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そっと目をそらしたいもの
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遠いメロディ
エステル
<ネタバレ注意>FCED直後。城の一室、エステルはハーモニカを見つめていた...
日記でのキリ番リクエストに応えてみました。
「ED後でエステルとヨシュア」・・・のはずが、エステルオンリー。
2NDの冒頭でどれくらいの事が語られるかわからない上に、EDムービーがあれでしたから、どこら辺まで書いていいのか判らなかった一品。具体的なお話期待されてたかな・・・と思ったのですが・・・力不足でごめんなさい(^^;
しかも、書いてると自分の意見とエステルの感情がごっちゃになっていくという・・・シンクロしすぎです自分。
時期は、さよならの直後。まだお城にいるんじゃないかな、くらいの時期です。
なお、書きながら、「なんでこんなにおとめちっくなんだーーーー」と叫びそうになったのは秘密という方向で。
でもこれって、ED直後じゃないとかけない文章だよな・・・。
『・・・さよなら、エステル。』
意識を無くす前、最後に聞いたヨシュアの声が頭にまだ残ってた。
らしくないのは判ってる。
だけど、目が覚めてから一日・・・私はずっと泣いていた。
「らしくないとか思わないで、こういう時くらい泣きなさい。」
そう言うシェラ姉に抱きしめられて、まるで子供みたいに。
おかげで泣きつかれて寝てからは、非常に目覚めが良かったりした。
毎朝のように顔あわせる相手が居なくて、・・・やっぱり寂しいんだけど。
多分、初恋とかいう・・・ものだと思う。
弟だと思ってたのに、実はお兄さんみたいにいつも見守ってもらっていた。
ひょんなことで意識し始めたら、一緒に居るのが当たり前だったのに、なんだか気恥ずかしくなった。
どうすればいいのかわからなくて、だけど必死で想いを伝えた。
初めてキスされた時は、心の底から嬉しかったのに。
・・・ヨシュアの奴っ・・・・!!!!
キスついでに睡眠薬。何時の間に用意していたんだか。
一緒に行くって言ったのに。
置いてけぼりは許さないって言ったのに。
手段を選ばないくらいだし、よっぽど私について来て欲しくなかったんだろう。
色々あったのは聞いたけど、具体的なことは何一つ言わないで行っちゃったのも、巻き込まないために、ってことなんだろう。
だけど。
そんなのってあんまりだと思う。
ずっと一緒に居たいって言ってたのはどこの誰!?
私だって同じ気持ちだったわよ!!
ずっと一緒にいて、結婚したら子育てもしなきゃなーとか、普通に想像してたわよ!!
なんで、いきなりさよならなの?
この行き場の無い想い、どーしてくれるのっ!!!?
寂しさは悲しみに。悲しみは怒りに、怒りは寂しさに。
そして、それを追い抜いてしまうような、「好き」。
やり場の無い想いは、まだ・・・・胸の中で大混乱中だ。
今だって・・・一人でハーモニカを見ていると、涙があふれてくる。
渡されたハーモニカを抱きしめて泣く姿は、とてもじゃないけど人には見せられたもんじゃない。
このハーモニカの使い道はこんなものじゃない事だけは確かなんだけど。
・・・これは、あの綺麗な曲を奏でるためにあるのに。
出会ってちょっとした頃。
なぜか器用にハーモニカを吹きこなすヨシュアが羨ましくて、自分もやりたいとねだったっけ。
貸してもらったけど、やっぱり上手に吹けなくて、聞く専門でいい!って言ったんだっけ。
でも、・・・今、もう一度チャレンジしてみよう、と思った。
・・・もしかしたら・・・この音色に釣られて、ヨシュアが戻ってきたり・・・。
ベッドに腰掛けて・・・あらぬ夢に釣られて、ハーモニカを口に近づける。
一瞬、間接キス?とか思ったけど、・・・なんとなく、このハーモニカが呼んでいる気がして、そのまま口に当てた。
ためしに吹いてみる。
やっぱり、いつも聞いていたのとは少し違う音がした。
少し荒っぽくて・・・やっぱりヨシュアは器用だったんだって実感する。
『息の使い方も気をつけないといけないよ。』
『やさしくやれば、やさしい音がするんだ。』
ヨシュアに教わった演奏知識を総動員して・・・聴きたいのはあのメロディ。
・・・♪・・・・♪♪・・・
たどたどしいけど、記憶にある旋律が流れてきた。
あの夜聞いた曲には遠く及ばないけど、それでもあの曲。
『なんだ、エステルでもやれば出来るんじゃないか。』
一瞬、居ないはずのヨシュアが傍に居たような気がして、ふと振り返った。
・・・・・もちろん気のせいだったけど。
寂しいため息一つ。
だけど、もう一度。さっきの続きを吹いてみる。
思ったようには音が出ないけど、それでも、幸せなことは思い出されて。
やっぱり、目に涙が滲んできた。
『・・・食事も取らず、ただハーモニカを吹き続ける日々・・・男の子は日増しにやせ衰えていきました・・・』
ヨシュアの昔の話を思い出す。
今なら、多分その頃のヨシュアの気持ちが少しはわかる。
きっと、このハーモニカは、あの曲は、ヨシュアの幸せだった頃の思い出なんだ。
ハーモニカを吹く事で、幸せな思い出に掴まろうとしてたんだ。
だけど。
私のこの想い、思い出にするには早過ぎる。
ハーモニカを口から離してじっと見つめた。
・・・この曲は、大好きだけど。
自分が吹いていると・・・どこかでヨシュアに甘えそうになるから。
また戻ってくるのを待ってしまいそうになるから。
だから、もう、甘えない。
私は自分で立ち上がるんだ。
『初めて会ったときから、大好きだったよ。』
記憶に残るその言葉と、このハーモニカに込められた想いを信じて。
・・・絶対に連れ戻す。
置いてけぼりにしたら許さない、って私は言ったはず。
だけど。・・・だから。
置いてけぼりにしたって無駄だって事、思い知らせてやる。
ハーモニカを握り締めて、涙を拭いて。
お城の一室、鏡に映った自分の顔は酷い顔だったけど、いい表情してるな、と思った。
待ってなさいヨシュア。
私を泣かせた罪は償ってもらうわよ!!
さあ、顔を上げよう。
お城の窓から、あの日以来久々に見た景色は、生気に満ち溢れているように見えた。
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