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Protector

アルベル&ネル
出発準備中、ネルは自分の防具が無い事に気付くが...
うまくおちなかったー。めざせかっこいいネルさん、だったけど玉砕しました。そして見るに耐えなくなってこっちに移動。難しいなあ。

「買出しするものはリストにして持ってきてください。」
「売りに行くものは今のうちに言ってくれよ。」
ここはシランド。
明日の出発に備えて、一行は装備品や消耗品の準備に余念が無かった。
そんな中。
「ねえ、私の防具知らないかい?そこに置いてたんだけど。」
ネルは、買出しに出て行こうとするフェイトを呼び止めた。
「え?・・・売りに行くものの中に女物は入ってませんでしたよ?」
フェイトはリストと袋の中を見ながらそう答える。
「そうかい。・・・どこに行ったんだろうね・・・。」
ネルが首を傾げれば、フェイトは思案するように中空を見て、一つ手を打った。
「マリアが知ってるかもしれませんよ。同じの使ってるでしょう?」
言われてみれば確かにそうだ。
「そうだね。探してみる事にするよ。」
笑顔のフェイトを見送って、ネルはマリアを探した。

彼女は程なく見つかった。
「マリア!」
クリエーションで作ったものを袋詰にしているマリアに声をかける。
「ん、何かしら?」
振り返るマリアに同じ質問を投げかける。
「すまないけど、私の防具知らないかい?目を離してたら何時の間にか無くなってて。」
「ネルの防具って、軽装鎧よね?・・・ちょっと待って。」
がさがさ、と袋を退けると、マリアは自分の領域に向う。少しして戻ってきたマリアは、肩をすくめて首を横に振った。
「間違えたかと思ったけど、私の分しかなかったわ。他に心当たりはないの?」
「あのあたりに置いてたのは確かなんだけどね。でも、私は動かしてないから・・・誰かが片付けたか、間違って持っていったかだと思うんだけど・・・すまなかったね。また探してみるよ。」
言えば、マリアは再度首を横に振った。
「いいえ。早く見つかるといいわね。」
「本当にね。」
軽く手を振って、次へ向う。あと心当たりは・・・といえば、同じモノを装備しているのは一人しか居ないのだが。
・・・間違う訳ないんだけどね・・・サイズが違うし。
それでも、万一が無きにしも非ず。何しろアレの行動はたまにどころじゃなくさっぱり解らないのだ。ネルは、部屋のドアを手荒に叩いた。
「入るよ。」
「勝手にしろ。」
なんとなくな読みどおり、アレもといアルベルは部屋に居た。椅子に腰掛けて、・・・文字通り爪を研いでいる。
「何の用だ?」
顔も上げないアルベルに、ネルは三回目の質問を投げかける。
「アンタ、私の防具知らないかい?」
「知らん。」
即答。まあ、予想の範囲内だ。
「そうかい、邪魔したね。」
あとは、どこにあるのだろうか。息をついて、なんとなく視線を彷徨わせる。
・・・と、見慣れた防具が目に入った。あのライン、・・・・どう考えても自分のものだった。知らん、とはよく言ったものだと感心できる。
「・・・・・・・ねえアンタ。ありゃなんだい?」
「ああ?」
アルベルは不機嫌そうにこちらを見上げ・・・・そして、指差している方をちらりと見てまた作業に戻った。
「俺のだ。見りゃ解るだろうが阿呆。」
よく見なよ!とか、ふざけるんじゃないよ!!とか、叫びたいのをぐっとこらえる。ここで怒鳴ったら大人気ないことこの上ない。一つ呼吸して、もう一度聞く。
「質問を変えるよ。アレ持ってきたのはだれだい?」
アルベルは面倒そうに顔をあげ、・・・・あちらを眺めてまた作業に戻った。
「・・・・・・・・忘れた。」
「・・・・・・アンタじゃないのかい?」
返事は無い。黙秘は肯定か否定か。考えるとなんだか無駄に腹立たしさがこみ上げてくる。それはもちろん相手の態度によるものも大きいのだが、そもそも自分が相手のことを嫌っている、というのがある。
何にせよ不毛だ。相手にするのをさくっと放棄して、ネルは防具を手に取った。
「とりあえず、これは返してもらうよ。・・・邪魔したね。」
踵を返せば、後ろから声が掛かった。
「待て。」
「なんだい?」
振り返れば、手が伸びる。
「それは俺のだと言っただろ。」
「これは女物だよ。」
広げて見せる。アルベルはそれをじっと眺めて・・・そして言った。
「なら・・・・俺の防具はどこだ?」
なぜそうなるのだろうか。
「はあ?・・・部屋においてたんじゃないのかい?」
聞けば、アルベルは首を振った。
「そこにあった分しか俺は知らん。それがお前のなら、俺のはここには無い。」
そういわれても、ネルには首を振るしか出来なかった。
「知らないよ。マリアも自分の分しか持っていないって言ってたし。他を当たるんだね。
 ・・・・まあ、見かけたら持ってくるよ。」
「ああ。」
返事を聞き流しながらドアに手を掛けると、扉が勝手に開いた。
「おい、・・・・って、何だ、どういう風の吹き回しだ?」
入ってきたクリフが、こちらと奥を交互に見て目を丸くする。
「探し物に来てたのさ。」
ほら、と片手の防具を見せる。
「何でこんなところにあったのかはわからないけど。・・・で、今度はアイツの防具が行方不明なんだそうでね。」
少し振り返ってアルベルを指せば、アルベルは不機嫌そうに顔を上げた。
「・・・・・・・思い出した。それを持ってきたのはテメエだったな。」
それ、とは、片手に引っ掛けた防具らしい。
「ん?ああ・・・なんだ、間違ってたのか。すまねぇ。」
クリフは悪びれるでもなく肩をすくめる。
「・・・荷物と一緒においてたのを、わざわざここまで運んだってのかい?」
呆れ半分、責め半分で言えば、クリフは軽く頷いた。
「てっきりアルベルの奴が置きっぱなしにしてるのかと思ってな。」
その読みはあながち外れてはいないのだろう。が。
「女物と男物くらい見分けて欲しいもんだね。」
「悪かったな。どっちも細っこくて解らなかったんだよ。」
そう言ってがしがしと頭を掻く大男は、図体と同様とんでもなく大雑把なのだった。
「・・・あー、しかし、それなら急いだ方がいいかもしんねえな。」
言葉に首を傾げると、クリフは参ったな、という風に目をそらす。
「さっきフェイトたちがあの辺り片付けてたから、下手すると売りに出てるかもしんねえぞ。」
「な。」
何か言う前に、背後で盛大に椅子が蹴飛ばされた音がした。振り向く前にアルベルが隣まで来ている。
「そういうことは早く言え阿呆!」
今にも斬り付けそうなアルベルの髪を引っ張る。こちらにまで飛び散る殺気には、ある意味もう慣れていた。
「ダメだ。クリフを殴る前にやる事があるだろ。」
肩をすくめるクリフに盛大に舌打ちして、アルベルは部屋を飛び出していく。行き先は武器屋か工房だろうか。あの剣幕のアルベルに一人で行かせるのも何だった。きっと話が通じないだろう。ネルも後を追う。
「おい、ネルっ!?」
後ろのクリフの声も今は知らないことにした。

足の速さには自信がある。何せこれでも隠密のトップだ。
あっさりと先を行くアルベルに追いつくと、アルベルはこちらを向きもせずに言った。
「何しにきた。」
「付き合うよ。」
目もあわせずに答えれば、あちらも前方を向いたままで返事をする。
「いらん。」
答えは毎度の如く予想どおりにそっけない。
「そういうわけにもいかない。」
言えば、揶揄するように笑われた。
「監視か?」
「違う。」
即答。
それきり、2人は無言になった。早足でロビーを出て石畳のシランドの町に出る。生まれ育ち、勝手知ったるこの町だが、・・・今はなにやら居心地の悪い視線がちくちくと刺さってくる。
「武器屋に行くかい?」
声を掛ければ、言葉少なく返事が返って来た。
「ああ。」
徒歩数秒の武器屋には、しかしてフェイトの姿は無かった。店主に尋ねても、来ていないらしい。
「ちっ・・・どこ行きやがった。」
「・・・買出しなら道具屋だろうね。」
武器屋から出ると同時に、また視線が突き刺さるのを感じる。理由はわからなくもない。というより、当然だと思うのだが。周りに厳しく視線をやれば、ちくちく刺さるそれはさあっと引いていった。
「・・・・何意味ねえことしてんだ。」
ぼそりと上から声が降ってくる。
「別に。私がああいうのが嫌いなだけさ。」
そっけなく言えば、またしても鼻で笑われた。
「シーハーツの隠密の言葉とは思えねえな。
 今までやった事がやった事だ。あの反応は当り前だろう。」
「そうだね。でもお互い様だ。」
視線は前方。早足は崩さない。
悪意とも憎しみとも悲しみともわからない、昏い視線にさらされながら進む。敵地で出歩くというのはそういう事だ。手を血に染めている以上、当然の事でもある。
二度目、周囲の視線を黙らせたところで、アルベルが不機嫌そうに言った。
「俺がどう見られようがテメエには関係ねえはずだ。
 何故そんな真似をする?大体テメエは俺を嫌ってたんじゃなかったのか。」
「嫌いだよ。でも、それとこれとは話が別だ。」
突き刺さる視線というのは、解っていても気持ちのいいものではない。当人はどうだか知らないが、傍目に見ている自分は・・・仕方ない、当然だとは思っていても醜さを感じてしまう。
大好きな町の人たちの、そんな姿を見たくはなかった。・・・もしかしたらその中の0.0001%くらいは、アルベルをこの視線の中で一人にするのは悪い、と思っていたのかもしれない。どちらにしろ・・・これは単なるエゴで自己満足だ。
「フン・・・くだらねえ。」
盛大に蔑まれたのが解った。アルベルが何をどう理解したかなんてわからない。そんなことはどうでもいいし興味もない。
「アンタがどう思おうが、私には関係の無い事だ。」
冷淡に言って先を急ぐ。
角を曲がれば、大荷物を抱えたフェイトの姿が見えた。
見えた瞬間。

「おい!!」

どう考えても多すぎる殺気を纏って、アルベルはフェイトに向けて駆け出した。
「うわ!?」
「待ちなっ!」
「ぐぁっ!?」
飛び掛りそうなところを、思い切り後ろ髪を引っ張って止める。
「テメエ・・・ふざけんじゃねえ!」
乱暴に髪を取り返された。飛び散ってくる殺気にも、もういい加減耐性がついている。その様子を見ながら、フェイトは困ったようにこちらを見上げた。
「どうしたんですか?」
「おいこら聞いてんのかっ!」
大声の文句は壮大に無視してフェイトに向く。
「その中にこいつの防具が入ってないかってさ。」
言えばフェイトは、ああ、と手を打った。
「いきなり飛び掛ってくるからどうしたかと思いましたよ。ネルさんがいてくれてよかったな。」
「まあ、アレよりは話が通じる自信はあるけど。」
というより、そのためについてきたんだ・・・というのは、どうやらフェイトも解ったようで、苦笑いしながら頷く。
その間、アレ、はなにやらぎゃあぎゃあと騒いでいたが、気にしない。
あははは、と笑うフェイトの荷物の中からは、探し物の軽装鎧があっさり出てきた。
「他人の装備を勝手に売るんじゃねえ阿呆!」
「置きっぱなしにしてる方が悪いんじゃないか。」
なんとも平和に子どもレベルの言い合いをしている2人を見ながら、ネルは息をつく。
「やれやれ、だね。」

太陽の光には、いつか橙が混じり始めていた。
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