TOP
|
前へ
|
次へ
|
管理
そっと目をそらしたいもの
> 妄想がそのええっと、なもの。 > 空の軌跡 > また明日って手を振るときには
また明日って手を振るときには
アガット&ティータ(断片)
月末のお食事会な話。乙女な曲と少女漫画読みながら話を書くと酷いことになる典型例。
「じゃあな。」
そう言って、アガットは振り返りもせずにラッセル家を出て行こうとした。
「あ、アガットさん、あの、その、また来てくださいね!」
呼びかけると、アガットが振り返って立ち止まる。
「あ、・・・ああ。・・・またな。」
そう言ってこちらを見たアガットの表情がこわばった。
「あ、あのな。何泣きそうな顔してんだ。別に今生の別れってわけじゃねえだろが。」
「あ、・・・すみませんっ。えと、また・・・」
本当のところはもっと居て欲しいし、寂しい。そんな気持ちは簡単に声色に出てしまったらしい。
「・・・ったく。」
アガットはこちらに戻ってきて、ティータの目線の高さまで屈んだ。ぽん、とティータの頭に手を置くその仕草は小さい子ども向けのそれでしかなくて、なぜだかさらに寂しくなる。
「お前がそんな顔してたら、出て行けないだろうが」
「・・・・・・。」
「また来る。だからそんな顔すんな。」
そう言うアガットの顔には子どもをあやしてるみたいな表情と、本気で困っている表情が同居していた。いつものように「はい、まってます」というつもりだったのに、実際に出てきたのは釣られたのか我ながら子どもっぽい言葉だった。
「・・・・絶対ですよ?」
その言葉にアガットが軽くため息をついた。今、確実に子どもだと思われた・・・と思った。自分の表情が少し歪む。だれのせいでもなくて、自分のせいのに、なんだかつらい。
それでも。
「ああ、約束する。」
そう言って、こっちを見てくれたその人の表情は本当に優しかった。
「アガットさん・・・・!」
目の前のアガットに抱きつくと、一つ間をおいて、たくましい腕が肩を抱えてくれた。軽く、ぽんぽん、と肩と頭をたたかれる。それだけで、なんだかおちついた。
「・・・・・もういいな?」
そんな言葉が耳のそばで聞こえる。
「あ、はい。すみませんでした。」
こんどは、いつもみたいに返事ができた。
すっと体を離される。
「それなら、もう行くぞ。」
「はい。」
その返事を聞いて、アガットが立ち上がる。
「またな。」
そう言って踵を返す。
ティータも思い切り手を振った。
「はい、まってますから!」
もう一度振り返ったアガットは、少しだけ笑う。
「おう、楽しみにしてるからな。」
そう言って手を振りかえすと、そのまま出て行った。
もう一度呼び止めたいような、後姿を追いかけてずっとついて行きたいような、そんな気がする。
それでも、それはきっとまだ迷惑なのだ。
だから、遠くなっていく背中にむかって一つ呟いた。
「はやく、次の月末になりますように・・・まってますから」
一人前になって、お料理も上手になって、そうしたら、いつも一緒にいられるだろうか。たまに見せる子ども扱いもなくなるだろうか。迷惑、と思われたりしないんだろうか。
そんなことは、きっと試してみないと判らないのだろう。
「お料理、がんばろっと。」
そして、はやく一人前になろう。きっとそれが彼に近づける第一歩だから。
このページの先頭へ
|
TOP
|
前へ
|
次へ
|
管理