に覚えがあった。絶対の安心をくれる人のものだ。
「・・・・・・・あなた。」
薄く開けた目に映るのは、長い脚の上で絵本をめくっている大きな手。周囲の明るさからすると、ありがたいことにそんなに時間は経っていないらしい。
「ん。起きたのか。」
少し低い声は、聴き慣れたカシウスのものだ。
「ええ・・・ありがとう。」
「どういたしまして。エステルならまだ寝てるぞ。」
「そう。ベッドに運んであげないと風邪ひいちゃうわね。」
身を起こす前に、カシウスのほうを向けば、軽いキスが落ちてきた。
「エステルは俺が運ぶよ。だから、もう少し休むといい。」
疲れてるんだろう?というのが、言葉の隙間から聞こえてきた。
肩に回されている手は全然緩んでいない。声の真面目さからするに、頷かない限りきっと放してはくれないのだろう。
だから、その気持ちは素直に受け取る事にした。
「・・・・・・ありがとう。」
言うと、腕が緩む。カシウスは立ち上がると、エステルを抱えて家の方に戻っていった。
脚と腕と背を思い切り伸ばす。新しい空気が体に入ってきた気がした。
深呼吸、一つ、二つ。そうしてまた木の幹に背中を預ける。
眠るためではなく、戻ってくるカシウスを待つために。

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