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背比べ

ヨシュア・エステル(断片)
きっと再会後。

「・・・・ほんっと長かったわ・・・
 手配もしたのに全然捕まらないし、足取りもわからないし!」
もう逃がさない、とばかり、むき出しの腕を掴んでエステルが思い切りぼやいた。
「それは・・・・一応、見つからないようにはしてたし・・・」
自分としては甘かった部分も残ってはいたとは思うが、それでも気をつけられる部分は気をつけていた、と思う。
自分に関する情報は、それなりに収集していた。エステルがどこにいるのか、どこに行ったら捕まるか、どういう手配が出されていたか、などはポイントである。
「それに、エステル。」
「あによ?」
「手配内容、あれはあんまりだと思う。」
そう、ギルドに出されていた手配の内容は、ヨシュアにとっては顔を引きつらせたあとに頭痛を催しても全然おかしくない内容だった。
「アレ以上の手配なんて無いはずよ?」
エステルは、むっとした顔でヨシュアをみる。
「『黒髪で短髪、琥珀の瞳、細身。武器はツインエッジ。時属性アーツを得意とする・・・』」
それにかぶせてヨシュアが続ける。
「『小柄で、身長は163でエステルと同じくらい、女装が特技で、女姿でまぎれている可能性もある』で、旅に出る前の写真つき。」
「私としては、『薄情者』とかも入れたかったんだけど、主観だっていってはねられちゃったのよね。」
「あ、あのねえ・・・」
その言葉による頭痛をこらえつつ、ヨシュアはエステルを見やった。
「『女装が特技で女姿でまぎれている可能性も』って?」
「事実でしょ。似合ってたわよ、セシリア姫。」
その言葉にヨシュアはぐっとつまった。しかし、気を取り直してエステルを睨む。
「背だって、僕のほうが高いだろ。」
「変わらないでしょ。」
相変わらず、何を当然、といった雰囲気でエステルはヨシュアを見上げる。
「じゃ、今僕が君を見下ろしてる気がするのは?」
今度はエステルが詰まる番だった。
「・・・・・・・・お・・・大きくなったわねぇ、ヨシュア。
 お姉さんびっくりしちゃうわ。」
目をそらすエステルにぼそりとつぶやく。
「旅に出る前から僕のほうが高かったんだけど。」
「低かったわよ。」
憮然としてエステルが言う。
「高かった。」
事実は事実、とばかりにヨシュアが言い切る。
「私が低かったって言ってるんだから低かったのよ。」
「それこそエステルの主観だろ。事実は事実、僕のほうが高かった。」
ヨシュアの視線がエステルの瞳に行く。
「それはヨシュアの思い込みでしょ。ぜーったい低かった。」
エステルも同じく睨み返した。
「高かった。」
「低かった。」
「高かった。」
「低かった。」
しばしお互いにむくれて・・・さらににらみ合う。
「どう考えても僕のほうが高かった。」
「私の方が高かったわよ。」
そしてまた口論は繰り返される。


「・・・・何時まで続けるのかなあ、あの二人・・・」
「さぁ・・・・気が済むまでやらせておけばいいんじゃないか?」
「そうだねぇ。」
離れたところから観察していた仲間の声は、もちろんエステルたちに届く事はなかったのだった。
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