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ジンさんとオリビエさんの場合

それは、ちょっとした休憩中のこと。
「あー・・・やれやれ。」
ジンはあぐらをかいて背を伸ばした。
「ジン、そっちに行ってもいいかい?」
オリビエがこちらに声を掛ける。
「ああ、いいぞ。」
返事をすると、オリビエはひょいとジンの傍に腰をおろした。
「やれやれ、だねえ。まったく最近の魔物ときたら・・・」
「はっはは、確かにさっきのはお前さんに集中攻撃だったな。」
先ほどの戦闘で、なぜか集中攻撃を喰らったオリビエは、銃を構える間もなく逃げ回る羽目になっていた。
「だろう?か弱いボクになんてことだ。おかげで足が棒のようだよ。」
「そうか、俺はあの無駄な動きはてっきり鍛錬の一種かと思っていたぞ。」
ジンから見れば、余裕でバラを片手に飛び回っていたようにしか見えなかったのだが。
「そりゃあだって、戦闘だって華がないとつまらないだろう?」
「・・・・・・そういうところは、ある意味尊敬できるがな。」
あきれ50%のジンを他所に、オリビエは、ふ、と遠い目をして見せた。
「いついかなる時も優雅さを忘れない・・・それがボクのポリシーでね・・・」
例えば、初対面の女性はとりあえず口説いてみるとか、いついかなる時でも懐にはバラとか、戦闘中でも物腰はあくまで優雅にそれでいて華麗に、そう、蝶のように舞い蜂のように刺すように・・・・
「それで疲れきってちゃ世話ないな。」
「ふ、多少のことは美の前ではたいしたことではないのさ。美、それはすなわち愛。愛こそこの世で一番尊く・・・」
多分計算したのであろう身振りと手振りで、いつのまにか立ち上がってまで熱演をふるってみせる。
「そんなに動くと休憩にならんぞ。」
パタパタと手を振ると、オリビエはカラっと笑った。
「ま、ジンの言うとおりだね。」
力を抜いてもう一度、座りかけたところで、オリビエは草で足を滑らせた。
「うわ!?」
優雅さも何もなく、仰向けに倒れる。
「おっと。大丈夫か?」
とりあえずジンは、自分の足の上のオリビエに声を掛けてみた。
「・・・・大丈夫だよ。なんというか、・・・ジンこそ大丈夫かい?」
オリビエもそのままの体勢でジンに答える。
「ああ。まあ・・・頭打たなくて良かったな。」
「ああ。ひざに命中しなくて良かったよ。ふむ、これならある意味快適だ。」
そう言うと、少し体をずらす。どうやら、居心地のいいポイントに移動したらしい。
「おいおい・・・俺は男をひざまくらする趣味はないぞ?」
ため息をつくと。オリビエは楽しそうに笑った。
「まあまあ。それともここは誰かの指定席かい?」
「いや、それはない。」
言いつつも、ジンの脳裏に約一名顔が浮かびかける。
しかし、自分が膝枕をするところを想像しても、されるところを想像しても、世界の終わりより確実に恐ろしかった。はっきり言うなら、自分にそんな根性はないし、そこまで命知らずにはなれない。実は、それを実行に移した猛者を約一名知ってはいるのだが、実行に移せる時点で多分彼は色々超越していたに違いないと今でも思う。
「・・・うん、絶対にない。」
あの日ちらっと見てしまったその光景を思い出して、頭を振る。あれは、癒しというより恐怖体験ではなかったのだろうか。
「ならいいじゃないか。」
完全にのんびりする体勢に入ったらしい。オリビエはそのまま足を伸ばす。
「あまりよくも無いような気がするが・・・・・まあいいか。」
「うんうん。やっぱりジンは心が広いねえ。」
「別に騒ぐほどの事でもないからな。まあ、疲れてたんだろう?精々休んどけ。」
適当に足を伸ばす。
「ありがとう。そうさせてもらうよ。・・・・ふぅ・・・」
オリビエも少し背を伸ばしてひざの上に転がった。まったくもってマイペースである。
「ま、お互い様か。」
上を見上げると、空にはわた雲が休憩しているように浮かんでいたのだった。

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